第10話 雲雀



 

 北山先生から先輩の家に宅配されたというメールが届いたので、私はゲームからログアウトする。その前に先輩に連絡を入れておかないといけない。受け取ってもらわないといけないし、ログアウトしたら真っ暗な状態だからとっても怖いです。

 ブレイコンピュータから登録してある先輩のホームコードに連絡すると、すぐに出てくれました。


『雲雀か。どうした?』

「先輩、身体が家に届いたみたいなので、ログアウトしてもらっていいですか?」

『ああ、わかった。ラピスとルラに伝えてからログアウトするよ』

「お願いします。それと、その……そういうことになると思うので、お願いします」

『わかってる。楽しみに待っているよ』

「は、はい……」


 顔が赤くなるのが自分でもわかる。これから、私は先輩に抱かれることになるとわかっているから。嫌か嫌じゃないかと言われれば嫌だ。先輩は優しくしてくれるけれど、好きな人じゃない。でも、他に選択肢なんてないし、好きでもない人に抱かれるのなら先輩の方がいい。先輩は私を妻として愛してくれると言ってくれたし、ちゃんと好きになってもらえるように頑張るとも言ってくれた。

 だから、私も好きになれるように精一杯頑張る。先輩にとって私は借金を増やすだけのお荷物になれば、捨てられるのは目に見えている。そうなると行き着く先は記憶も感情も消されて、ただ交尾して繁殖するだけの存在になる。そんなのは絶対に嫌だ。これなら目覚めさせてくれない方が良かった。

 でも、そんなことは管理者にとって関係ないことで、北山先生でもどうにもできない。そもそも北山先生も私達とほぼ変わらない立場からのスタートだったらしいし。


「それに……あの人達は怖いです……」


 北山先生の近くにいた男性達。私は彼等に犯されそうになったこともある。裸にされて器具に縛られ、映像を見させられた。その映像は私が何人もの人に悲惨な目に合わされている映像で、北山先生が説得して助けてくれなかったらそうなっていたと思う。その結果として先輩の奴隷やペットになることになったけれど、一人だけを相手にする方が精神的にも凄く楽でいいし、頑張らないと。もう一つ、先輩の奴隷やペットになる以外にも提示されたけれど、そちらの方法も不特定多数の人に身体を開くことになるので絶対に嫌だ。


「……よし、覚悟はできました。頑張っていきましょう」


 頬っぺたを両手で叩いてログアウトの処理をする。ブレイコンピュータがログアウトの処理を実行し、視界がブラックアウトする。すぐに目が冷めて目を開くけれど、周りは真っ暗で怖くてパニックになりそう。

 それに身体がほとんど動かせない。何か狭い場所に閉じ込められているみたいで、身体の節々が痛い。それに身体を触ってみると、服を着ていないみたいでとても寒い。詳しく調べるために身体を触っていくと、リボンが巻かれていて、手枷と足枷が嵌められていることがわかった。

 それがわかって、少し落ち着いた。今、私は先輩の家に届けられて受け取られる前なのだと思う。そう思うと少し安心した。


『警告:酸素濃度が低下してきています。残り2時間で酸素がつきます』


「え?」


 ブレイコンピュータの警告音声が脳内に響いて、恐怖が湧き上がってくる。真っ暗な所に閉じ込められて酸素がなくなると、それは死ぬってことで、必死に動いて暴れる。その度に酸素が減っていって駄目だとわかっているのにどうにもならない。

 苦しくなってきて助けを必死に求める。ゲームにログインしようにもできず、メールもなにもできない。ブレイコンピュータその物に使用制限がかかっていて、外部との、ネットワークへの接続が切られている。


「助けて、助けて、助けてっ! 死にたくない死にたくないっ!」


 どんなに叩いても箱は開かずに泣きながら懇願するしかない。それでも、開かない。もしかしたら、配送場所が違っていて、このまま死んじゃうじゃないかと思ってしまう。

 先輩に捨てられた? 騙された? あの人達の仕業? わからない。わからない。嫌だ、助けて、誰か助けてっ!







 1時間以上経っても開かない扉に絶望し、泣き疲れてこのまま死んじゃうのかと、諦めた時に光が入ってきた。顔をあげると、最後の力で必死に手を伸ばす。すると、手を掴まれて引き上げられて抱きしめられる。


「大丈夫か?」

「……ぁ……せん、せんぱいっ、先輩……」

「遅くなって悪かった」


 枯れたはずの涙がでてきて、力強く抱きしめられて温かさが伝わってくる。それに嬉しさも湧き上がってきて、先輩の胸の中で涙を流していく。先輩は私を抱きしめながらゆっくりと頭と背中を撫でてくれる。


