第26話 みくる宅―岡田タマ【霊体の手】
SIDE タマ
おっちゃんたちが異世界に飛ばされているなか、わたしたち地球の小学生組が奮闘する番だよー!
学校跡地にある魔法陣を写真に収めた後、コンビニでプリントアウトして、その写真をもってやってきたのはー!
「おじゃましまーす」
「おじゃま、します」
「おっじゃましまーす!」
「………ただいま。」
勝手知ったるなんとやらー!
この辺の地域のインチキ金持ち!
澄海くんちー!!
いえーい!!
わたし、クロちゃん、ティモちゃん、スカイくんの順でスカイくんちに入ったよー。
ここで修行しているせいか、もはや勝手に入っても文句も言われないんだよねー
「れーいこさーん」
靴を脱いで屋敷に入り、礼子さんを呼びながら廊下を練り歩く。
無駄に広いねー
「おーう、待っていローズマリーゼント」
おっと、ふすまの奥から返事が返ってきた。
礼子さんはインチキ霊媒師。
語尾でしりとりする変わった人だよー。
わたしもふくめて、語尾語頭キャラのなかでもダントツのヘンテコな語尾をお持ちなのだー!
「待たせたなっとう。して、成果は?」
そんで、現れたのは、紅白の衣装に身を包んだ、中学生くらいの巫女のお姉さん。
この人が澄海くんのお母さんだよー。
上段礼子(うえんだんれいこ)さん。年は23歳。
14の時に澄海くんを出産し、その時から時が止まったように肉体が成長を止めてしまったらしいのー。
こればっかりは宇宙人のハーフと結婚してしまった弊害なんだってー。
ちなみに去年、大学を卒業したらしいよー。
なんで巫女の恰好をしているのかってー?
コスプレだってー。
霊媒師としての格好事態に意味はないけど、雰囲気が出るから基本巫女服で生活している変わったお母さんだよー。
おっとっとー、そんなことより学校で撮った写真をわたさなければ。
「これでござるー」
てれってれー!
と折りたたんだ紙を礼子さんに差し出す。
「サンキュー。そんじゃ、解析するか。どうする猫ども。その間修行でもしとく? タマと澄海は幽体離脱の訓練の途中だったろ。クロは憑依、ティモ坊は呪術がまだ中途半端だし。」
「………。」
紙の束を受け取った礼子さんが修行の続きを促すが、澄海くんが何も言わずに踵を返す
「あ、おい、澄海! どこに行く気ダージリン」
「………。散策。ママは魔法陣の解析してて。僕はそのへんをもうちょっと調べてみる。」
白髪の隙間から見える赤目は、どこか遠くを見ていた。
もしかしてー………
「幽体離脱、苦手なんだねー」
「………。ほっとけ」
やっぱりー。訓練をサボりたいだけだったねー。
幽体離脱の訓練は、基本横になって目をつむり、自分の身体の上に精巧な自分のイメージを作り続けることだよー。
集中してても眠くなるんだよねー。
それを呼吸するように幽体離脱する大山礼子さんは本当に化け物だよー。
本人曰くー、『服脱ぐより簡単に魂脱げる』というのだから恐ろしいよねー。
礼子さんの得意分野が【幽体離脱】。
必殺技が生身の人間ならば一撃で植物状態にする【幽体剥離】。
幽体離脱を極め、腕の霊体だけを飛ばす【部分離脱】。
霊体に触れないなら、自分が霊体になればいいじゃないか、と極めてしまったみたいなのー。
わたしも、頑張ってはいるんだけど、霊体のイメージが固まらなくてねー。
自分の霊体をイメージしやすいようにってことで、一度無理やり【幽体剥離】で霊体を引っぺがされたときは、危うくおっちゃんといっしょに彼岸にいくところだったよー。
「あー。まあ、修ちゃんもいないし、仕事も入らないし、急いで修行することもないか。好きにシロッププラモデル。」
「………(コクリ) ティモとクロは修行してて。散策は僕とタマが行く」
「えー! ずーるーいー! ぼくも行きたいー!」
「ティモちゃん、修さんが戻って来た時に、少しでも成長した姿を見せられるよう、がんばろう、ね?」
「むぅー!」
一緒に行きたいと駄々をこねるティモちゃんをクロちゃんが宥め、
「ありがとー、クロちゃん。それじゃー、ちょっと行ってくるね~」
澄海くんに連れられて、屋敷の外へ
☆
