第27話 異世界―シロ【霊体の手】


 宇宙空間のような場所でなにやら設定を行った後、

 冷たい風にさらされて意識が覚醒する。


「………空気が重いー? 一雨きそうだねー」


 重量感のある空気を感じ、眼を開ける。

 夕暮れの空が茜色に染まる。


 夏とはいえ冷えてきたねー。んー? 異世界の季節はいまいつー?

 早く澄海くんちにも帰らないといけないし、巻きで行かないとー。


 むくりと上半身を起こすと

 重量感のあるふわふわした髪の毛が湿気を含んで、さらに重く頭にのしかかるよー。


 わたしの髪は外側に緩く広がってしまう天然パーマ。

 広がる髪はくしを通すときに必ずどこかが引っかかって痛いんだよねー。

 猫の時は大きな毛玉で、人型になると、重量感のある銀髪なんだよねー



「………。」


「あ、やっほー、澄海くん。宇宙人の身としてー、さっき設定してたときの宇宙空間、どーだったー?」


「………地球から出たことないし、知らないよ」



 私が起きた場所のすぐ隣に、澄海くんも寝ていたらしく、すぐに起き上がる


 澄海くんは体についた砂をパンパンと払って起き上がる。


 わたしもそれに続いて立ち上がった。


「でー、ここどこー?」

「………しらない」

「どうやって帰ればいいのかなー?」

「………しらない」

「なーんも考えてないもんねー」

「………うん」



 立ち上がって自分の身と澄海くんの姿を確認する。


 ポケットから手鏡を出してみると


「んー? なんかかわった? 変わってないねー」

「………少し身長が伸びてる」

「そっかなー………じぶんじゃよくわかんないやー」



 鏡に映る瞳は、縦に瞳孔が裂け、右眼が青色、左目が黄色のオッドアイ。

 頭の上には猫耳が。とくに変わった気がしないねー。


「………尻尾が二股」

「え、うそー」


 首を回してなんとか自分のお尻を見てみると、たしかに尻尾が二股に裂けていた


「これが、アイウラントロピー? 猫の妖怪、かー………どうでもいっかー」

「………タマは自分の事なのに興味なさすぎだろ」


 自分のことは二の次三の次。

 私はおっちゃんに会えればそれでいいのー。

 おっちゃんが死ねと言えば、私は喜んで死ぬよー?


 わたしの身も心も、おっちゃんのものなのー。


「実際どうでもいいしねー。それに今の姿では『シロ』って呼んで。そういう澄海くんはー?」

「………僕は………【宇宙人エイリアン】 名前は『ソラ』」

「うわー、普通。他の種族選ばなかったのー?」

「………それ以外ある?」

「ないねー。名前も澄海スカイだからソラってのも安直ー」

「………人のこと言える名前か」



 澄海くんも元の姿と変わらないねー

 私の銀髪とは違った質感の白髪。私がふわふわだとしたら、澄海くんの髪は鋭い。

 柔らかい髪のくせに、なんというか、毛先に鋭さを感じる。


 だというのに、髪型にこだわりが無くてクロちゃんと同じくナチュラルストレート。



 前髪の奥に見えるのが、赤い瞳。

 気だるく開かれたその眼は何を映しているのか。


「天職はー?」

「………【結界師】 ユニークスキルは【停止結界タイムロック】」

「ユニークスキルってなんなのかなー」

「………さあ」



 さーて、異世界に来て、何をしたらいいのやら。

 なんか案内してくれる人とか、盗賊さんとかいてくれたらいいのになー



 イベントプリーズ!




「おい、お前ら。こんなところで何をしてんだ?」



 おっとー! あろうことか、近くに人が居た!!

 これは助かるー!!


