第3話 船舶メイキング



 さて、船舶のメイキングに入る。初期制作資金として3,000,000,000クレジット……三十億クレジットが用意されていた。これは一人十億という計算だろう。ここに半額チケットが入るので実際は六十億となる。


「……桁が違う……」

「はいです」

「まあ、宇宙船だからな。むしろ、安いほうじゃないか?」

「かも?」


 さて、作れるのは戦艦、航空母艦、巡洋戦艦、巡洋艦、駆逐艦、輸送船、哨戒艦艇、工作艦のようだ。出来れば戦艦で砲撃戦に重きを置いた重砲撃艦がいい。いや、この艦種はアニメだけか。


「スロット売らない方が良かったのです」

「まあ、仕方ないさ。戦艦の値段は……」


 一隻百億もした。戦艦はどうあがいても買えない。戦闘用の巡洋戦艦は五十億だったので、こちらはなんとか買える。しかし、躊躇する値段である。巡洋艦は四十億。駆逐艦は二十億だ。それ以降はどんどん下がっていっている。


「ちょっと、戦闘艦すら買えないんだけど?」


 俺と同じように思ったのか、北島先生に質問した奴がいた。


「一人十億だ。それ以上はこちらも出せないのでね。まあ、結婚すれば半額チケットが貰えるのでそれを使えば買えるさ」

「っ!?」


 まあ、あちら側からしたらそうなるよな。こうなるとソロの連中は雇われたりして資金を稼ぐしかないのか。っと、そういえばガチャのチケットも有ったな。先にこちらを見た方がいいか。

 ガチャシステムを起動すると、機動兵器ガチャと、船舶ガチャ、スキルガチャが出来るようだ。

 機動兵器の方は機動兵器の本体から武器、燃料まで様々だ。船舶も同様だな。しかし、確率は予想通りかなり低い。0.0000001とかそんなんだ。これを攻略すにはとんでもない幸運が必要だろう。ん? 幸運? もしかしたらいけるかも知れない。


「ちょっと質問してくる」

「いってらっしゃいです」

「……ん、待ってる……」


 北島先生のところに行って順番を待つ。少しすると順番が回って来た。彼女は対面の席に座り、コーヒーを飲んでいる。


「北島先生、質問です」

「なんだい?」

「ガチャって幸運が関係ありますか?」

「そりゃ、もちろんあるね」

「じゃあ、スロットを売ってしまったんですが、買い戻す事はできますか?」

「出来るよ。買い戻したスキルは別の人にもつけられるからね」

「では、決めたスキルをすぐに適応する事は?」

「出来るね」

「今からログインしてガチャをする事は?」

「可能だよ」

「ありがとうございます。ログインする場所は何処にありますか?」

「基本的に自宅からがいいだろう。MAPを送る」

「ここでは出来ませんか?」

「簡易的なら可能だな。少し待ってくれるか?」

「もちろんです」


 少し待つと、北島先生が戻って来た。


「準備が出来たが、誰のを適応させるんだ?」

「ちょっと待ってください。連れてきます」

「ああ」


 それから、少し席をはずしてるりちゃんとさんごちゃんを呼び寄せる。


「コウさん、どうしたんですか?」

「ああ、それなんだが少しやりたい事が有ってね」

「?」

「ちょっと待ってくれ」


 直にスロットを買い直す方法を教えて貰い、実行する。10万で売ったのが30万で買わないといけないのは納得出来ないが、しかたない。買い直したスロットはるりちゃんに3個、さんごちゃんに2個あげる。俺は別に問題ないしな。


「いいのですか?」

「……大丈夫……?」

「ああ、ただし取る物はこちらで決めさせて貰うよ」

「はいです」

「ん」


 取るのは幸運。これを一気に10Lvまで上げてしまう。レベルアップに1万で45万だ。


「北島先生、幸運の上ってありますか?」

「強運があるな」

「進化するには?」

「金を支払え。やり方はこうだ」


 やり方を教えて貰って早速やってみる。幸運の派生は二つあった。一つはレベル5で上位になる強運。次は10で上げる幸運の女神というスキルだ。当然、幸運の女神を習得する。それで更にレベルを上げる。1レベルUP毎に100万も消費する。だが、構わない。4500万、支払ってレベル10にすると次の進化先として強運の女神が出てきた。こちらのレベルアップは1億だった。45億消費すればレベルがマックスに……流石にこれ以上はまずい。消費した金額が45万+4500万×2で9090万。これにスロットの買い戻し代が150万で残り29億0770万となった。更に6億減らしてレベルを3にしておく。残金23億0770万。後は二人にも直感を10レベルで与えておく。残金23億0680万。


「す、凄くお金が減ったのです!」

「……大丈夫?」

「大丈夫だ。では、先生。二人の適応をお願いします」

「じゃあ、適応するからここに手を置いてくれ。少しピリッとするからな」

「はいです」

「ん」


 二人が手を置くと少し痛そうにする。それから直ぐに先生が何かを操作していく。



 20分後、適応が終わったようで先生がガチャの画面を出してくれた。


「じゃあ、二人で船舶のガチャを回してくれ」

「緊張するです」

「……ガンバル……」


 二人で一緒にボタンを押すと虹色に光り輝く画面。そして出てきたのは船舶ステルスセット(光学迷彩装置、電磁迷彩装置)。


「はずれです?」

「……?」

「いや、当たりよ。当たりだからね。買えば100億くらいするから」

「……でも、欲しいのは戦艦……」

「次です!」


 次も虹で出たのは高出力動力炉(超重力)。説明を見たら重力の力場を展開する重力障壁や重力砲が撃てるようになるらしい


「ピーキーな動力炉ね。使い勝手が難しいわ。お値段、なんと41兆円。笑えてくるわね」

「じゃあ、ラストだな。贅沢を言えば戦艦が欲しい。それも出たのを使える艦が」

「う~」

「や、やる」


 すると、最後は黒色の光に包まれて出てきたのは電子戦専用高速巡洋艦。しかし、ボロボロの映像だった。なんていうか、大破判定を受けて放置された艦だな。それに宇宙船だけあって船首が大きく分かれているSFチックなデザインの艦だ。ああ、あれだな。ゲームとかに出て来そうな奴。そんな真ん中に主砲が設置されているようだ。


「ご、ごめんなさいです」

「……ごめん、なさい……」

「大丈夫さ。修理すれば使えるんだから」

「残りのお金で修理とか色々とすれば?」

「そうですね。そうします」


 席に戻って三人で改めてどすうるか相談する。


「……ナノマシンを作って修理させる……」

「それがいいですね。それと一人でも操れるように改造しましょう」

「壊れているんだから色々とやりやすいか」

「ん、電子戦専用なら、ステルスセットつけられる……」

「居住空間も要らない場所は取り払って、動力炉は出たのを使えばいいですし、後のお金で必要なのは……」

「ナノマシン製造装置だな。これは必須だ」

「お兄ちゃんの、機動兵器も」

「そうだな……」


 調べていくと機動兵器は船舶よりも安く、5億から有る。というか、これは……思うのだが……買ってからいきなり運転するより訓練所に入った方がいいよな。それに今、思ったがドックってどうなってるんだ?


「やばい、ちょっと質問してくるか……いや、ヘルプ項目があるか」

「「?」」


 急いで読むとあちらの世界でドックを持っていないと停留所などに止めるのでお金が取られるそうだ。つまり、ドックを買った方がいい。更に俺達の初期配置は地球なのでステーションもまだ小さく、開発もされずに放置されている。つまり、ステーションの停留所は数が限られていて、そうなるとその辺に漂わせておくことしかできず、修理にも困る事になる。

 いや、これはある意味ではビジネスチャンスじゃないか。何も最初から前線に出て戦う必要も無いだろう。回りを見る感じ、殆どの連中が戦闘系だからな。


「二人に相談が有る。修理や俺の機動兵器は後回しにして先ずは向こうでの家を買おう」

「家、ですか?」

「そうだ。船舶の家ともいえるけどな」

「ドック?」

「そうだ。そこで修理屋を行いつつ、直さないか? その間、俺とるりは手伝いつつ訓練所に通ってみるよ」

「ん、資金稼ぎも出来て技術も磨ける。一石二鳥」

「さんごちゃんの負担が大きいですけど……」

「……もーまんたい……」


 二人も賛成してくれたのでドックを探す。残金23億0680万で探す訳だけど、新品じゃ無理だ。中古ならドックのブロックで販売している物が有った。


「これとかいいんじゃないか?」

「ん、確かに」

「えっと、少し待ってくださいです。えっと、広くて沢山入る方がいいですよね?」

「安ければ尚更な」

「ん、後は家賃」

「わかりました。少し待ってくださいです」

「ああ」


 それから、るりが目を瞑って何かをしていると、少しして目を開けるととんでもない事が起きていた。それは20億で廃棄ステーションを買い取るという内容だった。ネットに繋がっている訳だし、高速演算とかを使ったんだろう。


「なあ、廃棄ステーションって20億で買えるものなのか?」

「……無理……」

「あ、それがですね。動力炉も壊れているんですよ。他にも色々と壊れているんですけど、無事なのは生命維持装置とかプラントくらいで、廃棄するつもりだったらしいのです。ですが、廃棄するにもお金がかかるので売りに出したらしいんです。ただ、買い手がつかなくて廃棄寸前だったのを安くしてもらいました。諸々の手続きも代行してもらったので後はさんごちゃん次第です」

「ん、任せて直す。動力炉は直るまで当たったのを使う。データをみたら、いける……」

「なら、残り3億0680万だな。ナノマシン製造装置を買って修理素材とかで飛びそうだな」

「確実に飛ぶ」

「出来る限り、安いのを探してみます」

「頼むよ」


 とりあえず、生活は保障されているんだから、その間にステーションを直して修理屋家業を軌道に乗せよう。それが終れば機動兵器に乗れるだろう。楽しみはお預けだが、仕方ない。




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