「……遅いです……捨てられたんじゃないかって……すごく不安で……酷いです……」


 思わず先輩を軽く叩いていく。先輩は苦笑いしながら受け入れてくれている。


「わるかった。これでも急いで来たんだ」

「え? そんなはずは……」

「これ、みてみろ。理由がわかる」

「これは……」


 先輩から見せられたのは私の所有権と債権の譲渡書。それらに加えて私が入れられていた箱の説明書もあった。それによると外部との接続を切って、中の時間の流れを変えて私に死の恐怖を当たえて助けてくれた主人に服従するように仕掛けると書いてあった。また、死の危険を感じることによって生殖能力の上昇も確認できるとのこと。

 後、酸素にかんしてもブラフで、薄くなっても死ぬほどのことはないみたい。よくよく考えたら、あの人達の目的は私達に子供を産ませて人類の未来を繋げること。簡単に私を殺すはずがない。


「……最悪です……私、こんなことで好きになるほどちょろくないです……」

「まあ、どちらかというと生殖能力をあげる方がメインだろうな。ご丁寧に薬まで用意されているし」


 そういって、先輩は私をお姫様抱っこで持ち上げて運んでいきます。だんだんと気分が落ち着いてきていて、大事な部分がさらされていることに気付いて急いで隠します。


「あ、あの、どこに……」

「まずは風呂だな。冷えた身体を温めないと……」

「そ、その前に寝室がいいです……」

「意味がわかっていっているんだよな?」

「は、はい……この手枷とか、してもらわないと外れないんです。それに一定時間が経つとお仕置き用の電撃が流れてくるので……」

「わかった。なら、まずは薬からだな」

「はい。それと、どんなに抵抗しても止めないでください」


 避妊薬ならぬ懐妊するための薬を飲み、先輩は精力を増強する薬を飲む。それから、二人でベッドに入って先輩に身も心も任せる――












 最初は優しかった先輩は途中から獣のようになって、物凄く痛かったし、気持ち悪かった。身体の隅々まで触られて舐められ、貪られ、獣のように犯されて気を失った。

 気が付いたら湯船の中にいて、先輩に後ろから抱きしめられていて恐怖で身体が震える。終わったのか、終わってないのか、恐る恐る先輩の方をみると、軽くキスをされそうになって必死に手で距離を取る。


「あっ……ごめん、なさい……」


 逆らったら駄目です。拒否したら駄目です。私は先輩の物。先輩の好きなようにされるだけの存在……それを理解させられました。


「悪かったな。身体は痛くないか?」

「い、いたいです……すごく、すごく痛いです……」

「すぐに治療させたかったんだが、できなかったんだ。しばらくこの状態で過ごさせろって言われてな。本当は優しくするつもりだったんだが……」

「……あの、薬のせい、ですよね……」

「薬にナノマシンを制御する奴がいれられていたみたいで、ブレイコンピュータから思考を操作されたみたいだ。ログも残ってる」


 先輩から飛んできたデータを恐る恐るみると、欲望の増大や暴力性の増加などなど思考制御のプログラムが入れられていました。


「逃げ道なんて、ないんですね……」

「思えば当然の事だよな。ブレイコンピュータなんて物を作れるのなら、それを制御するプログラムを入れているはずだ」

「こ、これからどうなるか、怖いです……」

「従っている限りは大丈夫だとは思うが、あまり支給される薬に頼らない方がいいな。頼るにしても、中身をしっかりと調べてからだ」

「は、はい……それで、その……先輩は、私の身体、満足してもらえましたか……?」


 恐怖に震える身体を振り向かせて、先輩と正面になるように動かすと男性の身体が見えてきてとても恥ずかしくて俯いてしまいます。


「ああ、もちろだん。とても気持ち良かった。次は雲雀も気持ち良くしてやるからな」

「そ、それは……」

「嫌だろうが、こればかりは諦めてくれ。できれば恥ずかしがらずに雲雀が気持ち良いところとかを教えてくれるとありがたい」

「わっ、わかりまし……っ!?」

「どうした?」


 ブレイコンピュータのメールフォルダに新着メールが届いた。それを読むと、嫌な事が書かれていた。


「め、メールが……」

「俺の方にも届いているな」

「そ、それって私の……ちょ、調教指示書ですよね……」


 読んでみるとかなり酷い内容が書かれている。優しいコースでもペットとして調教する奴でも、かなり酷い内容になっています。


「それもあるな」

「そ、それも……? 私の方にはそれだけです……」

「ああ、これは主人の方だけか」

「何があるんですか?」

「婚姻する場合の条件とかだな」

「け、結婚してください!」

「落ち着け。最初からそのつもりだったろ」

「は、はい……良かった……」

「ただ、それでも調教して逆らえないようにはしないといけない。雲雀は自分で作った借金じゃないが、扱いは借金奴隷みたいな感じだ。勝手に借金とかできないようにするのに調教がいるようだ。結婚システムにこんな希少な状況を想定するように作ってないみたいだから仕方がないのだろう」


