第20話 魔界ー丘公文【蜘蛛の巣】
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北のレーセン大陸。
ここは魔族の支配する領域。伝説の3銃士が邪神を封印した大陸。通称、『魔界』
強力な魔族や魔物が跋扈する、瘴気に満ちた大陸。
そこにも、地球から一つの学校が転移していた
『ぐじゅぐじゅぼげばぁあああ!!!』
「あっははははは!! みてよホタル! なにこれキモイ! こわいこわいキモイ!」
子供のような体系の中学生が黒い『化け物』を蹴り飛ばしながら大爆笑する
蹴り飛ばされた『化け物』は、学校の壁に向かって飛んでいくと、スパン! という音と共に4つに輪切りにされた。
「はしゃぐなクモちゃん、死んだらシャレにならんっつの」
ホタルと呼ばれたこの少年は、
そんなホタルの元へと、真っ黒な『化け物』が迫ってきた
『ぐじゅるるるばばおおお!!!!』
「邪魔くせえ!」
しかし、ホタルはそれに怯えることはなかった。
突如松葉杖が“緑色”に発光したかと思えば、ホタルは無造作に松葉杖を振るうと。
バギョッ! という音と共に『化け物』の頭がはじけ飛んだのだ。
それでもうねうねと動く『化け物』に松葉杖の足を向ける。
持ち手についた引き金を引くと――ドパン! という炸裂音が響いた。
松葉杖は改造ショットガン。実家の財力に物言わせて魔改造した、最強の松葉杖だ。
さすがの『化け物』も、改造松葉杖を至近距離で受けてしまえば、内臓をぶちまけてバラバラになるしかなかった。
松葉杖の取手を手前に引いて薬莢を排出すると、ホタルは再び松葉杖を地面に付ける。
「そうはいってもね、ホタル。こいつら言語がぐじゅぐじゅしてるんだよ? これをキモイと言わずになんという! キモイ以外の言葉が見つからないね!!」
宙にぶら下がって片耳をふさいで騒ぎ立てるクモちゃんと呼ばれた中学生は、
五指からワイヤーを飛ばして罠を張り、『化け物』を切断しているのは彼の異常。ユニークスキル・【
彼は右手の五指から目に見えないほど細く、そして決して切れることのない頑丈な糸を出し、左手の五指からは引っ付いたら絶対にはなれない粘着質な糸を出すことができる。
ただし、熱にめっぽう弱い。
そんな異能に目覚めていた。
「そりゃあそうだが………こいつら異様に強いぞ。クモちゃんも油断しすぎて死ぬなよ」
「死なないよっ! 僕を誰だと思っているの? 地元のヒーロー、丘公文だよっ!」
お調子者でちびっこでうるさい子供だが、やるときはやるのだ。
ホタルもクモンを信頼して背中を任せている。
そんなホタルの異能は【
両手を7色に光らせることが可能という異能だ。
色にはそれぞれ効果が宿っており、
赤は熱変動耐性
橙は無生物の操作
黄は通気性の遮断
緑は硬化
青は水中耐性
藍は軟化or液状化
紫は洗脳
この効果を触れた物に付加することができる。色によって効果時間は異なるがおよそ1分程度の効果を発揮する支援特化のユニークスキルだ
「しっかし、この『化け物』も、いったいどこから来ているんだか………。キリがねえな」
「そうだね! キリがないね! キリがないから切り刻んであげるね! それそれそれーーーー!!!」
『ぐじゅばばばばばあああああじゅるるる!!!!』
「あはははははは! 変な声! 変な声だよホタル!」
「クモちゃん、うるせえ死ね」
「ごめん! 死なない!」
ハイテンションの子供と、ローテンションの青年の組み合わせだが、実のところ、学校の生徒はこの二人以外、『全滅』していた。
生徒会長なる人物が剣を持って立ち向かったが、一瞬で地面に染まる真っ赤なシミになった。
脳みその狂っているクモンの方はその様子をケラケラと笑いながら爆笑し、ホタルの方は片足が使えないので保健室でおとなしくしていた。
その間に侵入してきた『化け物』に学校が蹂躙され、校舎は崩壊し、生徒は殺された。
『化け物』の苗床になった生徒もいる。
そんな中で、自分たちに忍び寄る魔の手のみを排除していたら、いつの間にか自分たち以外の生存者は存在しなかったのだ。
そもそも、魔界は瘴気が濃い場所だ。
普通の人間、それもレベルが覚醒していない一般人など、一息吸えばそれだけでコロリンだ。
異世界に召喚されたこの学校は、ものの10分で完全崩壊することになった。
『ぐじゅるゅぶるるるrばああご!!』
「あっはははは! くすぐったい! そんなところに入れちゃらめええええ!!」
触手の『化け物』に蹂躙されても大爆笑のクモン。
―――ブツン!