「ありがとーおじさん! 私たちはどこに行けばいいのかなー!?」

「知らねーよ。何の話だ。子供だけで外に出るなんて危ねーぞ。ったく、町はこっちだ。ついてこい」


 背中に背丈ほどの大剣を背負い、顔に十字の傷を負った戦士風の男が子供二人で草原に寝転がってるのを心配してか私たちを案内してくれるみたいだ



「わーい! おじさんありがとー!」

「おじさんなんて年じゃねーよ。外見年齢は27歳だこの野郎」

「年が離れてたら十分おじさん」


 グサッと胸を押さえたおじさん。


「一理ある。だがオレはお兄さんだと言い張りたい。そんな繊細なお年ごろなんだ。アラサーだぞアラサー。四捨五入したらもう30歳だ。」

「………シロが悪い。謝れ」

「あいたっ、ごめんなさい、おじさん」

「結局おじさんか………。まあ、いいだろう。どうせおじさんだ。ついてこい、町はこっちだ。」




 ソラくんにチョップされ、謝罪を述べる。

 まー、からかっている自覚があるからねー


 一瞬、『シロ』って呼ばれて誰の事かわかんなくなってしまったのは秘密



「あ、そーいえば初期武器がどうのって言ってたよーな………」

「………僕のはお札」

「私はバールのようなものー」


 おじさんに案内してもらいながらスマホをいじっていると

―――ヴンッ


「ひゃあ!」

「………ん?」


 スマホからバールが飛び出した。

 あー、びっくりしたー………


「お、ガキの癖になかなかいいもん持ってんじゃねーか」

「おじさん、悪役みたいなセリフだねー」

「悪役っぽいか? あともう、いい加減おじさんはやめてくれ。心に響く。」


 おじさんは頬の傷をポリポリと掻きながら眉を寄せる


「じゃあ、おじさんの名前はなんていうのー?」

葡萄ブドウだ」

「おじさんじゃなくて、果物だったんだねー………」

「せめておいしい巨峰になりたい。そんな葡萄だ」


 意外とノリがいいのかもしれない。

 この葡萄さん。



                   ☆



 町に向かって歩いている最中。

 葡萄さんにこの世界の危険について教えてもらっていた。


「いいか、町から出るのは危険なんだ。町の外は魔物がうろついている。子供だけで出ていいものじゃない」

「まものって、あんなの?」


 私が指さすとー、ソラ君に蹴り殺された犬のような、それでいて二足歩行の魔物が倒れている。


「そうだ。今お前のお兄さんが倒してしまった犬みたいな生き物。それがグレーコボルト。素早く、集団で行動し、獲物を取り囲んで食らう。とても危険なんだ。子どもなんかは特に狙われやすい。だから絶対に街から出てはいけないんだ。」

「ふーん………」



 私もバールのようなもので殴り殺してしまったコボルトの頭からバールを引き抜く


「じゃあ魔物に出会わないように注意しながら街に向かわないといけないねー」

「その通りだ」



 葡萄さんも、大剣を使わずにヤクザキックの一撃だけでコボルトの頭蓋を粉砕していた。

 この葡萄、間違いなく強いねー。


 そして、わたしたちがためらいなく魔物を圧倒して殺しているのを見ても、動揺すら見せていない。

 それどころかスカシボケまでかましてくる。くっ、同じボケ担当として侮れないよー!


