違和感と失踪

「……なぁ、優多。何か校門に人だかりできてんだけど」


言われて、目を向けると本当に人だかりだ。………あれ? 何か菖蒲さんに似てないか?


「ん? 女の子じゃね? 何か、超可愛いっぽいんだけど」


「へ? あ、ああ、そうだな」


服装はちょっと違うが、何か似てる。でも、何だろ? 違和感が。まさか迎えに来てくれたなんて都合のいい話なんてないない。そう思って通りすぎ掛けた瞬間。


「あ! ダーリン☆ やっと出てきたぁ! 待ってたのよぅ? 待ちくたびれちゃったぁ!


人垣を押し退け、いきなり俺の腕にしがみついてきた。こんなことするのは、菖蒲さん以外いない。けど、何か微妙に違和感がある。声が高い? ……あ、ちょっと小さくなってる? 目の錯覚じゃないよな?


「あ、菖蒲さんですよね? 」


何だか周りの視線が痛い。超痛い。


「当たり前じゃない! "ボク"のこと、一晩で忘れたなんて、言・わ・せ・な・い・ぞ☆


つんっとか、鼻つつかれても困るんだけど。……キャラ違いすぎるだろ。しかも、誤解受けそうな言い方しやがって。

だけど、……ちょっと小さくなっても、胸は然程変わらないんだな。


「……え? 昨日何があったんだよ。ズルいぞ! こんな可愛い女の子とお知り合いになるなんて! 夢のようなプロポーションの美少女じゃないか! 」


……あー、今は隆一も面倒臭い。


「昨日彼女に助けられたの! それだけだよ。……何か異様に気に入られただけで」


隆一、その顔は信じてねぇな?


「……そんな、そんな都合のいい出会いがあってたまるかー! 」


……隆一は走り去った。知ってたけど、熱血は大概にしてほしい。


「……面白いお友だちねー。学校は楽しそうじゃない」


あんたが原因でああなったんだがな。


「……視線が痛いんで移動しませんか? 」


「まぁ、ダーリン☆ デートね! どこまでも一緒に行きましょう?! 」


『行きましょう』が、『逝きましょう』に聞こえる……。俺の頭もいよいよヤバイな……。


◇◆◇◆◇◆◇


人目を避けるように移動した。逆にちょっと不安になる。何だかんだ言って、菖蒲さんは女性だ。いざとなったら、相手に勝てるとは思えない。


「……菖蒲さん、エドガーさんは一緒じゃないんですか? 」


「エドぉ? あれいたら、邪魔されるじゃない」


何のだよ……。


そんな俺の後ろに影が差した。エドガーさんが来たのかな? と振り向いた先には……。

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