穴という穴を侵される前に右手のワイヤーを引っ張って触手をすべて切断する
「ひーっはははは、あーくすぐったかった」
「遊ぶな死ね」
「ごめん、死なない!」
完全崩壊した学園で生き残った二人の中学生。
そんな異常事態を前に、魔王軍が接触を試みようとしていた
「あはは、見てホタル! ぬちょぬちょになっちゃった!」
「キモイ、ちょっと寄らないでもらってもいいですか」
「いきなり他人行儀はやめてホタル! タッチしちゃうぞ! クモン菌をホタルに移しちゃうゾ!!」
「うおっ! 寄るなバカ! 俺は歩けねえんだぷるぅあ!!?」
「あははははは! ホタルもぬちょぬちょだ! ざまーみろ!」
「クモちゃん………いっぺん死ね! ゴルァ!!」
「ごめん、死なない!!」
そんなこととはつゆ知らず
松葉杖の少年とターザン移動する子供の追いかけっこが始まった。
☆
「岡田!!」
バンッ!! とボランティア部の部室を乱暴に開くのは、修やフユルギ達の通う学校の美少女。
樋口ドラムだ。
「屋上から見てたわよ、いったいなに、を………?」
ボランティア部の部室の中を覗けば、そこに広がっていた光景は―――
「………zzz」←地面に倒れて寝息を立てる修
「………zzz」←修の腹に顔をうずめて寝息を立てる智香
「………zzz」←膝を立てて眠るフユルギ
「………?」
「………な、なにごとです!?」
いきなり開いた扉に驚いて振り返る葵。
そして、みくるちゃんはといえば、修の頭を膝枕していた
「な、な、なっ―――!」
ドラムの視界に映ったのは、美少女に膝枕される修。
もう一度言っておこう。
ドラムの瞳には美少女に膝枕され、腹を中学生の枕にされている修だけを映していたっ!!
「なにしてるのよ―――――!!」
大声を出してずかずかとボランティア部に入るドラム。
さすがに耳にキーンと来たのか、片耳を押さえてみくるちゃんも振り返った。
その頬はやや赤く染まっており、瞳は心なしか潤んでいるように見える。
したったらずな鈴のような声がその小さな桜色の唇から聞こえてきた。
「おきゃくさんかな?」
「ちがうわよ! っていうかあなたたち誰! 生徒じゃないわよね、ここで何しているの? なんでみんな寝てるの! いったい何をしたのよ!」
みくるちゃんは膝の上に修の頭が乗っているにも関わらず、構わず立ち上がると、ゴッ! という鈍い音を響かせながら修はリノリウムの床に後頭部を打ち付けた
しかしながら、深く眠っているのか、修は目を覚ますことはなかった。
「なにもしてないよ。すぐに目は覚めるはずだし、なにか用事があるならお茶でも出すから、ゆっくりしなよ」
「いいわよいらない! あなたたちは誰! 岡田とどんな関係よ!」
頭を打ち付けた修の頭を持ち上げて守るように抱きしめるドラム。
修の顔に胸をギュウっと押し付けるようにしているが、当然、修は眠っているので何も知らない。
「ええっとですね、あなた方からすれば異世界人ということになるのでしょうか。私は風丸葵です。鴉天狗です。そこの小さい女の子に連れて来られました。なりゆきですが、なぜ私がここにいるのかもわからない状態ですです」
「異世界人………?」
「そうです。私からも聞きたいことがあるのですが、いきなりこの世界にきたあなたたちは侵略者です?」
「侵略?」
葵にとっては異世界人は驚異の存在だ。
目の前にいる智香、修、不動、みくるちゃんの4人はすでに化け物じみた能力を持っている。
他の異世界人も同じように化け物じみた異能力を持っている可能性が捨てきれないのだ。
今まで見てきた修やみくる、フユルギといった者たちは侵略をするような人間には見えず、それどころか気配りまで視えた。
だからといって、他の者たちまで同列と考えるわけにはいかないのだ。
「そんなことは………すくなくともあたしはしないわ。あたしだっていきなりこの世界にきて困惑しているもの。………って、そんなことはどうだっていいのよ! あなた、そう、金髪の! あなた、岡田とどんな関係よ!」