「目的地はおっちゃんのボロアパートかみくるちゃんちなんでしょー? なんでパートナーをわたしにしたのかなー?」
わたしは家を出て、手を後ろに組み、澄海くんの正面に回り込んで覗き込むように問う。
「………そこまでわかってるなら、気付いてるだろ。他の二匹より、タマはずっと頭がいい。たぶん、僕よりも。だから、もしもの時に一番頼りになる」
こちらを見ずに、顔色も変えずに淡々と答える澄海くん。
よくもまあ恥ずかしげもなくそういうことを言えるねー。
当然か。澄海くんにもわたしにも。恋愛感情なんてないもんねー。
あるのは、最初から最後まで、互いを利用しようという腹黒さだけだよー。
なんだかんだで、大事な友達であることも変わりないけどねー。
「まあ、何するかはだいたいわかるけどー」
「………。他のみんなはきっと臆する。もしくは好奇心で足を引っ張る。でも、タマなら、間違いなく躊躇なく実行する胆力があるから。」
さすが。わたしの性格のことをよくわかっていらっしゃるー。
でもー、わたしはボケ担当だよー? ふざけるのは得意なのー。
「もー、わかったよー。わかったから。もともとキョーミあったしー。澄海くんの作戦にも賛成。」
「………話が早くて助かる。」
わたしと澄海くんは無言で足を進め
澄海くんが足を止める。
そこは、みくるちゃんが住むアパート。
「………じゃあ、行こうか。異世界に」
「おっけー」
おっちゃんの後を追うように、わたしたちも異世界に飛び込んでみよう。
☆
「おじゃましまーす!」
勝手知ったるなんとやらー!
みくるちゃんのお部屋に侵入しましたー!
「にゃーん!」
「やー、ブチ丸ちゃん、カーワーイーイー!」
みくるちゃんのお部屋に入ると、ブチ丸がわたしの足に体をこすりつけてきた。
これは構ってほしい合図だ。
ひょいと抱き上げてブチ丸のほっぺとわたしのほっぺをすりすり。
ぐいっとわたしの顔を遠ざけるブチ丸。
この遠ざけるしぐさも、人型になった今となっては懐かしー。
感性も本能もほとんど人間のそれと同じになってしまったから猫らしい行動って減ってしまったんだよねー
「ブチ丸ちゃん、みくるちゃんのところに案内してー?」
「にゃーん」
わかったぞ! とわたしの腕から飛び降りて案内してくれるブチ丸。
「みくるちゃーん………って、やっぱり寝てるか」
布団をかぶって荒い息を吐きながら寝ていたみくるちゃん
寝苦しそうだしすごい汗をかいているねー。
「ちょっと汗拭いてあげよっかな。」
勝手に入って勝手に看病。なにこのシチュエーション!
わたしが恋愛漫画の読者だったらちょっと萌える展開!
でも、ここにいるのが、見た目は完全に女の子のみくるちゃんだ。
ときめかない!
「よいしょっと。うわー、やっぱり小さくて細いなー、みくるちゃんのゆび―」
男の子とは思えない、か細い腕や腰。
骨格まで女の子のそれっぽいけど、男の子なんだよねー
「服を脱がせて―っと。澄海くん、そっちのタンスの中にタオルが入ってるからもってきてー」
「………なぜ人んちのタンス事情を知っている」
「人んちを探検するのって楽しいよねー」
「………。」
やれやれと首を振ってため息を一つこぼす澄海くん。
「しかも、この部屋ってどこにもエロ本が落ちてないのー! 動物図鑑と動物写真集ばっかりなんだよねー」
「………この人は、筋金入りのケモナーだから」
タンスからアニマルタオルを取り出し、わたしに放る澄海くん。
ポンポンとやさしく体を拭いてあげるていると、服の中から一匹の子狐が顔を出す
「蘭丸ちゃん、おねーちゃんだよー」
「きゅう~………」
「え、おなかすいた? んー、最後にミルクをあげた時間がわたしがミルクをあげた時間だと考えると、たしかにそろそろミルクの時間かもー。」
みくるちゃんの身体の汗を拭いていたら、蘭丸ちゃんがわたしにおなかがすいたと言って来た。
むー………本当はすぐにでも異世界に行きたかったけどー………
「まー、いーかー。ミルクをあげてからでもー」
「………??」
わたしがみくるちゃんの身体を拭きながら蘭丸の相手をしていると、澄海くんが不可解そうにわたしを見つめくるけどー………なーにー?
