第2話 精力剤
次郎は小便臭い畳を適当に捨てると、夜になるのを待って少し遠くの繁華街に出た。この辺りの売人は次郎のことを知らないので売ってもらえるだろうという打算だ。フラフラと歩いていると早速一人が声をかけてきた。
「お兄さん、精力剤なんだけどどう?」
セックス用のドラッグだろうか。名前を聞くと噴き出しそうであったが、とりあえず購入する。さて。次郎は家に帰るとデリヘルを呼んだ。
「何か飲む?」
次郎は嬢にをビールを勧めた。ドラッグ入りのビールである。
「大丈夫」
なるほど、教育が行き届いているらしいな。まあ関係ない。次郎は嬢を殴りつけ、マウントを取った。そして錠剤を嬢の口に入れるとしっかりと手で塞いだ。抵抗するたびに殴りつけるとやがてあきらめたのか錠剤を飲んだ。それを確認すると次郎も錠剤を飲んだ。記憶はそこで途切れている。
「う...」
鈍い頭痛で目を覚ました次郎は女がもう帰ってしまったことに気が付いた。妙な胸騒ぎがして財布を探ってみると案の定金が盗まれている。ドラッグは無事であった。
「あの女...まあヤクが無事でよかった」
体がひどく汗臭いのでシャワーを浴びる。昨晩のことは覚えていない。これではどれほどの快感を経験したとしてもまるで意味がない。おまけに頭痛がする。最悪だ。
「クソが...」
風呂から上がると、次郎はラムネのようにドラッグをガリガリ齧った。やはり普通のドラッグが一番だ。だがもうこれで昨日手に入れた分はおしまいだ。どうしたものか。金はもうない。次郎はあてもなく夜の街へと出かけた。
「ひとつどう?」
売人が話しかけてきた。なにヘラヘラしてやがるんだ。こっちはヤクが切れてもうフラついてるのに...
「ここじゃまずい。あそこに行こう。」
次郎は路地裏に売人を連れ込むと鼻っ面を殴りつけ、相手がしゃがみこんだところに何度も蹴りを入れた。そして相手の髪の毛を掴むと相手を自分の目線まで引き上げて、
「金とクスリをよこせ」
と言った。売人が返事をしないので、髪を掴んだまま壁に相手を押し付け何度も腹を殴りつけた。
「許してくれ!金もクスリもやる!」
次郎は売人を下すと売人が震える手で差し出す財布とクスリを奪った。売人は財布とクスリを渡すと一目散に逃げた。次郎は満足げにガリガリ錠剤を齧った。その売人がヤクザと繋がっていることなど考えもせずに。
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