「もし死んでいる魔物を見つけたら………」


 葡萄もスマホを持っていたのか、携帯端末を操作して


「魔物の死骸は収納してやらねばならない。環境汚染は重罪だ。」


 コボルトの死骸は端末に吸い込まれるようにして消えた


「りょーかーい」

「………(こくり)」



 郷に入っては郷に従え。先人たちの話は聞かなければねー


 私たちも葡萄の言葉に従ってコボルトを収納する



「収納したコボルトは、素材屋で買い取ってもらうか、冒険者ギルドで売り払うこともできる」

「おいくらかな~?」

「草原にはいくらでもいるからな。1匹倒したところで一泊分の宿代にもならん」

「あら~………」


 まあ、長居するつもりとはいっても、もし帰り方がわからなかったらしばらくこの世界に滞在することになるかもしれない。

 数こなして一泊分の宿代くらいは稼いじゃおうか。



「そんでもって、あそこにいるのが、キートレントだ」


 葡萄が指さす先に居たのは、木の洞が顔みたいになっている木。


「木の魔物かなー?」

「その通り。あいつは………木の実が鍵みたいな形をしている。」

「それでキートレント………」


 ソラくんがお札を拳に付けて殴りつけると、爆散した。


「ちなみに弱い。」

「よわいねー………」


「ついでだ。シロ、お前も倒しておけ」

「はーい」


 バールのようなものをフルスイングで横殴りにしたら、ばらばらの木片になったよ。



……………

………


「あんなところに宝箱がある」

「なんであんなところに宝箱があるのか謎だねー」

「………草原のど真ん中。怪しいな」


 さらに道を進むと、宝箱があった。

 RPGじゃあるまいし、道のど真ん中に宝箱があるなんておかしい。


「そう、あの明らかに怪しいあそこの宝箱みたいなのは、ミミックオクトパス。実は宝箱に擬態しているタコだ。あいつらはいたるところにいる。海に、山に、火山に、森に、岩に、地面にだって。なんにでも擬態してしまうんだ」


 地球のミミックオクトパスとは全然違うね。


「ふーん………ユニークスキルってのも試してみようかなー………」

「なんだ、ユニークスキルも知らなかったのか」

「葡萄さんは知ってるのー?」

「当然だろ。伊達に長年冒険者やってねーからな。ユニークスキルを使いたいって考えれば、使えるさ。」


 私のユニークスキル【霊体の手スケールハンド

 使ってからじゃないとよくわからないけど、なぜだか自分にしっくりと来るイメージ。

 使い方も、なんとなくわかる。もちろん、その効果も。



「【霊体の手スケールハンド】」


 私が呟くと、わたしの右手が半透明になった。


「………それ、補助具なしでできるのか」


 澄海くんが驚いたように私の右手を見つめる。


 私も正直驚いたよー。

 妖怪や幽霊退治をする時、私は手首にお札を巻き、手首から先を霊体化させて悪霊を退治していたからねー。


 霊媒道具無しでも自身の肉体を霊体として動かすことができるユニークスキル。

 つまり、物質透過の超能力かー………。


 私は宝箱の内部に素早く手を突っ込んで抜き取る

 生物の体内にも腕が簡単に侵入することができた。


「これ何―?」


 私はミミックオクトパスの体内からあるものを取り出した


「タコの心臓だ。端末の中に捨てておけ」

「はーい。」



 ファンタジーの王道、魔物の体内から魔石が! とかいう展開じゃなくてがっくり。

 心臓を抜き取られたミミックオクトパスにバールでめった刺しにしてとどめを刺した。


 軟体動物ってなんであんなにしぶといんだろう。

 心臓だけ盗み取ったのに生きてるし、足を切り離してもうごめくし。


「ついでだ。ソラ、あの木に化けているミミックオクトパスを殺しておけ」

「………コクリ」



 言われるがままにソラくんもミミックオクトパスを何度も蹴りつけて殺していまーす。

 宇宙人としてのパワーが強いせいか、蹴りつけるたびに地面が耕されているよー



「んー………」


 私のユニークスキルは天職の【泥棒】の通りに、盗むことに非常に長けた、私らしい能力であった。



               ☆



「さて、町が見えてきたぞ。お前たちはどうしてあそこにいたんだ?」

「えーっとねー。人を探してたのー」

「人? どいつだ?」

「私のおにーちゃん。こんな人―」


 私の画像フォルダに入っているおっちゃんの写真を葡萄に見せる


「なんだこれ、死んでんのか?」

「あ、間違えた!」



 間違えておっちゃんの胸に包丁が突き刺さっている一番人に見せちゃいけない写真を見せちゃったー!


「………え、おい、またおっちゃん死んでたのか? いつの写真だ」

「き、昨日のだよー………おっちゃんがへたくそなキャベツのみじん切りの途中で指を切って、反射的に手を離したら包丁がすっぽ抜けて、たまたま落ちてたビニール袋に足を取られて転んでしまい、上から降って来た包丁が………」

