重役出勤の女王様

誘導されたとはいえ、早々にクラス会議が終わったころ。


──ガラリ。


1人の女生徒が教室に入ってきた。

その瞬間─────。


──ガタガタガタガタ!!


クラス中の男どもが動きだす。


「「「「「まみる様!!! 」」」」」

「お鞄お持ちします! 」

「お席までお供します! 」

「ズルいぞ! 俺が! 」

「いや、俺が! 」


日常と化したやかましい光景。

それに混ざらない俺たち三人。

毎日毎日飽きねえな、アイツら。


「──お静かに! 」


広瀬の一言に静まり返る。


「……さん。あなた、今何時だとお思いで? 」


冷たい炎が背後でメラメラしてやがる。

そりゃそうだよな……。

毎日放課後に重役出勤どころか、社長出勤ならぬ登校していたらな。

さすがの隆一も騒がない。


「ああーら、羨ましいのかしらあ? いいんちょーはモテたことないんでしょお? かーわいそお」


意地悪く煽る高橋まみる。

腰まであるふわふわの髪。ささやかな胸。小柄で華奢な体躯。綺麗で可愛い部類だとは思うが、虫が好かない。

対する広瀬は、眼鏡の真面目なクールビューティ。身長は高め。

俺はこう、もう少し肉厚で、ボンキュッボン的な……。やめよう。理想が、見た目だけ理想ドンピシャが浮かんでかき消した。


「あなたは毎日何を聞いているんでしょうか。学校をただのサロンにしたいのかしら」


火花が散る教室。他の女子は皆、広瀬の後ろで高橋を睨んでいる。

丁度中間には俺たち……。

俺は席替えを要求する─────!


「えー? だってえ、いいんちょーの話、つまんないんだもん」


男どもがそうだそうだと合いの手を挟む。


「まみるんがモテるからって僻まないでよう。……でも、なぁんであんたたちはまみるんのこと好きにならないのお? おかしくなぁい? 」


つまらないからと、矛先がこちらに向く。

安心しろ、おかしいのはおまえの脳ミソだ。

そう言ってやりたい。


「いやあ、毎日毎日おなじやり取りしてて懲りねえなあ? 人にはタイプってもんがあらぁな。なぁ、優多」

「……俺に振るな」


目をやると、譲は苦笑いをしている。


「えー? 咲良くんはどんなタイプが好きなのお? 」


だから、俺に振るな。取り巻きどもが俺を睨んでるじゃねえか。


「優多はなあ、2次元から飛び出したような完璧プロポーションの小柄美少女が好きなんだよなあ? 」


やめろ、ピンポイントで攻めるな。


「……俺に構うなよ。ソイツらだけで十分じゃねえか」


巻き込むのマジやめて欲しい。


「……何これ」


今日が削がれたのか、高橋は黒板を見つめていた。


「文化祭の出し物決めてたんだよ」

「……まみるんいないのに、勝手に決めたの? 」

「勝手も何も、あなたはどうせ参加しないでしょう? 」


協調性を求める広瀬が唯一、高橋だけ除外視している。授業もろくにでないからだろう。


「まみるん、メイド服着てあげてもいーよー? 」

「「「まみる様のメイド服……! 」」」


男どもがざわついた。

ま、似合うだろうな。


めずらしく、反対もせずに参加表明をする高橋に少しばかり違和感を覚えた───。

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