■ 終 学校に行こう
今日の朝ご飯はコーンシリアルとミカン果汁。あたしの大好きな組み合わせだ。
「わたくし、朝はお米とお味噌汁がよろしいのですけど」
「毎日同じでは飽きてしまいますよ。適度に変化を与えてこそ食事は楽しいのです」
あるじ様は無表情にスプーンを口元に運ぶ。あたしはニコニコしながらコーンシリアルを食べ続けた。
「そう言えばシャランラさんのお父さんとハイサーさんにはどのような処分が下されたのですか」
「特に何も。加えてあたしにも何も」
「あれだけの法規違反を行っておきながらおとがめなしとはおかしくなくて」
「仕方ないんじゃ無い、天下の魔神様が一人娘のために三桁の法規違反を行ったとすると、魔神への信頼も失墜するって魔法学会まるごと隠蔽するって決めたんだし」
「そこが判りませんのよ。魔神様はともかくシャランラさんには魔個人的に罰則があってもしかるべきなのに、なぜ魔人レベルが引き上がりますの?」
そう。今のあたしは第三種第四級魔人となった。
輸魂魔法という集団魔神レベルのそれを成功させたこと。お父さんの力と精霊力があったにせよ、その実力を認められたってことなのかな。
本当は第三種第二級でも良いのではないかって話しもあったんだけど、そこは三桁の法規違反とあいまってとりあえず二級昇進となった。
「ともかくはおめでとうございます。それでシャランラさんは自らの魔法テーマを決めたのですか?」
「まだですね。そもそもあたしは普通の魔法が苦手なんです。そこを克服しないといけませんしもっと勉強しないと」
ただ勉強するにしても問題がある。
「そのためにもカンデーラに戻らないといけないんです、さっさと新しい願望考えてあたしにぶつけて下さい!」
現在のあたしとマハリタの願望達成度。
【シャランラ:田中一郎様に対して願望受付中(達成度1件)】
【マハリタ:田中一郎様に対して願望受付中(達成度1件)】
問題なのはいつの間にか受け付けられていたこの願望。調べたら願いの内容は判らないんだけど一ポイントが入っていた。
「そうですわ、わたくしにももっとポイントを頂かないといけません。あと一二八ポイントほどで第二級への昇進となりますので」
「絶対に納得いかないわ。あたしをダシにしてマハリタがお願い一件に一六三二八ポイントも貰うなんて」
「シャランラさんの身体ですのでよいダシが出るのではないでしょうか。骨ばかりですし」
「握りつぶす、もう肉片が残らないほどあんたの乳脂肪を握りつぶす!」
「それくらいにしてそろそろ家を出ましょう」
あたしたちはグレートハイツを後にする。
「でもあれね、みんなの記憶がリセットされたから、あたし転校生にもどったのね」
「わたくしまた臨時教師のあいさつのやり直しですわ」
そう、あるじ様との主従関係が一時的に解除されたのでみんなの記憶も消えてしまった。あの日、学生食堂は手抜き工事のガス漏れと耐火設備の不備で火事になったけど奇跡的に鎮火、けが人は出たけどそこまで酷いことにはならなくてすんでいたという。
その後の召喚システム修正とかであたしとマハリタとあるじ様の主従関係は復活したけど、マハリタはいらないんじゃないかと思う。
「また平山さんや華子さんと友だちになれるかな」
「慣れるでしょう。条件は変わらないのですから」
「もっともあるじ様がお願いをあと二つ唱えたら、今度こそお別れになるかもしれませんけどね」
「実は三つ目の願いは考えてあるんですよ。これはあなたのアンテナを全開で振るわせる自信があります」
「大きくでましたね。それでその内容は?」
「二つ目のお願いが適ったらお知らせします。それまではがんばって願望を見つけないといけませんね」
あるじ様はそう言って微笑んだ。
そこで歩き出すあるじ様。
「あの……ちょっとお願いが」
振り返ったあるじ様、あたしは右手をそっと差し出した。
それを不思議そうにじっと見ていたが、白い左手を差し出すとゆっくり重ねる。
この感触。やっぱりあるじ様はお父さんに似ている。
よーし、今日からずっとこうやって手を繋いで……
「切ーった!」
それをチョップでたたき切るマハリタ。
「何すんのよ、このチチデカ魔人!」
「わたくし教師ですのでこのような不純異性交遊は認められませんわ」
「あんた身体ごと不純なくせして何言ってんのよ!」
などと朝から言い合うあたしたち。その様子を見てあるじ様は声を上げた。
「さあ、学校に行きましょう!」
【マジンGO! 終】
マジンGO! みやしん @hodof1132
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