ポクポクちぃ~ん・・・って、まだ終わりじゃねえぞっ!
「……」
「「「……」」」
あまりの衝撃に呆気にとられていた俺だが、主人公不在の穴を埋めるべく状況だけでも理解せねば、と普段使わない頭を回転させる。
……ポクポクポクちぃ~ん
あ~ん?! 今プチって言っちまったぞ?! いくら人気がない作品だからってこんな終わり方ってあんのかよ?!
「兄貴いいいいいいいいいいいっ!」
子分Aが叫びながら走り出しそうになるのを子分Bと子分Cが二人係で必死に食い止めている。そんな二人だって悲しいわけじゃない。目元には涙がこらえきれずに流れ出している。
「くっそ……っ!」
俺はその場で膝をつき、やり場のない怒りを思い切り両手を振り下ろすことしかできなかった。
あんまりじゃねえか、あんまりじゃねえかっ! 少年漫画のヒーローみたいにかあいい女の子をあえ……もとい! 救う代わりによくわかんねえ化物につぶされちまうだなんてっ! なんてカッコいい死にざまなんだっ!
こんなんじゃ……! こんなんじゃ……っ!
「次回から『親分とコブンの夕日に向かってDASH!』が始まっちまうじゃねえかっ! あーーーーーーーーっん?!」
俺は天に向かって咆哮した! アイツにも届くようにっ! 歓喜の叫びは帰らぬ人を待ち続けるようにいつまでもこだましていた……。
「んなわけぇ……ねえだろおおがああああああああああああああっ!!」
(カッ……!!)
どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっっっ!
一瞬、まるでビーム砲でも打ったかのような目も開けていられない程の閃光が走るっ! 同時に化物のあたりから発せられたバカでかい怒声は森を駆け巡り山を越え、爆発音と共に街中を地面からビリビリと震わせるっ!
「な、ななななんだっ?! あ~ん?!」
「「「……?!?!?!?!」」」
俺と子分は何が起こったかわけが分からず辺りを見回す。もはや震源となった化物の方を見ると目を疑う光景が広がっていた。
天をつくようにそびえたっていた三メートルの化物は跡形もなく消え、代わりに隕石でも降ってきたのではないかと思うほどのクレーターが鎮座している。水をなみなみと注いだら大きな池と言っていいほどの代物だ。
四人が恐る恐るでっかいクレーターへと近寄り中を覗こうとした時だった。ふちに穴の中から手が力強くガッ!とかけられる。
「「「「ひいっ!」」」」
オルドヤン達の情けない悲鳴を聞き届けると、続いて髪が少し焦げて鳥の巣のようになったクロバがにょっと顔を出す。
「「「「ひいいいいいいいいっ!」」」」
「そこは怖がるとこじゃねえだろ!」
と、今死にかけたとは思えない鋭いツッコミを入れながら這い出てきた。さらに続いてぴょこっと顔を出す少女が一人。
……少女、だよなぁ?あ~ん?
というのもサングラスをかけているのだが顔を半分覆い隠すほどの長い前髪がかかっている。これサングラスいるのか?あとはかろうじてかわいらしい口元が女であることを主張している。
俺たちがまじまじと観察していると頬を赤く染めて元いた穴へと少しずつフェードアウトしていく。恥ずかしいのだろうか。その恥ずかしさは俺に惚れ
ミシッ
「いいからそこをどけ。そしてオレ様の仕事を返せ。」
オレ様は鼻の下を伸ばした親分の頭にげんこつを落とす。
「くっ……俺の時代が来たはずではなかったのかぁ? あぁーーーん?!」
涙目になりながら空に向かって誰かに問いただしているアホを放っておいて、穴から覗いている彼女を引き上げる。
「……あ、ありがとうございます。」
パンパンッと服についてしまった砂をはたき落とすと少女は覗き込むようにして声をかけてくる。
「へ、一応礼を言わなきゃいけねえのはこっちなんだけどな。まあ突っ込まれてるわけだしこれでいいのか」
オレ様もザッと砂を払い落として頭をカリカリとかく。
「「「でもすごかったっす! 兄貴にあんな力があったなんて!」」」
子分ズが駆け寄ってきて尊敬のまなざしを向けてくる。野郎に向けられてもな、と思いつつも単純なオレ様の頬は思わず緩んじまうのであった。
「でへへへ、そうかぁ? お前ら中々見る目があるじゃねえか! ようし、今夜は飲むぞぉ!」
「「「へい、兄貴っ!お供します!」」」
とすっかりオレ様に懐く子分たち。そして今となっては体育座りをして地面に「の」の字を書いている親分を目の端に捉えながら、オレ様は先ほどのことを思い出していた。
女の子との接触にドキドキした。……しょーがねえだろ?! オレ様はこれでもまだボーイなんだからよ! あとはいい匂いがしたってことが最初に出てきた感想だよ! 悪いかっ!
ま、まあそれはおいといて、だ。オレ様は正直死んだ、と思った。悔しいがお前らの予想通りにな。
でも、最初に聞いた音はプチッではなくボコココッだったんだ。信じられないかもしれねえが、これはオレ様が石頭だったことをそうした結果だった。まあ先に説明してたモノを強化する力を使ってたから石頭が¨超¨石頭になってたってことなんだけどな。
予想以上に固くなったオレ様の頭を化物がその巨漢で踏んずけたことにより少女をお姫様抱っこしたオレ様の体は垂直に押し込まれちまった。
オレ様たちと地面のすき間を埋めるように砂が落ちてきてほぼ身動きが取れない状態になっちまった。
そんなわけで下を向いた状態になったオレ様の目に飛び込んできたのは例の少女だ。が、サングラスが壊れマスクは外れかかっていたため見ちまったんだ。その少女の¨一つ目¨を! 恥ずかしそうに真っ赤になってプルプルしながら涙をためているその瞳を!
……っていってもオレ様は家の関係で見慣れてるわけなんだが。まあそれはおいおい話すとしよう。
だが彼女は耐えられなかったようだ。オレ様と二人きりの空間に? とか一瞬考え少しブルーになったことはお兄さんとキミらとの秘密だぜ?
血走った眼をこれでもかっと開いた彼女は何かをぶつぶつとつぶやきはじめた。その不気味な姿に若干引き気味だったオレ様だが、何を言っているのか気になり耳を寄せようとした時だった。
「狭いの……暗いの……なんなの?!」
(ぎゅるるるるるる……っ!!)
彼女の声がひと際大きくなると、その瞳の前で四方八方から莫大な量の光が集まりだし、ものすごい速さで組みあげられていく!
「も、も、もうだめえええええええええええええ!!」
(カッ……!!)
そのGoサインと同時に世界は終わった……と思わせるようなまばゆい光を地上に向かって一気に放出した! その閃光はもはやヤ○トの波動砲や全力全開のスターライトなんちゃらのような『収束砲』そのものである!
その光があのバカでかい怪物をとらえたところまでは見届けた。そのあとは……
――――気づいたら一つ目を渦巻き状にして、くたっとなって横抱きにされたお嬢様。そんな眠り姫をお姫様だっこしていたオレ様がバカでかいクレーターの中心で呆然と突っ立っていた。
これが目が慣れてきたオレ様がはじめに見た光景である。
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