親友・眞木隆一と言う男

次の日、俺はムナクソ悪い気分で登校した。

友だちと話していても、頭に入って来ない。


「……い! おい! 優多! きいてんの? 今日のおまえ、何か変だぞ? 」


「……あ? ああ、わりぃ。昨日、嫌なもん見ちまって……」


「ん? 何か合ったのか? ……女に間違われて、痴漢にで……ま、まて! 話せばわかる! 」


瞬間的に俺は、親友・眞木まき隆一りゅういちの胸ぐらを掴んで睨んでいた。俺は冗談でも、顔の話をされるのが嫌いなんだよ。


「……んとによー。顔に似合わず、力だけは強いよなー」


離すと、軽口をまた叩く。コイツ、懲りねぇな……。


「マジ、機嫌わりぃじゃん……。何があった? 」


「……"口裂け……男"を見た」


「……はぁ? "口裂け女"なら都市伝説とかで聞くけど、"口裂け男"ってなんだよ? 」


「……俺に聞くな。俺だって見たとき思った。俺も最初は変質者について来られてるって思って、途中から走ってアパートの階段掛け上がったんだよ。面くらい拝んでやろうって覗いたら、トレンチコートの男が見失った俺を探してたみたいでさ。視線は合わなかったけど、……笑ったんだよ。……裂けた口開いてさ……」


◇◆◇◆◇◆◇


結局、ついて来たがっていた隆一は、隠していた小テストを見つけたおばさんからの要請で、泣きながら帰宅していった。……泣くくらいなら最初から隠すなよ。本人に言ったら、文句言われるだろうけど。


『成績万年上位のおまえに俺の気持ちが分かってたまるかー! 』


耳がタコになるくらい聞かされたなぁ。バカにしてるわけじゃないけど、俺は勉強が嫌いじゃない。だけど、アイツは勉強が嫌い。何でつるんでるんだと聞かれたら、ハッキリ答えるよ。気兼ねしないで話せるから信じられるヤツなんだって。

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