新たなる門出
「……吸血鬼? ああ、だから血がって。あれ? 血を吸われたら死んだり、血を与えたら吸血鬼になったりする話があったような」
「ボクは"鬼"じゃなくて、"姫"。色々伝承はあるけど、ボクのは種族までは変えられないわ。この口裂け男は口裂け男のまんま。吸って殺すなんてナンセンスだし」
俺は微妙にわからなくて首を捻る。
「吸血姫って、『吸血姫美◯』とか『吸血姫◯維』とか……。確かに妖怪相手はなかったか」
「ボクもそれは好きで見てたわ。……男の子向けじゃないのによく知ってるわね。でも、ボクはちょっと違うから」
あー、確かにちょっと古い少女漫画だよな。違うってなんだろう。
「……ボクは最初から人間を守護するために生まれたの。"神聖視"されて"いた"存在だから……。時代の流れと共に衰退していったけれど。その時に出会った"少年"のお陰で、ボクは邪念に取り込まれずに済んだの。……あなたと同じ名前の少年だったわ」
淋しそうに瞳を伏せる。……記憶の底の、顔も思い出せない少女を思い出した。だけどまだ、それは不確定要素が多すぎて口には出来ない。ちゃんと思い出せたら話してみよう。
俺は我に返る。
あれ? 何でだ? 菖蒲さんが人間じゃないって知っても俺は気にならなかった。理解したわけでもないのに、何故かすんなり受け入れられた。
……ああ、俺はきっと、人間だろうが妖怪だろうが、生きてることに代わりないって感じたからだ。時の長さは違えど、今この瞬間を一緒に過ごしているなら同じなんだって思えたから。俺はワクワクしてるんだ。変わらない日常よりも、危険が多くてもこの人が真っ直ぐ見据えてるなら大丈夫って思えるから。
………待て。俺は重要なことを見落としてないか。あ! ああ! ……これじゃ……。
\俺、ヒロインポジションじゃねぇか! /
これからを考えて、このポジション脱却を密かに目論む俺がいた。周りには変人しかいない絶望の中で……。
第一話完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます