第4話

 艦長室を出たところで、ようやく我に帰れたクリフォードC・コリングウッド候補生は、大急ぎで作った作戦案を艦長と航法長が真剣に議論していることに驚きを隠せないでいた。


「大尉。どういうことなのでしょうか? 私の案に何か問題でも?」


 デンゼル大尉は彼に「艦長に褒められたんだ。自信を持てよ」と言って、微笑みかけている。


「もしかしたら、君の案で我々が助かるかもしれない。目の付けどころが良かったということだよ」


 大尉にそう言われたものの、彼は自分の予想が当たっているなら、既に危機的な状況になっているはずだし、外れているなら、評価されるのも変だなと思っていた。


 そんな話をしながら歩いていたら、艦内放送から艦長の声が流れてきた。


「総員に告ぐ。本艦は最大加速に移行する。また、第二戦闘配備に移行するため、各員は持ち場に急行せよ。繰り返す……」


 デンゼル大尉は一気に真剣な表情になり、「すぐに持ち場に行け!」と怒鳴り、自らは既に走り出していた。

 彼はDデッキで艦内作業用の簡易宇宙服であるスペーススーツに着替え、第二戦闘配備中の自らの持ち場である緊急対策所ERCに向かっていった。


 彼は走りながらPDAで情報を確認し、何が起きているんだろうと考えていた。

 PDAにはデイジー27が救難信号を受信したことが表示されている。そして、救難信号の推定発信ポイントが彼の予測した敵の行動範囲内であることに気付く。

 彼は艦長室での艦長と航法長の議論を思い出していた。


(もしかしたら、僕の予想が当っていたのかも……)


 彼は胃を締め付けられるような感じを覚えながら、ERCで待機していた。

 数分後、副長のグレシャム大尉と掌帆長のダットン上級兵曹長がERCに入ってくる。

 副長はERCにいる自分の部下たちに状況を説明していった。


「既にPDAで知っていると思うけど、デイジーが救難信号を拾ったようだわ。あちらが救助に向かうから、こちらはその援護を行う。不測の事態が起こる可能性があるから、各員は私の指示に従うように」


 彼は副長がいつものハスキーな声で穏やかに話しているのを聞き、特に問題があるわけではなく、念のため戦闘配備につけただけと解釈した。


(訓練の一環なのかな? もしかしたら、別の商船の救難信号かも……それだと罠の可能性が……)


 そこまで考えてから、自分は考えすぎだなと思い、緊急対策班の作業手順を思い出すことにした。



 四十分間の減速・再加速が終了し、ブルーベル34の速度は〇・二光速に達していた。

 これから約十分間の慣性航行を行い、二十五分間の減速に入る予定となっている。

 ERCのメインスクリーンから、デイジー27から送られてくる映像と情報が表示されている。彼はそれを見ながら、違和感を覚えていた。


(ヤシマ船籍の神戸丸、五百m百万トン級。メインのパワープラントシステムの故障で非常用システムのみで三日間漂流。ここまではいい。でも、観測データの質量は六十万トンしかないし、三日間漂流していた割には船長と航法士が冷静すぎるような気がする……)


 彼は自らのPDAを操作しながら、神戸丸の積荷リストを眺めていた。


(ヤシマ製の通信機器用部品と調味料、アルコール類か。如何にもありそうな荷だけど、単価の安い物が多い。この積荷なら目一杯詰め込まないと足が出ると思うんだが……)


