女子小学生二人が携帯ゲームをする話

女子小学生二人がリバーシをする話

「ねぇ月子ちゃん。このゲームやらない？」

　小学五年生の少女、青葉はそう言ってカバンからなにやら大きな物体を取り出した。

　出てきたのはA4サイズの板（ボード）だ。青葉はそれをテーブルに置いた。

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　8×8にマス目が区切られ、黒と緑色が使われた、黒板のような色の板。

　見覚えのない物体を前に、青葉の友人である月子は首をかしげた。

「......なにこれ？」

「えっ？ 月子ちゃん、リバーシしらないの？」

　対して青葉は、リバーシを知らない月子に対して本気で驚いているらしい。

「し、知ってるに決まってるでしょうが。リバーシでしょ。早い話が嘔吐よね」

「それ、リバースだよ」

　勘違いが汚くてヤだな。青葉はちょっと嫌な気持ちになった。

「じゃあ、とりあえず準備するね」

　言って、青葉は石（コマ）を並べ始めた。

　ここは月子の自宅。友人である青葉は毎週休日になると、月子の家を訪れるのだ。

　今はリビングのテーブルにボードを置き、ゲームの準備をしている所である。

　そうして30秒も経たないうちに、ボードの真ん中に色の違うコマが４つ並んだ。

　真っ白なコマと、真っ黒なコマの二種類が使われている。

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「これはね、相手のコマを挟（はさ）むゲームだよ」

「？」

「言葉だけじゃ流石に分かんないよね。説明書があるから、一度読んで」

　青葉は月子に説明書を手渡す。月子はそれを1、2分黙読したのち、おもむろに顔を上げた。

「なるほど......。このルールだと、角を取った方が有利になるわよね？」

「おー、知識ゼロでそこまで気づいたなら、ルールはOKっぽいね」

「ええ、やっぱり優秀な人材は理解も早いわね」

「自分で言うの、なんか腹立たしいね」

　ともかく、これでゲームが始められそうだ。

「初心者の月子ちゃんが先攻で良いよ」

「あら、悪いわね。それじゃ」

　月子は少し考えたのち、黒のコマを手に取り盤面に置いた。

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□ □ □ □ □ □ □ ●　パチッ

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「とりあえず角を取ったわ」

「うん。ちょっと待ってね」

　もう一度ルールブックを読み直させた。とりあえずでルールを崩壊させるのはやめてほしい。

「好きな所に置けるわけじゃないのね」

「当たり前だよ」

　改めてルールを理解した月子が、今度はちゃんとした場所に黒のコマを置く。

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□ □ ● ○ ● □ □ □　パチッ

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□ □ ● ● ● □ □ □　クルン

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「そうそう、それでオッケーだよ」

「ふふっ、簡単ね」

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□ □ □ □ ● □ □ □　バチッ

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□ □ □ ● ● □ □ □　クルン

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「あれ？ 勝った」

「うん。ちょっと待ってね」

　青葉はすぐさま月子が黒にしたコマを白に戻した。

「えっえっ？」

「なんで二回行動するの？ キラーマシンなの？」

「もしかして間違った？」

「一ターンに一つしか置けないよ......」

　このルールがまかり通ったら、先攻が勝つだけのゲームになってしまう。

「うーん、なんか、思ったより難しいわね......」

「そんなに難しいかなぁ......」

　青葉はもう一度しっかり理解してもらおうと、月子に説明書を見せる。今度は言葉でしっかり解説もつけてだ。

　しかし、月子はどうも集中力が切れかけているらしく、気もそぞろに黒のコマをなにやらパチパチと盤面に置いて遊んでいた。

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「見なさい青葉。ほら、星を作ったわよ。すごいわね」

　盤面には、それはそれは綺麗な北斗七星が輝いていた。

　ついでに、月子の謎の笑顔も無駄に輝いている。

「......」

　青葉は無言で黒のコマを手に取る。

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　　バチッ！

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「死兆星！？」

　死兆星が置かれたため、このゲームは終わりとなった。