 そ、そうですよね。借金して奴隷になった人を妻にするなんて滅多にあるはずがありません。普通は奴隷のまま使い潰されるだけですし、先輩が優しくて助かりました。


「それに調教っていってもやることは変わらないしな。いろんなプレイをして楽しむだけだ。今度はちゃんと痛みじゃなくて優しくして気持ち良くするから」

「は、はい……先輩にお任せします。その、可愛がってください……」


 先輩の胸に顔を預けて撫でられるのを受け入れていく――





 しばらくして、しっかりと温まったので二人でお風呂から出て身体を拭いていく。鏡に自分の身体が映り込んできました。恐る恐る見てみると、身体中にキスマークや歯型がついています。嫌でもされたことを思いだして顔が赤くなってきました。


「手枷と足枷は外したが、首輪だけは借金の返済が終わるまで無理らしい。ただ、変えることはできるらしくて何個か首輪が入っていた」


 身体を拭いていると、後ろから先輩が話しかけてきました。すでに先輩は服を着ていて、私だけが裸です。そもそも私の服が用意されていないみたいなので、タオルで身体を隠すしかないです。


「座って鏡を見ろ」

「は、はい……」


 命令されたので、その通りに従うしかないです。先輩は私の前に色々な首輪を置いていきます。その中で可愛らしいのは赤い首輪に鈴がついた奴ですね。


「どれがいい?」

「これがいいです」

「わかった」


 先輩が首輪をつけると、ブレイコンピュータにプログラムが走って、首に装着されていた無骨な鉄製の首輪の鍵が外れました。先輩がとってくれて、残ったのは可愛らしい首輪だけです。


「これで私は先輩の飼い猫ですね」

「そうなるな」


 頭を撫でられ、続いて喉を撫でられます。私は求められるのがわかって、恥ずかしがりながらにゃーと鳴きます。恥ずかしくて顔から火がでそうです。


「可愛いぞ」

「変態です……」

「否定はしない」

「はぁ……それで、服を欲しいのですけれど……いえ、先輩が裸のままで居ろというのなら、嫌ですが我慢します……」

「それなんだが、女物の服がない」

「え?」

「るりとさんごは身体が小さいから、彼女達の服は雲雀には合わない。で、雲雀はここにリボンだけで送られてきた」

「……確かにないですね……」

「というわけで、あるのは俺の服になる」

「先輩の服ですか……」

「それでいいなら、構わないが……」

「裸でいるのは嫌なので、それでお願いします」

「わかった」


 そう言って、先輩が取りに行ってくれました。その間に髪の毛を乾かしたり、傷薬をあそこに塗ったりします。

 傷ついていた場所は綺麗に治り、痛みが治まってきました。本当に技術力が高いです。

 ただ、歯型とかは残念ながら治療できなかったです。ご主人様である先輩の許可がいるみたいでした。

 本当には私の身体は人の物になってしまったという事実が付きつけられて涙が溢れてきます。


「雲雀、これでいいか」

「はい。ワイシャツですね……やっぱりエッチです」

「見たかったからな」

「別にいですけど」


 先輩のワイシャツを着ると、裾がスカートみたいになって隠れます。でも、かなり短いのでかがんだりしたら見えてしまうと思います。


「服や下着とかを買わないとな」

「わざわざ買うのはいいです。お金、ないんですよね?」

「それはそうだが……」

「それにその、こっちでいる時は基本的に寝る時か、居ても家の中だけですし、するときは脱げばいいだけですから……下着だけ頂ければいいです」

「わかった。あっちではちゃんと服も用意するからな」

「はい。そっちはぜひお願いします。先輩以外の男性に裸を見られるのはもう嫌です……」

「わかった。安心しろ。そんなことはさせないからな」

「ありがとうございます……」


 先輩に抱きしめられ、耳元で囁かれた内容が染み込んできて安心できました。そのせいか、お腹がきゅ~と鳴ってとても恥ずかしくなります。


「じゃあ、ご飯にするか」

「はっ、はい……」


 先輩についていこうとすると、股の間に何かが挟まっているような感じがして、上手く歩けないです。治療したというのに大分変な感じです。


「ほら、行くぞ」

「あっ、待ってくださいっ!」


 またお姫様抱っこされて食堂まで連れていかれました。そこで膝の上に乗せられて、用意されていたご飯を先輩に食べさせてもらいました。大丈夫だというのに、羞恥プレイを徹底されてしまいました。

 その後は寝室に連れていかれて、色々とされましたが、今度はちゃんと優しくしてもらえました。基本的に抱き合って身体を撫でられるだけでしたしね。

 普段はルラちゃんやラピスちゃんがいるので、二人っきりにはなれないらしく、生活する上でのことやあちらでの行動など、しっかりと身体を開発されながら教えてもらいました。








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