ドラムも自分がなぜ異世界に飛ばされたのかを理解していない。
仮装したローブの男が何かをしたという情報しかないのだ。
しかも、その仮装した男は学校が異世界転移した後には姿を現していないのだから。
しかし、その思考すら隅に追いやり、金髪の美少女であるみくるちゃんをビシッと指さして修との関係が何なのかを明らかにしようとする。
ドラムにとってはそれが何よりも大切な情報だったからだ。
「どんな関係って………いっしょに風呂に入れる程度には仲がいいつもりだよ」
「ふっろぉ!???」
みくるちゃんは、本来は男の子。
元々一人暮らし(いろいろ住み着いているが)の修と、同じく一人暮らし(ペットはいっぱい)のみくるちゃんは、互いのアパートに泊まりにくことがよくあるのだ。
幼いころから一緒に過ごしているというのもある。
とはいえ、現在のみくるちゃんの姿は完全に美少女。
美少女が一緒にお風呂に入れる程度に仲がいいというのは、つまり恋人ではないか
この異世界に来て、修はモテモテなのだろうか、修のようなヘタレ顔の方がモテるのだろうか
決してイケメンではないから競争率は低いと思っていたのに、この少女は修に好意を寄せているらしい。しかも両想い!
さらに、修の腹の上で寝息を立てている幼い少女………智香も、飛び切りの美少女だ。
なぜ修の腹を枕にしているのかはわからないが、修の腹に安心できる何かがあるのか。それとも智香も修のことを好きなのか。一夫多妻なのか、修はまさかのハーレム属性もち!?? ぐるぐるとおかしな思考が頭の中をよぎるドラム。
「そ、そう………岡田って、モテるのね………」
「え、おっちゃん? 意外とモテるよ。とくに小っちゃい子供にね。ロリコンの癖に小っちゃい子供にモテるとか、ほんと、天国みたいな男だよね、おっちゃん。」
呆然と呟くドラムのセリフを肯定するみくるちゃん。
ぽやぽやとした声で、ふらふらとみくるちゃんの頭が揺れ動いている
「今だって3人の子供育ててるし、その子たちから好感度マックスなんだもん。嫉妬しちゃうよ」
「うえ!?」
まさかの修が子育てしているという発言に喉の奥から変な声が漏れるドラム
修が子供を育てているなど、聞いたこともない話だった。
「そ、それ、本当に?」
異世界人である少女に、それが事実かを確認したその矢先
「あ、その話で思い出した! そろそろ僕、蘭丸にミルクあげないといけないんだった! うわ、どうしよう。おなかすいてないかな、心配だなぁ………葵ちゃん、ごめんね、後のことはおねがい!!」
みくるちゃんは頭の上にのせていた子猫を葵に抱かせたと思ったら、眠そうに潤んでいた瞳を覆う、とろんとした瞼をカッと開いてみくるちゃんはスマホを取り出す
「うぐ、めまいが………風邪がぶりかえしてきた………。僕の本体が衰弱してるからかなぁ………。急がないと………」
頭をふらふらと揺らしながらスマホを凝視し、
「ねえ、ちょっとあなた、ふらふらしてるけど本当に大丈夫なの? あ、鼻血でてるわよ!」
「大丈夫じゃないけど………スライドドロップして、よし。ウチの子狐にミルクあげたらまた来るね!」
高速でタタタタタッ! と画面をタップすると、みくるちゃんの姿が掻き消えた
「はわっ!?」
「消えたです!?」
いきなり消えたみくるちゃんに困惑し、そのばに取り残された葵とドラムは
「なんだったのよ、いったい………」
「私にもわかりませんです」
渡された子猫を見つめ、途方に暮れるしかなかった。
「………ん」
「あたた、なんや頭痛い………」
そんな時、智香と修が同時に目を覚ました。
「………本当にクッキーたべたらアバター設定できるのね」
「あれ? んひょえー! ドム子さん! なひけおっちゃんの頭を膝枕してはるのん!?」
修の腹の上からゆっくりと頭を起こす智香と、なぜか自分を膝枕しているドラムにびっくり仰天して飛び起きてしまう修