 PDAの表示されるリストを眺めているうちに「おかしい」と声に出していたようだ。


 それを聞いたグレシャム副長が「候補生。何がおかしいのか」と彼に声をかけてきた。

 口に出している自覚の無かった彼は確証も何もないことで恥を書きたくなかったので、「何でもありません。済みませんでした」と謝罪して済まそうとした。

 だが、副長は「疑問があるなら、報告するのも士官の務めよ。話しなさい」と再度報告を促してきた。

 彼は諦めて自分が考えていたことを副長に話していく。

 副長はその話を聞き、少しだけ考えた後、戦闘指揮所CICのマイヤーズ艦長への回線を開いた。


 彼女は「ご報告したいことがありますが、よろしいでしょうか」と断った後、クリフォードの感じた疑問点を艦長に伝えていった。

 マイヤーズ艦長は「私も何かおかしいと思っていたんだが……コリングウッド候補生はそこにいるか」とクリフォードを呼び出す。


 クリフォードは副長に替わるが、周りの目がある中で艦長と話すことにガチガチに緊張し、「コ、コリングウッド候補生です。艦長サー!」と大声を出していた。

 周りからクスクスという笑い声が聞こえるが、マイヤーズはその笑い声には構わず、「ミスター・コリングウッド。君の考えをもう一度聞かせてくれ」と真剣な表情で命じた。


 クリフォードは副長に報告した内容をそのまま話し、更に「神戸丸に連絡して船のリアルタイム情報を入手してはどうでしょうか」と提案を付け加えた。

 マイヤーズは「既にメインシステムに関する情報提供は受けている」と答えるが、クリフォードは首を少し振り、

「いえ、船内の環境をモニターしている情報です。メインシステムの情報の提供は想定しているでしょうから、ダミー情報を送ることも可能ですが、環境モニターまでは考えていないと思います。空気の汚れなどを知りたいからと言えば提供してくるはずですから、それを機関長チーフ掌帆長ボースンに見てもらえば、あの船の状況はある程度判るのでは無いでしょうか」と付け加えた。


 マイヤーズはその提案を聞き、「候補生。任務に戻ってよし」と言って回線を切った。



 エルマー・マイヤーズ艦長は、自分が感じていた違和感を候補生の言葉で確信に変えた。

 彼はデイジー27を介さず、直接、神戸丸に回線を繋ぐよう通信員に命じた。


(どうも嫌な予感が消えない。それどころかコリングウッドの話を聞くたびに強くなっていく)


 神戸丸まではまだ十五光秒離れており、イライラしながら神戸丸とのやりとりをしていた。


「神戸丸の船長のワタナベだ。この忙しいのに船内環境データが欲しいだと。こっちは手一杯なんだ、勘弁してくれ」


 モンゴロイド系のワタナベ船長はヤシマ訛りの標準語――英語――で泣き言を言っている。

 マイヤーズはワタナベ船長に怪しいところは見られないか、じっくりと確認した後、脅しを込めて、強い口調でデータの送信を命じた。


「直ちに環境データを送れ! 送ってこない場合は攻撃の意思があると判断し、攻撃を加える。これは脅しではない! 反論すれば直ちに主砲による攻撃を開始する!」


 三十秒後、顔を赤くしたワタナベ船長が「了解したよ。だが、艦長! この件はヤシマとアルビオンの両政府に抗議するぞ! 緊急時に不当な脅しを行ったとしてな」と怒鳴り返してきた。

 だが、船内環境データは一分経っても送られて来ず、イライラする中、二分後にようやくデータが送られてきた。


「チーフ、ボースン。マイヤーズだ。二人とも神戸丸から送られてくる船内環境データと見取り図から、船の状況を予測して見てくれ」


 彼は機関長と掌帆長にそう命じた後、「時間はあまり無い。判り次第報告を頼む」と付け加えた。

 彼はすぐにデイジー27の接近する姿をモニターに目を移し、本当に民間船だったら、譴責ものだなと思ったが、なぜかそうならないと確信していた。


 三分後、トンプソン機関長から「艦長、神戸丸のリアクターかまは生きています。機関室の状況から十%以下の最小出力でスタンバイ状態です」と報告が上がってきた。

 更にダットン掌帆長からも「このクラスの商船にしては大きな兵装ブロックがあります。そのブロックの空調でかなりの熱量とオゾンが処理されていると思われます。推測ですが、粒子加速砲か大型レールキャノンのコイルに電流が流れているかもしれません」との報告が上がってきた。


 マイヤーズはすぐに「デイジーに緊急通信! 通商破壊艦の可能性が高い。直ちに離脱することを提案する」と通信員に叫んでいた。

 三十秒後、デイジー27のホーカー艦長から通信が入り、「エルマー、どう……」と言った瞬間、唐突に通信が切れた。

 モニターにはデイジー27号の間近にあった小惑星が爆発している映像が映っていた。

 CICの中は誰一人声を上げるものはおらず、静かな室内に防御スクリーンに破片が当たり真っ白に発光しているデイジー27の姿を見つめていた。


 彼はいち早く我に返り、「総員、第一級戦闘配置!」と命じ、デイジーと神戸丸の状況を見つめていた。


(やられた! まさか小惑星に爆発物を隠しているとは……。だが、あの程度の破片ならデイジーも対応できるはずだ。後は神戸丸の動きだが……)


 彼がモニターを見ていると悠然と動き始めた神戸丸の姿があった。

 神戸丸は小惑星の破片の影響が無い方向からデイジー27に接近していく。

 そして、防御スクリーンが過負荷状態に陥っているデイジー27に向けて、攻撃を開始した。

 その主力兵器の威力は自分たちの乗るスループ艦のものとは比較にならないほど強力で、五等級艦(軽巡航艦)クラスの主砲に見えた。

 低速で航行していたデイジー27は回避するすべも無く、二度の砲撃を受け、真っ白な閃光と共に爆散した。


 閃光の後、デイジー27は船体の痕跡すら残さずに消え、脱出用ポッドは一つも射出されなかった。


(ブルーベル34と神戸丸との距離は十光秒程度に縮まったが、こちらが加速すれば攻撃を受ける可能性はない。情報分析と今後の方針を決める時間を稼ぐ必要がある)


 彼はモニターに映る映像を見ながら、「進路をスパルタン行きJPジャンプポイントに向けて変更せよ。速度は〇・二光速に加速。総員、第二種戦闘配置に変更の上、待機せよ。士官はCICに残るクイン中尉以外、全員艦長室に集合せよ」と全員に命令した。


 彼は今回の失敗で落ち込んでいたが、艦内の士気を保つため、平然とした表情を崩さないように努力しながら、CICを後にした。



 十分後、艦長室にはCICに残るクイン中尉と軍医を除く六人の士官とクリフォードら二人の士官候補生が集合した。

 士官たちは狭い艦長室の中で椅子に腰掛け、候補生二人は士官たちの後ろに立っていた。

 マイヤーズ艦長から、「デイジー27がやられた。これからの方針について話をしたい」と、いつもよりやや力の無い声で話し始めた。


「まず、敵の戦力だが、判っている範囲で言えば、我が軍の五等級艦(軽巡航艦)並の攻撃力を持つ神戸丸が一隻いる。恐らく支援部隊もどこかに隠れているだろう」と、ここで一旦話を区切り、「こちらは等級外のスループ艦一隻。まともにやり合えば勝機はほとんど無い」と続けた。

 全員を見回しながら、「そこで我々の方針だが、道は二つあると思う。一つはあくまで敵を撃滅すること、もう一つはこの情報をキャメロットの司令部に持ち帰ることだ」と話し、再び全員を見回して、「時間はあまり無いが、みんなの意見を聞きたい」と言って、椅子に深々ともたれ掛かった。


 まず、副長のグレシャム大尉が「敵を撃滅すると言ってもブルーベルでは無理でしょう。ここは早期にキャメロットに通報すべきです」と慎重論を展開する。

 それに対し、戦術士TACOのオルガ・ロートン大尉が「やりようによっては倒せないわけじゃないわよ。神戸丸は攻撃力と防御力はあっても加速性能は商船並。うまく立ち回れば勝機は見えるはずよ」と”鉄砲屋”と呼ばれる彼女らしい積極論をぶち上げた。

 グレシャム大尉が「うまく立ち回ると言って、何か策があるわけ? あの主砲なら一発で戦闘不能、二発でデイジーの二の舞よ」とロートン大尉に具体策があるのかと問い詰める。

