女子小学生二人が携帯ゲームをする話

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女子小学生二人が携帯ゲームをする話



「だーめ、全然面白くない」


 小学5年生の少女、樫原青葉かしはらあおばはそう呟きスマホから視線をらした。手放したスマホがソファに優しく落ちる。


「私も、チャンネル登録してる動画は全部見終わっちゃった......」


 青葉の隣に座る少女、夜ノ森月子よるのもりつきこも脱力した声で応える。青葉の方を振り向くと同時に、長い黒髪が物憂げに揺れた。

 ここは月子の自宅。月子の友人である青葉は、休みの日はほぼ毎日月子の家に遊びに来る。

 しかし、毎週も遊んでいるとやる事もなくなるらしい。今の2人はソファーに寝転んでいるだけだ。


「ねえ月子ちゃん。テレビつけて良い?」


 言って、青葉は小柄な体をソファから起こしリモコンを探す。


「テレビなんてつけても、面白い番組なんてやってないわよ」

「分かんないよ。案外なんかやってるかも」

「いや、絶対面白くない」


 そんな、渋る家主を尻目に青葉は電源ボタンを押す。ちょうどお笑い芸人がネタをやっている所だった。

 不自然なほどきらびやかな服装をした二人の女性が、大声で叫びながらネイルアートを入れるをしている。


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『ねぇ。世の中には、どんな女がいらっしゃるのかしら?』


『聞いてくださいお姉様。サバサバ女子を目指して、塩で歯を磨いている女がいましたの』


『なんですってぇ!? やっちまったわね!」


『女は優雅に』


『生クリーム!』(ここで、ネイルを入れる)


『女は優雅に』


『生クリーム!!』(ここで、ネイルを入れる)


『磨きなおしですわ〜』


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「ふふふっ」

「いや笑ってんじゃん」


 テレビは面白くないとはなんだったのだろう。青葉は普通に笑う月子にツッコミを入れる。そうして、二人はテレビを眺め始めた。


「あっ」


 数十分ほど経過したころ、青葉が突然呟き、小さな身体をソファからぱっと起こした。


「そうだ」


 そんなひとりごとを残して、黙って部屋の外へと歩いていく。


「青葉、どこいくのよ。今良い所なのに」


 すっかりテレビに釘付けの月子を残して出ていった青葉。ガサゴソという音が、部屋の外から聞こえる。

 青葉は何をやっているのだろう、青葉の出て行った扉をぼんやり気にしていると、思いの外すぐに戻ってきた。


「そういえば私、おうちからゲーム持って来たんだった」


 青葉はスマホより少し大きいくらいの、長方形の物体を持っていた。廊下に置いたカバンから取り出したのだろう。青葉は月子の隣に腰を下ろす。


「ゲーム?」


 気の抜けた声を出す月子に、青葉は「そう」と答えて電子機器を差し出す。上半分は液晶で、下半分に十字ボタンや4つの丸いボタンが付いている。

 そしてその電子機器には、赤の印字で「テロリス」と書かれていた。


「これはテロリスだよ」

「聞いたことないゲームだけど、テロリストを連想させるから不謹慎」

「まーたすぐに適当なこというんだから」


 月子の冗談を受け流し、青葉はテロリスの取り扱い説明書を取り出す。


「えっと、これはカタカナの「」で作られたブロックを消していくゲームだよ」


 青葉は説明書を見せながら月子に遊び方を説明する。


「地味なゲームねぇ。何十年も前のゲームって感じ」

「じゃあ、負けたら罰ゲームとかにする? 緊張感あるかも」

「罰ゲーム?」

「そう、負けたら変顔とか、懲役30年とか」

「その二つは同列じゃないわよね?」


 罰ゲームは却下しつつ、月子は青葉からゲームを受け取る。真横に付いているスタートボタンを押すと、テロリスが始まるとの事だ。少し準備を整えて、月子はスタートボタンを押した。