修は女性が苦手だ。
子供なら平気なのだが、女性というだけで修は鳥肌が立つ。
顔には出さないように注意するが、トラウマは消えない。
「きゃあ! いきなり起き上がらないでよ! びっくりするじゃない!!」
「それおっちゃんのセリフやでー!」
いきなり修が目を覚ましたことにドラムの方も驚き、顔を真っ赤にして後ずさる
(………目覚めてそうそう訳が分からないけれど、これはアレね。この女の人はオサムのことが好きなのね)
(しかも修さんの方はその好意にまったく気づいていないどころか、女性そのものを苦手としているみたいです。好意に対して『鈍感』ではなく『興味がない』というのが正しいです)
その様子を見ていた智香と葵はどちらも勘の鋭い女であった。
鋭くなければスクープなど見逃してしまうだろう。
鋭くなければプロの聞き上手には成れないだろう。
そんな鈍感系などとは無縁の乙女たちだった。
「………オサム」
このままではらちが明かないと判断した智香は、修のオタTシャツをくいくいと引っ張る。
「ああ、はいはい。ドム子さんはちょっと隅っこで丸くなっててくいやん。おっちゃんちょっとこの智香ちゃんに説明せなあかんことがあるでな」
「あ、はい」
自分はどうやら蚊帳の外だということを知ったドラムは、修に言われた通りに部室の隅っこの椅子に座って膝を抱え、丸くなった。
興味のない修の代わりにチラリと智香は横目で見たが、ドラムはスパッツだった。
「そういやみくるちゃんは?」
「みくる様は、子狐にミルクあげたらすぐに戻ってくるとかどうとかいって、いきなり消えましたです。」
「んもー、おっちゃんたちの本体が無防備に寝とるから監視を頼んでたのに、おっちゃんたちよりも動物たちの方が優先順位高いのは何とも言えんなぁ」
修が視線を巡らせれば、みくるちゃんが消えていることに気付いた
しかもみくるちゃんが預かっていた子猫は葵に預けられているときた。
みくるちゃんの自宅には、まだ乳飲み子である子狐が居たはずだ。動物の世話をおろそかにしないみくるちゃんの中のヒエラルキーでは人間の上に動物様が存在するのだ。
そんなみくるちゃんにあきれつつも、親友のことを肯定する修は、それ以上は何も言わず、智香に説明の続きを行う。
「さて、ミミックオクトパスとキートレントを討伐したからこの部室に戻ってきたわけやけど」
「………生身でアレを討伐したら、元の日本に戻れるかもしれないのね」
「せやで。可能性の域はでないけどねい」
そのセリフにドラムは目を見張って立ち上がろうとするが、「どうぞです」と片手に子猫を抱いた葵にお茶を手渡されて椅子に座りなおす。
この場でドラムはおよびでないのだ。
ドラムは物珍しそうに葵の背に生える漆黒の翼を見る。明らかに人間ではない。
姿かたちは人間に近いが、頭の兜巾は天狗が被るものと云われるモノっぽい。
そういえばさっき鴉天狗だとか言っていたわね。などと考えつつ。修と智香の会話が終了するのを待つ。
………。
数分前………
修たちは、は智香への一通りの説明を終えると、「………その例のクッキー、食べてもいいかしら」とお願いをされたため、チュートリアルとしてDCQログインクッキーを食べさせ、DCQ初心者が出現する草原にミミックオクトパス・キートレントを用意して準備万端の状態でどうすれば自分の本体に意識を戻すことができるかまでをレクチャーしてあげていた
フユルギのアバターは遠くに離れていたため落ち合うことはできなかったが、その代わりに修が【サムソン】のアバターを使い、智香の取得したアバター【チカポン】に“サブ職業”の習得と世界の仕組みについて教えてあげてから、ログアウトすると、今の状態に戻るのである。
当然、アバターに意識を取られている間は、本体は無防備に寝息を立てることになる。
すでに生身の状態からログアウトすれば、日本に戻れるのか、魂だけログアウトしてしまうのか、いまいち不明だが可能性だけは残される。
