女子小学生の日常の一コマ

なんでもない日の、なんでもない雑談集


【女子小学生のお悩み事情】

樫本青葉かしもとあおば

夜之森月子よるのもりつきこ


「私、最近血糖値が気になりはじめたんだ……」


「うん。小学生の悩みじゃないわよねそれ?」


「そうかなー? じゃ、月子ちゃんは何か悩みとか無いの?」


「うーん…………こいの悩み、かな?」


「あーわかる! 濃いのダメだよね! 血糖値が上がるもんね!」


「違う!」


【女子小学生のアレルギー事情】

乃木のぎましろ

常夏沙弥とこなつさや


「ぐじゅぐじゅ」


「あれーさやちゃんどうしたの?」


「あら、ましろちゃん……。実は私、花粉症なのよ。花粉のせいで鼻水は止まらないし、目は痒いし……」


「あー、わかる! 私もかゆくなるよー!」


「あら、ましろちゃんも花粉症なの?」


「アレルギーだよ」


「ましろちゃんも大変ね。何のアレルギー?」


「ダニアレルギー!」


「(人間は大抵ダニに噛まれると痒くなるわよ……)」


「あと蚊アレルギー」


「(人間は大抵蚊に刺されると痒くなるわよ……)」


【女子小学生の広告事情】

梁凛麗リャンリンリー

桜凱旋さくらがいせん


「……むぅ」


「あれ、一体どうしたんだぜ凛。スマホに不機嫌そうな顔向けて。レアガチャでハズレしか出なかったみたいな?」


「……いえ、これですよこれ」


凛は桜にスマホの画面をひょいと見せた。そこには近年やけに増えてきた、エロ漫画やスマホエロゲーの広告が小刻みな動きと共に表示されていた。


「あー。そういうの最近よく見るなぁ。私はあんまり気にしてないぜ。凛は気になる方なのか?」


「…………別に、父親の形見で貰った懐中時計で時を止めてクラスの女子と卑猥な行為に及ぼうが国が少子化を止めるためにどう考えても頭おかしい卑猥な政策打ち出してなぜか可決されようが男ふたり一つ屋根の下で何も起きないはずがなかろうが私は一向に全然構わないんです。ただ、私の携帯の広告には二度と現れないでください。……せめて、一般の漫画の広告にしてください! 突然出てこられるとなんだか恥ずかしいんです! 私この前『満員電車でエロ漫画のお試しページを読む女子小学生』になりかけたんですよ!」


「すごい迫力で怒ってるぜ……怖すぎてほぼ100%その場で悲鳴をあげてしまいそう……」


「センちゃんエロ広告の回し者なの?」


「冗談だからコンパスは筆箱にしまって! それ人に向けるものじゃないぜ!? 円を書くもので縁が断ち切られちゃう!?」


そこまで上手くもない言葉遊びで必死にお茶を濁す桜だった。


【女子小学生の大喜利事情】

神崎黒音かんざきくろね

藍原あいはらのどか


「藍ちゃん聞いて。実は私、最近大喜利にハマっているのよ。慣れてきたのか、結構だんだん得意になってきたわ」


黒音ちゃん。どうやらまた何かに影響されたらしいです。たぶんボケテとかイッポンとかの影響だと思います。普段の生活を見ている限り、大喜利が得意な性格には見えません。どちらかと言うと黒音ちゃんは天然ボケっぽいのでリアクション芸人的なキャラだと思います。でも折角なので。


「……んーじゃあ、『こんなケーキは嫌だ!』ってお題で何か思いつく?」


〇〇は嫌だ! という、大喜利の定番かつベタなお題を取り敢えず出してみました。


「うーん。少し時間を貰うわね………………」


黒音ちゃんは考える人の劣化みたいなポーズで長考を始めます。私はこのポーズを『アゴがかゆい人』と名付けました。


「『まずい』」


ふと、突然黒音ちゃんが声を上げます。


「……ん? なに?」


「なにって、藍ちゃんが出した大喜利への回答よ?」


「…………『こんなケーキは嫌だ!』への回答が」


「『まずい』」


この時点で黒音ちゃんの大喜利センスが地を這うほどに低いのが良く伝わってきました。


「…………そういうのじゃないと思うよ?」


「え? でも、まずいケーキ嫌でしょ?」


「嫌だけど……求めてる回答との乖離かいりがはげしい……」


「他には『ケーキに青酸カリが入っている』」


「確かに嫌だけどそういうんじゃ……」


「『生クリームにセメントが練りこまれている』」


「嫌だけど大喜利ってそういう……」


「『セメントに青酸カリが練りこまれている』」


「それケーキの話じゃない……」


「『家の壁が生クリーム製だ』」


「なんかお題が変わってない?」


「『家の壁がアスベストで出来ている』」


「なんかもう『こんな家は嫌だ!』になってない?」


「『美味し〜いケーキと思って口に運んだら、アスベストの塊で〜し〜た〜』」


「小梅〇夫のネタになってない?」


「『チクショー!』」


「小梅〇夫のネタだ!?」


【先生の自己紹介事情】

野村正のむらまさし


「んー、今日も相変わらず疲れたなぁ……」


 家に帰って早々、僕はソファに寝転んだ。全身の血液が溶けていくみたいに気持ちが良い……。


「なんか、先生になってから基本疲れてるな俺……」


それでも、小学校の頃からの夢だった『教師になる』という目標が達成できた。その事実だけで十分満足した毎日は送っている。自分の言動の一つで生徒の未来が変わるかも知れない。クラス30人の人生を任されている。そう思うと、自然と力が湧いてくる。現に、僕が先生になったのは小学生の頃の担任の影響だ。


「……昨日のテストの採点だけ先に済ませるか」


よいしょと立ち上がり、机に向かう。


「……あれ? テストどこにしまったっけ」


流石に『なくしました』はよろしくない。適当に机の引き出しを開けていく。


「おっと、あったあった」


普段あまり開けない引き出しに入っていた。どうやらあまり意識せずに入れたらしい。無意識の行動って忘れちゃうよね。


「あれ、これって……?」


普段開けない引き出しだけに、見覚えのない物も割とたくさん入っていた。


そして特に見覚えのないもの。


何十枚という色紙いろがみたばがそこにはあった。


続く

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