「………やめろ、なんだかマヌケすぎて聞きたくない」


 ドン引きの澄海くんが私のおっちゃんの死亡事故の状況説明をシャットアウト。


「おい、なんだったんだ、今の写真は」

「な、なんでもないー! こっち、こっちの写真だったよー」


 スライドさせて、表示したのはー

 噛みしめるようにカレーを頬張るおっちゃんとー、おっちゃんの腕にしがみついて不安そうにカレーを食べるおっちゃんを見つめるクロちゃん。

 おっちゃんの膝の上で両手を広げる元気いっぱいのティモちゃん。

 やれやれと傍観者気取りの澄海くん。

 ケラケラとビールを片手に笑っている礼子さん。


 そして、その様子を自撮りしている私だねー。


 場所は澄海くんちの茶の間だ。

 普段私たちのお世話をしてくれるおっちゃんにお礼をしたくて、おっちゃんにカレーを作ってあげた時の写真だよー


「なんだか楽しそうだな、探しているのは、この兄ちゃんか?」

「そーそー。私のおにーちゃん。知るわけないとは思うけど、知らない?」



「ふむ………なるほど………」



 葡萄は顎鬚に手を当て、じっと写真を見つめ、何かを思い出すかのように眼を閉じ、今度は私と澄海くんの顔を見つめる


「んー? どうかしたー?」

「いや………悪いが、知らんな。」

「そーだよねー………わかってたー」



 葡萄に見せていたスマホをポッケに戻す。


「さて、町についたわけだが、どうする。自分ちに帰るか?」



 町にはとくに検問があるわけでも門番が立っているわけでもなかったので、あっさり入ることができたよー


「自分ちないからいいー。おにーちゃんがどこにいるのかさえ分かればいいんだけどー………」

「………タマ、おっちゃんじゃなくて、学校ごと転移しているんだろ」

「そーだった、うっかりー。葡萄さん、今日大きな建造物が出現しなかったー? そこにいきたいのー。たぶん、そこに私のおにーちゃんがいるからねー」


 澄海くんのおかげで質問に幅ができた。

 自分がどれだけおっちゃんのことしか見ていなかったかがわかるよー


 ちゃんとしなくっちゃ!



「あー? なんだ、お前らもそこに行くつもりだったのか。じゃあ、案内してやるよ」

「わーい! 葡萄さん大好きー!」

「おー。好かれてうれしいなー」


 棒読みで返された。

 しかし、そうか。目的地は一緒かー。


 連れてってくれるのはありがたいけど、なんで子供の私たちをそのまま連れていけるんだろう。

 もっと、誘拐を疑われるかも、とか親はなんて言っているんだ、とか聞かれると思ったのに、そういう質問もないんだよねー


「何をするにしても、まずは討伐したモンスターの換金からだ。旅には資金が必要だからな」


 それもそうだねー。

 そもそも、この世界のことをよく知らないし、子供が戦っている世界かもしれない。

 子供が冒険していてもおかしくないのかもしれないし、

 孤児だと思われているのかもしれいない。


 何はともあれ、この葡萄の言う通り、今するべきはお金を工面することだ。




                 ☆



 お金の工面は葡萄が全部やってくれたよー



                 ☆




「お金って、電子マネーなんだねー………」

「何万年か前は普通に硬貨を使ってたみたいだけどな。最近はお偉いさん方以外はもっぱら電子マネーが主流だ。別に硬貨が使えないってわけでもないしな。チャージするときは硬貨だし、露店で買い物するときも硬貨だ。」

「ほへー………」



 町に来る途中に倒したコボルトたちのお金を葡萄からスマホ経由で受け取る。

 18万ギルと記載されていた。この単位がジンバブエドル並の値段だったら貧乏ね。

 そうでないことを祈るけど。


「さて、長距離移動するにあたって、『馬』と『飛行船』と『緊急用転移装置』があるわけだがどれにする?」




 葡萄が用意した選択肢に、


「ちょっとまってー」


 と葡萄から距離を置いて澄海ソラくんと会議。


「異世界だと思って油断してたけどー………現代日本よりどこか技術が進んでる感じがするよねー………。スマホが標準装備だしー、町の人もスマホ歩きしてるしー、それになに転移装置ってー。科学なのー? 魔法なのー?」