 ロートン大尉が口を開こうとした時、デンゼル大尉が「私も副長ナンバーワンの意見に賛成だな。小惑星帯の中から出てこなければ、機動力を生かすも何も無い」とグレシャム大尉の意見に賛同を示した。

 その後、トンプソン機関長と最年少のニコール中尉の意見が出されるが、二人の意見はどちらも艦長の命令に従うと言うものだった。

 マイヤーズ艦長は、立っている士官候補生に向け、「君達に何か意見はあるか?」と二人に話を振ってきた。

 先任のラングフォード候補生は、「自分は艦長の命令に従います。ですが、デイジーの仇は取りたいと思っています」と答え、具体的な案は提示しなかった。

 クリフォードは全員の視線が自分に向けられていることに緊張したが、直立不動の姿勢で「じ、自分は闘うべきだと思います」と答えた。

 マイヤーズ艦長は、「コリングウッド候補生、それは決意表明か。それとも根拠があることなのか?」と先を促す。

 クリフォードは緊張しながら「神戸丸を放置することは危険です。理由は二つあります」そこまで話すとゆっくりと根拠を述べていく。


「一つは直接的な危険です。我々が撤退すれば、神戸丸に一ヶ月近くの行動の自由を与えます。この間に更に商船の被害が大きくなることが第一の理由です」


 ここで一度、深呼吸をするように息を吸い込み、


「二つ目の理由は、敵は既に長期間活動している可能性が高いと思います。これは敵に補給拠点ベースを保有している可能性を示唆しています。もし、ベースが存在するなら、これを放置することで敵は既成事実化し、このトリビューン星系の実効支配に繋げる可能性があります」


 マイヤーズ艦長は、「君はあの神戸丸が海賊パイレーツではなく、私掠船プラベータか通商破壊艦だと思っているわけだな」と呟いていた。


はい、艦長イェッサー。海賊か私掠船であるなら、我々がここに来たと判った瞬間に隠れていると思います。アルビオン軍に喧嘩を売っても儲けになりませんから」


 マイヤーズは「なるほどな」と呟き、クリフォードに先を言うように目で促す。


「ですから、この星系に触手を伸ばしているゾンファの可能性が一番高いと思っています。スヴァローグがここで活動するには理由が希薄すぎますし、第一、補給が困難です。ゾンファならジュンツェン星系からの補給路はそれほど長くはありませんから、可能性としてはゾンファが一番だと思っています」


 クリフォードは話し初めより、緊張が解れたようで口調が滑らかになっていった。


 グレシャム副長が「言いたいことは判ったわ。でも、どうやってあのデカブツとやりあうわけ? こちらの武器は多分効かないわよ」といつもより砕けた口調、士官同士のような口調で話しかけてきた。


 それに対しクリフォードは、「我々が撤退すれば一旦ベースに戻ると思います。ベースに入ったところを内部から破壊する方法が一番いいのではないかと……」とここまで言ったところで、ロートン大尉が、「坊やにしては大胆なことを言うわね。基地への潜入作戦なんて何年もやったことが無いし、宙兵隊もいないから成功率は低いわよ」と口を出してきた。


 クリフォードはその問いを予想していたのか、全く慌てず、「はい、大尉イエス、マム。ですが、基地への潜入作戦が失敗してもブルーベルは残ります。それからキャメロットに向かっても祖国の安全の面では何のリスクもありません」と答え、「リスクは潜入部隊の命になりますが……」と自分が大胆な発言をしていると声が小さくなっていった。


 デンゼル大尉が、「こちらが撤退したと思わせるとしても、すぐにばれるのではないか?」と、疑問点を口にする。

 クリフォードは、「通商破壊艦のセンサーがどの程度かは判りませんが、幸いスパルタン星系へのジャンプポイントは第二惑星の陰に入れることができたと思います。そこでステルス機能を最大限に効かせてから、小惑星帯に入れば、早期警戒艦並のセンサー類を装備していない限り見つけられないのではないでしょうか」と淀みなく答えていく。

