後悔と蘇る記憶

……考えろ、考えろ。ちょっと嫉妬して、エドを置き去りにしたのがそもそもの原因だけど!

でも、どうして……どうしてこんなに気にしてるの? 昨日、たまたま捜査中に出くわしただけ。ちょっと"良い匂い"がしただけ。泊めること自体、大袈裟だったかもしれない。

ボクの方が大人なのに、何て体たらく……。ざまあないわね……あは。

思考が錯綜しかける。だからって、ずっと悩んでる暇はない。優多を助けなきゃ。もうすぐ、夜になる。それまでに見つけたい。夜になればボク一人でもどうとでもなるけど、相手も同じ。

何か見落としてないかしら? ……ほんの数秒で消えた。ならば、近隣を当たるしかないわね。ここは古い住宅や、廃墟が建ち並ぶ。……廃墟? 廃ビル、かしらね?

優多の立っていた場所のすぐ後ろ。仄近い路地裏。覗けば、奥に鉄柵と古めかしい廃ビル。可能性が高いのはあそこね……。すぐに視界から消えることが出来る場所はここしかない。感じなかったってことは、"人間"。でも、気配まで感じないなんてますますもって怪しい。

取り敢えず行こう。

──面倒臭さから、3Mはある鉄柵を軽々飛び越えた。


◆◇◆◇◆◇◆


壁伝いに耳を当てながら進む。

あーくそ。話し声とか聞こえてこないかしら。……そんな都合のいいこと、あるわけないわよね。

にしても、優多。何であんな匂いしてたんだろ。あれはまるで、"妖怪に印をつけられた獲物人間"の……。

……あ、狙われる理由。それで十分じゃない。もっと早く気がついてれば!

"印"……。あれ?



『ボクが、守ってあげる。ボクは、優多のことが好きなんだ』


『俺も、好きだよ! お嫁さんにしたいくらい! 』


『じゃぁ、大きくなったらまた会いに来るね! そのときは、お嫁さんにしてね! 』



え? え? 優多? ……まさか、昔会ってたの? あ、れ? ………別れ際、首筋にちゅーってしたような。だ、大胆な幼少時代ね……。……根源、ボクだ。記憶が確かならば。

……だからってわけじゃない。ボクはあの時から、決めてたじゃない。"優多"はボクが守る"って……!


その時、すぐ近くから叫び声がした。


『ああああああ! 菖蒲さぁぁぁぁぁぁぁん! 』


ボクは、月が昇ると同時に側の壁を破壊した。




\ドォォォォォォォォォン!/




……ちょっと、何このシチュエーション!

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