食喰総司郎の手記 1
私の名は
予想外の事象が起こった。
現状の整理も兼ねて、これから手記をつけていこうと思う。
私はどうやら異世界へと転移してしまったらしい。
この世界には、亜人間とも言うべき人種が存在し、魔法なんてものがある。
ステータスにレベルなんてものも。
ありえない、と一蹴してしまいたくなるが、事実を事実として認識することも科学者として大切な在り方である。
もっとも、この事実を完全に受け入れるのには数日を要したが。
私は洞窟の壁に彫られた文字――初めて見たときは当然流し読みして笑い飛ばした――に従い、アルバシア王国のシドゥーク公爵領へと向かうことにした。
街へ降りて数日は身に着けていた小物を身振り手振りで交換してなんとか過ごしたが、限界がある。
何より問題なのは言語だった。
私ははっきり言って天才だ。
だが、未知の言語を数日で解読し身に着けることなどできない。
しっかりと腰を落ち着けていられる生活基盤さえ手に入れられれば、五カ国語以上を操る私にとって異世界の言語だろうとマスターするのにそう長い時間はかかるまい。
幸いにもアルバシアへと向かう馬車に同乗することに成功し、私はシドゥーク領へと向かうのだった。
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