第13話 王都到着

 王都に行くまでモンスターとの遭遇率はかなり高い。

 その間、憲治は全く役に立たない。


 片隅で怯えるように見ているだけだ。その代り、皮をなめすとなったら、ものすごく早い。

「裁縫スキルだけがどんどん上がってるよな」

 鋏が呆れたように呟いていた。

「だって憲治だもの」

 ピンクッションがそんなフォローをしていた。


 そんなことも無視して、憲治は送られてきた毛糸で編み物をしていた。


「憲治ぃぃ。ほんっとそろそろ……ごめんなさい」

 そろそろ動き出したい鍵が憲治に声をかけたものの、すぐさま翻していた。

 睨んだ(憲治は睨んだわけではない。決して)憲治が怖かったのだ。

「悪い。もう少しでひざ掛けが出来上がるから、待ってくれ」

「誰が使うんだよ!? 誰が!」

「え? チシャ猫的ケットシー」

 さらりと憲治が答える。

「鍵。諦めろ。憲治は猫が寒がりだと思い込んでるからな」

「……その分の優しさを俺にくれ」

「無茶言うな」

 鋏がフォローになっていないフォローで鍵を慰めていた。


 本来ならば三か月で到着する行程のはずが、倍の半年経ってもいまだ王都にたどり着かず鍵はぐったりとしていた。

 憲治に言わせると「雪が降ったから仕方ない」とのことだが、半分以上は憲治が夜遅くまで編み物したり、縫物したりしていたせいである。


 そんなこんなで鍵は突っ込みする気力もなくなっていた。

「そのうちワーウルフの爺に文句つけてやる」

 人選くらいもっとましな奴にしてほしい。例えば地球(向こうの世界)でよく見かけたラノベとかいうやつに出てくる勇者に憧れるやつとか。何も顔だけ悪人な憲治を選ばなくてもよかったはずである。

「しっかし、この世界は今のところ天国だな。好きなだけ好きなものを作れるっ」

 当の憲治は気にすることなくせっせと作っていた。


 そして、鍵の作る空間は憲治の作った色んなモノで溢れていた。



 王都に間もなくというところで、憲治は疑問に思た。

「……そういや、大丈夫なのか?」

「何が?」

 珍しく鍵がつっけんどんに答えてきた。

「いや、今まで魔物以外見かけてないからさ」

「俺がこっちから逃げる前と変わらないんだったら、問題ないと思う。自分のことは何一つ満足にできないやつだから、最低限世話出来るやつは残してるはずだって最初に言ったろ?」

 すっかり忘れていた。そして憲治は女王を自分勝手だと思ったが、他のメンバーから見れば女王と憲治は同類かもしれないという。

「逆に考えれば、憲治でよかったのかも」

 ほのぼのとピンクッションがのたまった。

「何でそうなるんだよ!?」

「だって、女王というくらいだから、女性でしょ? 憲治に服を作ってもらえばいいと思うの」

「……理由」

「城下町にヒトはいるのかしら?」

「……多分ってしか言えねぇ」

「じゃあ、私たちみたいなイキモノは?」

「それは多少いるはずだ」

「そう。ならば案ずるより産むがごとしということで、行きましょ」

 楽しそうにピンクッションが促した。


 そこはまさに、憲治にとってパラダイスだった。

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