「………全部がちぐはぐ。わけわからない世界だね。」

「あとー、普段の私なら迷いなく『緊急用転移装置』を選んでいるところだけどー、ボケ担当としての勘が、あれはボケでは済まされないと警鐘を鳴らしているのー。」

「………考えられる可能性は『緊急用』というからには、その場からの脱出が目的であるために、行先はランダム」

「それっぽいねー」

「………馬というのも、無駄に科学技術が発展しているこの異世界には合わないかも」

「飛行船とか作る技術があるなら、車があってもおかしくないもんねー」



 と、ソラ君と二人で世界の認識と会議をパパっと終わらせ

 葡萄に向きなおると


「「飛行船で」」


「よしきた。搭乗手続きを行うぞ。ついてこい」


 葡萄はスマホをいじって航空チケットを3人分購入し


「搭乗手続きはフライトの20分前までに終わらせなければ飛行船に乗ることもできん。急ぐぞ!」

「あらやだ、やけに現実的」

「………(嘆息)」



 町の中に飛行船の発着場があることが驚きだよー。


「よし、じゃあいくぞ」(ドンッ!)

「………」(ダンッ!!)

「え、ちょっ!」(タッ!)



 発着場まで全速力で走ることになった。



 宇宙人としてバカみたいな体力がある澄海くんは涼しい顔して葡萄についていくし

 葡萄は常人を遥かに超えたスピードで突っ走る。


 私はクロちゃんよりも運動能力が低いんだからー! ついていくのがやっとだよー!!


 私はそんな化け物じみた瞬発力は持ち合わせていないんだってばー!

 まってよー!!!





『なんだ、風が吹いたぞ』

『なんだか大男と白髪の少年と銀髪の少女が見えた気がしたが』

『どえらいスピードだったな』

『人間業じゃねえな』

『Sランク級の人間なら可能だろう』

『なんだSランクか』

『Sランクなら仕方ないな』




 ひーん! なんだか町の人から私まで人外扱いを受けている気がするよー!!

 私はボケ担当、ボケ担当なんだからー!

 私にツッコミ役を回さないでー!!


 って私は猫の妖怪だったから元から人外だ!!



                ☆



「ここが飛行船の発着場だ」

「………」

「ぜぇ………ぜぇ………」



 この化け物ども………汗の一つもかかずに………!

 こちとら全力で走って全身汗だくだよー。着替えたいよー………


「………タマ、汗だくだぞ」

「澄海くんたちが早すぎるんだよー! それに今! 私はシロー!!」

「僕もソラだよ。」

「フカーっ!! あげ足をとるなー!」


 膝に手をついて全力で叫ぶものの、体力の限界が………


「仲良しだな。よっと………」

「うひゃあ!?」


 葡萄が私を肩に担いで歩いていく

 ああ、もういいよ。抵抗するのも面倒くさい


「オレのスピードについてくるだけでも、大したもんだ」

「せめて汗を拭かせてー………」

「………機内で拭け」

「乙女の扱いがなってないよー!」



 ぐったりと葡萄に全体重を預けて飛行船に乗り込んだよぉ


「まっててね、おっちゃん………!」



 異世界に閉じ込められて帰れなくなったおっちゃん。

 絶対に助けてあげるからねー………!



               ☆



――その頃のおっちゃんは


「うん? 外は雨が降って来たか………」

「せ、センパイ、よそ見しないでください! キャベツの千切りはわたしがしますから! 手つきが危なっかしいです!」

「そう? じゃあおっちゃん玉ねぎのみじん切りを」

「私がやっといたわ」

「せやったらニンジンの皮むきをば」

「僕がやっちゃった」

「さてはおっちゃんに料理作らせる気がないな? こちとら男性料理教室にも通っていたこともあるんやで!」

「おっちゃんの卵焼きはおいしいけど、他の料理は未だに料理本を片手に分量を見ながら恐る恐るやってるから自分たちでやった方が早いんだよ。包丁の扱いはおっちゃんよりは下手だけど、味付けと炒めるくらいは僕もできるし。」

「むきー! 男はのけもんか! 栄養計算だけはバッチリなんやで! フユルギたんもなんか言ったれ!」

「………ZZZ」

「寝とるー!!」


 ハーレム状態で家庭科室で料理を作っていた。



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