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「NENTが次に落ちてくるブロック?」

「そうそう」


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| ロ        |   ロロ

|ロロロ  ストン  |    ロ

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「なるほど、やり方は簡単ね」


 シンプルなゲームゆえ、プレイしながらでも操作を理解できる。月子は早くも操作の全てを理解したらしかった。


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| ロ        |    ロ

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| ロロロ      |    ロ

|ロロロロ      |    ロ

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「うんうん」

「良い調子だね」


 月子のプレイに青葉が相槌あいずちをうつ。


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| ロ        |    ロロ

|ロロロ       |    ロロ

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「次は縦棒たてぼうだから、右端かしら」

「慣れてきたね〜」

「簡単すぎて、無限に続きそうだわ」


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| ロ        |    ロロ

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「ん? この縦棒なんか長くない?」

「まぁ、気持ち長いかも」


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|        ロ |    

| ロ      ロ |    ロロ

|ロロロ       |    ロロ

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「この縦棒、なんかバールみたいな形してない?」

「まあ、気持ちバールみたいな形してるかも」


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|ロロロロロロロロ  |

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| ロ      ロ |    ロロ

|ロロロ     ロ |    ロロ

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      ストン    


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「あーっ……」


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   ストン

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|   ロロ     |

|ロロロロロロロロ  |

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|        ロ |    

| ロ      ロ |    ロロ

|ロロロ     ロ |    ロロ

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「あーっ、あーっ」


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|   ロロ     |

|ロロロロロロロロ  |

|        ロ |

|        ロ |

| GAMEOVER ロ |

|        ロ |    

| ロ      ロ |    ロロ

|ロロロ     ロ |    ロロ

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「?????」

「月子ちゃん、ゲーム下手だねー」

「いや私のせいじゃないよね!?」

「いやいや、なんでも機械のせいにするのは良くないよ」

「どう考えても機械のせいよコレ! じゃあ青葉ちゃんやってみなさいよ!」

「へいへい」


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|          |   ロロ

|          |   ロロ

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|ロロ        |   ロロ

|ロロ        |   ロロ

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ストン


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|ロロロロ      |   ロロ

|ロロロロ      |   ロロ

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 ストン


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|ロロロロロロ    |   ロロ

|ロロロロロロ    |   ロロ

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  ストン


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|ロロロロロロロロ  |   ロロ

|ロロロロロロロロ  |   ロロ

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    ストン


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|ロロロロロロロロロロ|   ロロ

|ロロロロロロロロロロ|   ロロ

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|          |

|          |   

|   +50億pt     |   ロロ

|          |   ロロ

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「やった」

「ちょっと」

「簡単だなぁ」

「いやいやいやいや。難易度が」

「月子ちゃん、難易度を言い訳にするのは見苦しいよ。格闘ゲームで負けた時に選択したキャラのせいにする人ぐらい見苦しいよ」

「絶対言い訳じゃないでしょ! 50億ptって、ポイント何倍デーなの?」

「じゃあ、もう一回やってみる?」

「ええ、望むところよ!」


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|          |   ロロ

|          |   ロロ

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|ロロ        |    ロ

|ロロ        |   ロロ

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ストン


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|ロロ       ロ|   ロロ

|ロロ      ロロ|   ロ

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       ストン


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「よし、良い調子!」

「月子ちゃん、楽しそうにゲームするね」


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|       ロロ |

|       ロ  |   

|ロロ       ロ|   呪呪

|ロロ      ロロ|   呪呪

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「ちょっと青葉、知らないブロックにスタンバイされてるんだけど」


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|    呪呪    |

|    呪呪    |   

|ロロ     ロロロ|   ロロロロ

|ロロ     ロロロ|   

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|ロロ呪呪   ロロロ|   ロロロロ

|ロロ呪呪   ロロロ|   

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ストン


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|呪呪呪呪   呪呪呪|   ロロロロ

|呪呪呪呪   呪呪呪|   

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じゅわわわわわわわ


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「呪いが増えた!?」

「そして、呪いは伝播でんぱする……」

「B級ホラーの煽り文句?」


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|   呪呪呪呪   |

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   ロロロロ

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   

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じゅわわわわわ


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「青葉ちゃん!「呪」が画面を侵食していくんだけど!」


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|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   死死死死

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   

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「青葉ちゃん! これ普通に怖い!」

「うるさい」

「急に冷たくない?」


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|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪GAMEOVER呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   (^O^)

|呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪|   

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「なにこれムカつくんだけど」

「月子ちゃんゲーム下手だね」

「絶対私のせいじゃないわよ!」

「またまたー」

「もういいわ! もう一回、いや、何度でもやってやる! こんな狂ったゲーム、私がクリアしてぶち壊してやるわ!」

「デスゲーム漫画の主人公なの?」


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|          |   

|          |    呪

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「初手から呪とはね......」


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|          |

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|          |    

| 呪        |   

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ストン


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「いいわ、気にせず突き進むわ」


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|          |    怨

| 呪        |   

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うらみ?」


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| 呪怨       |   

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ストン


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| 呪怨       |   

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|   呪怨     |

|   劇場版    |

|   近日公開   |

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|   みてね    |

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「なにこれムカつく!」

「近日公開だって、どうする?」

「誰が行くかよ! おばけこわいだろが!」

威勢いせいと理由が釣り合ってなくない?」


 どうやらテロリスは諦めたらしい。月子はゲームを放り投げ、ぱたんとソファーに寝転んだ。


「月子ちゃん月子ちゃん」

「…………」

「月子ちゃん月子ちゃん」

「なによ」

「懲役30年は?」

「罰ゲームはない!」


 こうして、二人はゲームをやめ、再びテレビ鑑賞を始めた。

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