「………なるほど。ちなみに、そのクッキーって誰にでもつくれるの」
「ああそれな、無理みたいやで。これは【異常者】じゃないと作れないにゃ」
「………ためしたの」
「いや、魔力やら霊力やら、そげん摩訶不思議物質を籠めないと異世界トリップするようなクッキーは作れんよ。智香ちゃんはまだ能力が安定したばっかりだから難しいやろけど、魔力糸を練って魔法陣を作るやり方とか、それもおいおい教えたげる」
「………ん。ありがと」
智香は礼を言うと、先ほどから空気になっていたドラムに視線をよこした
「あなたはやっぱり天狗だったのね」
「そうです。ドラム殿はエルフか何かです? なかなかそのくらいの美人は見かけないです」
「エルフ? エルフ………ああ、そんなんじゃないわよ。人間よ。人間。別に耳も尖ってないし」
「そうですね、じゃあ天然ものの美人さんです! すごいですぅ!」
葵との会話が弾んでいるようだったが、チラチラと視線を修に向けているのが判る。
その視線が訴えかけてくる 『話が終わったら私も混ぜて混ぜて!』と
「………あっち、みてあげて」
「そやね。ドム子さん。おっちゃんになんや用事あったんか?」
もちろん智香は空気を読むことができるプロの聞き上手。相手の考えを読むことは呼吸するようにできる。
ようやく蚊帳の中に入れてもらえたドラムは、尻尾でも生えているかのように、嬉しそうに近寄ってきた
幻想の尻尾がぶんぶんと振り回されているのが判る
「用事も何も、あんたが何か知ってそうだから聞きに来たのよ。日本に帰れるとか言ってたし、どういうことなの?」
素直に疑問を口にするドラム。
智香は【異常】のことを話してしまってもいいのだろうかと首を捻るが、そんな智香の頭に修はポンと手を乗せた
「それな。まだ確定やないけど確かに日本に帰れるかもしれない方法はあるで。」
「どうするのよ、それ………あ、それをみんなに教えれば!」
わけのわからないこの世界から抜けられると聞いてドラムは目を輝かすが、修はそれに水を差す。
「異端者のおっちゃんがそげんこと言っても気味悪がられるだけやんけ。あのな、おっちゃんがマジもんの霊媒師やって知っとるドム子さんやから言うけど、おっちゃんたちみたいなのは世間からは爪弾きモノや。知っとるやろ、おっちゃんがクラスでどげん扱いされとるか。そげん弾かれ者のおっちゃんたちが、異端者を弾いていくような人間を助けたいと思うやろか。すくなくとも俺は助けたいとは思わんよ」
だから、他人に教えることはしない。という修の言葉に、うっと詰まって何も言えなくなるドラム
同時に、智香も修のことをある程度理解した。修がクラスで爪弾きにされていること、ドラムは修が異常者であることを把握していること。
その反応を見て、ふぅとため息を漏らすと、修は続ける
「おっちゃんな、この世界に来た事あんねん」
「えっ!」
「せやから、ここでできることはないか、この世界で生き抜くためにはどうすればいいか。まずそれを考えとるんよ。帰るとかは二の次にしようや。ドム子さんにも、この世界の生き方を教えたげるから」
日本に帰る方法は、やはり教えるつもりはないらしい。
目の前の小さな少女は教えてもらったようだが、ドラムは教えてもらえない。
自分とこの少女とで、何が違うのか。
ドラムには理解ができない。
「………。わかったわ。岡田。この世界の生き方を教えて。あとドム子言うな」
そんな悔しさと、智香に対する嫉妬も、持ち前の精神力でねじ伏せて教えを乞うことにする。
今はそれが最善だと、女の勘が告げていた。
あわよくば二人っきりで教えてもらえれば万々歳だった。
若干の下心もありながら、ドラムはこの世界、DCQシステムのことを学んでいくことになる
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