「んー? どーしたのー? 澄海くーん」
「タマって、猫以外とも会話できたんだっけ?」
あー、それねー
「みくるちゃんの半径3m以内にいるとねー、別の動物ともお話しできちゃうのー。みくるちゃんの能力ってー、自分だけに効果があるんじゃなくてー、自分と周囲の動物に効果をあたえるものだからねー」
「………そうなんだ」
「そーそー。みくるちゃんが持ってる超能力、【
そう、わたしが今、猫以外の動物とコミュニケーションを取れる理由はみくるちゃんの能力によるものなのー。
もちろん、みくるちゃんの傍を離れたら会話はできないんだけどねー
「………僕は動物たちの言葉はわからないけど」
「だって澄海くんはほぼほぼ人間だからねー。わたしは元が純正の白猫だもん。そりゃーみくるちゃんの能力でもわたしを猫だって判断してくれるよー。あ、お湯沸かしてもらっていいー?」
「………わかった」
ちょっと意外そうに眼を見開いた後、すぐにお湯を沸かすために部屋から出た。
そこで、みくるちゃんの服の中から、さらに小さな生き物。シマリスのアリスがでてきちゃったー
「アリスおねーちゃんも、服の中にいたんだー」
「キュッ!」
「んふふ~、とらない、とらないよー。わたしが大好きなのはおっちゃんだから、みくるちゃんを取ったりしないってば―」
みくるちゃんの服を飛び出したかと思えばー、小人サイズではどうしてもみくるちゃんのお世話をできないアリスがやきもちをやいてわたしのまわりをちょろちょろと走り出す
「あはは、くすぐったいよー」
「………なんでもいいから、はやくしてくれ」
「はっ」
お湯を準備していた澄海くんのぼそりと呟いた声に、わたしは急いでみくるちゃんの服を戻した。
ちなみにお湯はティファールで沸かしているそうです。
☆
さてさてー、蘭丸にミルクをあげたしー、
ミルクをあげた時間を記した紙をテーブルに置いておく。
さらにみくるちゃんの枕を少しだけたかくしてから、みくるちゃんのふとんに潜り込んじゃえー。
「………冷蔵庫の中に、クッキー入ってた。多分これ。なんか特殊な気配を感じるし、間違いない」
「おっけー、ありがとー、澄海くん」
「………なんで布団に入ってるの」
「だってー、それ食べたら意識なくなっちゃうんでしょー? 準備は万端にねー。澄海くんも入ったらー?」
みくるちゃんのベッドはペットと寝るために、無駄にセミダブルサイズだよー。
みくるちゃん自体が小柄だから、スペースにかなり空きがあるんだよねー。
布団の端っこを持ち上げてこっちに来るように澄海くんを誘ってみるけどー
「………遠慮しとく。僕、すわったままでも寝れるし」
あらー、残念。一緒に寝たらあったかそうだったのにー。
「それじゃー、いっしょに異世界トリップしよー。わたしの口にいれてー」
「………。」
「あーん」
短く嘆息した澄海くんがわたしの口にクッキーを放り込んだ。
「………意識のなくなるクッキーだってのに、本当に躊躇いがないな………」
「ふぁやふおっひゃんにふぁいふぁいもん(はやくおっちゃんに会いたいもん)」
「………咀嚼したまましゃべるな」
「(ごくり)、ほら、今度は澄海くんの番だよー」
クッキーは横に寝た状態じゃ飲み込みにくかったけど、嚥下して、澄海くんが今度はクッキーを食べるように促す。
「………(こくり)」
小さくうなずいた澄海くんが口にクッキーを放り込んだのを見届け
「―――」
わたしの意識は一足先に異世界へと旅立った。
☆
――― 名前を設定してください ―――
『シロ』
――― 種族を設定してください ―――
『アイウラントロピー』
――― 性別を設定してください ―――
『女』
――― 天職を設定しました ―――
『
初期武器――【バールのようなもの】
―――最上位職Lv.MAXにつき、ユニークスキル【
名前:【シロ】
種族:
性別:女
天職:【
サブ職業:【 】Lv.‐‐
HP: 7600/7600
MP: 9900/9900
攻撃: 2100
防御: 1510
素早さ: 2200
知力: 1200
器用: 15500
ジョブスキル:【盗賊】【スリ師】
獲得可能職業スキル:【カット(1)】【ピック(1)】【罠発見(1)】【探知(1)】etc...
獲得可能スキル:【偽装(5)】【縮地(10)】【変身(1)】etc…
ユニークスキル:【
ジョブスキルポイント:3750(150ポイント消費でサブ職業取得可能)
――― 150ポイント消費しました。サブ職業を選択してください ―――
【霊媒師】
初期武器――【数珠】【塩】
――― 設定完了
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