 マイヤーズ艦長は他に意見が無いか確認した後、全員に礼をいい、「十分後に全艦放送で決定を通知する。解散」と言って話し合いを打ち切った。



 艦長室を出たクリフォードは、士官連中を相手に演説をぶち上げてしまったと、耳まで真っ赤になっていた。


(ああ、調子に乗りすぎたぁ。考えが間違っているとは思わないけど、未熟者が言うべき内容を超えていたな……)


 彼はラングフォードの如才ない対応こそが、自分に必要なことだと真剣に考えていた。


(彼のようにほとんど任官しているような候補生でも、ああいう態度を取るのに、どうして僕にはできないんだろう……)


 艦長室から緊急対策所ERCのあるDデッキに向かう途中、ラングフォード候補生が声を掛けてきた。


「よう、ミスター・コリングウッド参謀長殿。さっきのは凄い演説だったな」と言った後、慇懃無礼な口調で「さすがにお偉い貴族様で、親父殿が偉大だと何でもご存知だ。出世しても私のことは忘れないで下さいよ。上官殿サー」と続け、自分の持ち場であるCICに向かうため、Bデッキに上がっていった。


 クリフォードは、彼のとの関係がこのまま続くと思うと気が重くなるが、デイジー27が沈められた事実を思い出し、軍人でいる限りは死と隣り合わせ、細かいことは気にしないようにしようと、ERCに向かって走っていった。


 ERCに着いて五分ほど経った後、艦内放送のスピーカーから艦長の声が聞こえてきた。


「総員に告ぐ。艦長のマイヤーズだ。そのまま聞いて欲しい」


 少し間があってから、「我々は先ほど僚艦のデイジー27号を失った。そして、敵の正体、規模は判らず、我々に手を貸してくれる僚艦味方もいない」と続ける。


「だが、我々はアルビオンの軍人だ。この星系、ひいては祖国を守るため、敵の企図するところを挫かなくてはならない!」と声を強めて言った後、再び声のトーンを戻す。


「私はこの星系に残り、奴らと雌雄を決することに決めた。確かに強敵かもしれない。だが、我々にはアルビオン軍のすばらしい伝統がある。敵を挫き、祖国を、家族を守るため、力をあわせて欲しい。諸君らの健闘に期待する。以上!」


 艦長の演説が終わると、各所で歓声が上がっていた。

 ここERCでも副長を始め、掌帆長やベテランの兵曹たちまで拳を振り上げている。


(凄い。みんな死ぬかもしれないのに、こんなに興奮して。艦長はやっぱり別格なんだな)


 そう考えている自分も皆と混じり、同じように歓声をあげ、拳を振り上げていたが、それがおかしいとは全く思わなかった。



 そして、興奮が冷めてきた頃、「戦闘配備を解き、通常シフトに戻す。グレシャム大尉、デンゼル大尉、ロートン大尉は手が空き次第、艦長室に来て欲しい。以上」と艦長からの放送が入った。


 グレシャム大尉は「候補生。掌帆長と後始末を頼むよ」と言って艦長室に上がろうとしたが、突然振り返り、「作戦案を提出するよう言われるかもしれないから考えておくのよ」と言って、再び走り出した。



 アナベラ・グレシャム大尉は艦長室に向かいながら、クリフォードのことを考えていた。


(しかし、ビックリだったね。あの坊やがあそこまで考えているなんて。航法計算で四苦八苦していた姿からは想像できないわ)


 そして、指導官のデンゼル大尉が言っていたことを思い出していた。


(そう言えば、ブランドンが「彼の洞察力は凄いよ。このまま行けば偉大な指揮官になるんじゃないかな」って言っていたわね。さっきの彼の考察も言われてしまえば当たり前のことだと思う。そう、ヒントさえ貰えれば私でも考えられるわ……でも、そこが違う。指揮官は孤独。一人で考えて、答えを出さなければいけない。今回の突然の方針転換も、もしかしたら……考えすぎかしら?)


 彼女は艦長室の前で呼吸を整えてから、入室の申請を行った。

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