自堕落な女主人と完璧過ぎるダメ執事
……さて、と。優多さんも学校に行きましたし、お嬢様に報告しに行きましょうか。
奥の部屋のドアをノックもせずに開ける。ノックしたところで、起きるわけがないから。
薄暗い部屋に抱き枕にしがみつきながら寝る菖蒲お嬢様。何と可愛らしい……。昼間のお嬢様は私の好みですからね。ギシッと微かな音を立てて、横に座る。
「……お嬢様、優多さんが学校に行かれましたよ」
ふっと耳に息を吹き掛けてみる。
「……ん~、擽くすぐったぁい。んなこと、報告いらないってぇの~……」
ごろんと背を向ける。寝惚けているお嬢様は、あまり相手をしてくれないのが淋しいです。……寧ろ、罵って頂きたいのですが。
「……優多さんのお弁当に私の愛情をたっぷり込めましたよ」
ぴくっ。
「……抜け駆けとか、ふざけんなってのぉ。あによ、あんた。バカなの? 死ぬのぉ……? zzz……」
ああ! 何て雑な! もっとガッツリ罵ってほしいのに!
「……お嬢様! 足蹴にしてください! 貶めてください! そんな温いのは嫌です! 」
ゆさゆさと、起きられないお嬢様を揺する。
「……喧しい! 」
「がぁっ! 」
い、息が……、でも、蹴られて満足……です……。
(間)
……気絶していたようですね。"昼間のお嬢様"の腕力はあまりないから、全力で来て頂かないと気持ちよくないですし。ああ、何て世の中は無情なのでしょう。……しかし、気持ち良さげに寝てらっしゃいますね。負担になりますからもう起こさないようにしましょう。
「……さて、後片付けをしなくては」
優多さんが学校に行かれて直ぐにお嬢様の元へ行ったのでそのままになっています。まぁ、時間はたっぷりありますから問題はありません。
「……しかし、朝食なんて久々に作りましたよ」
一人は慣れていますが、独り言が増えてしまいますね。
「あ、お掃除やお洗濯もしないと。……あちらこちらの死角にお嬢様の脱ぎ捨てた衣類がありますからね。……今日からは、優多さんの衣類も洗えますし」
いけないいけない、思わずニヤけてしまいました。素敵すぎるシチュエーションに、小躍りしたい気分ですが、抑えなくては。
◇◆◇◆◇◆◇
……数時間でやることがなくなりました。夕方ですか、そろそろお嬢様を起こしましょう。
「お嬢様? 夕方……」
……いない? ドアを開けて固まる。あ、滅多に開けない窓が全開に……。お嬢様、どちらへ?
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