第2話 キャラクターメイキング
驚いた事に出目が10と高い数字だった。実際に振った数字がこれなのだから驚きだ。これでスキルスロットはラピスが11枠、コーラルと俺が13枠という事になった。これはかなり多い方で恵まれた状態だ。
画面を操作してスキルスロットを押すと、スキル習得画面へと移動した。そこには多種多様なスキルが置いてある。
「さて、申請が終わってキャラクターメイキングに入っている奴も出て来ているようだ。スキルスロットの数は最低値は全員の資質の平均値だ。それにダイスを振って決める。これは振り直しできないからな。まあ、資質は多い奴だと10くらいあるからな」
「私達ってすくないんですね」
「多分、俺のせいだな。すまん」
子供達は資質が多いだろうしな。そうなると中年間近の俺が下げてしまったのだろう。
「……違う……皆のせい……」
「そうですよ、それに出目は高かったんですから、大丈夫です」
「ありがとう。そうだな、これからだ」
「はい!」
「ん」
二人の頭を撫でつつ、説明を聞いていく。二人は俺に身体を預けて撫でられるままになりながら聞いている。
「さて、お勧めスキルを教えておこう。先ずは射撃だ。これは基礎スキルなのだが、宇宙空間のメインは射撃戦といえる。近接戦闘を行うのは人型機動兵器ぐらいだろう。まあ、たまに艦内に乗り込んで戦う場合もあるが、銃を装備すればいいだけだからな。よって、戦艦に乗る連中も乗らない連中もとりあえず、護身の意味も含めて取っておくといい。襲われた時に対応出来るからな」
確かに最低限、射撃スキルは必要だろう。ロマン兵器の浮遊砲台とかにも関わってきそうだしな。
「後は操縦スキルとそれぞれの知識系のスキルは必要だ。いちから勉強してもいいが、無茶苦茶大変だ。インストールする方が手っ取り早い」
インストールという言葉から推測するに、このスキルスロットはハードディスクみたいな物か。ここで記憶したデータを呼び出して再現しているのかも知れない。しかし、寝ている間にどれだけの時間が過ぎたのだろうか?
「それと特殊系のスキルは初期以外では簡単に取れるのが少ないから気を付けろよ」
特殊系スキルか。直感や空間認識、高速思考や高速活動といった物があるようだ。他にも戦闘系から生産系、操作系とかもある。
「まあ、特殊系はレベルを上げるのは大変だから、あんまり取りすぎると大変な事になるから気を付けるように。だいたい、一つ二つに抑えておくほうがいい。じゃあ、後は隣にあるラウンジでも利用して自由に作ってくれ」
そう言って北島先生が腕を壁の方へと向けると、壁がせり上がって落ち着いた感じのいいラウンジが現れた。
「飲み物と食事はセルフサービスだ。各自、自由に飲んでくれ。今回限りは無料だが、次から金が取られる。支払いは片手をボタンにかざすだけで出来る。質問はそちらのヘルプデスクに来てくれ。一人十分まで対応する」
さっさとそちらに移動していく先生。俺はるりとさんごの手を掴んでさっさとヘルプデスクの近くにある席へと向かう。
「あの、どうしたんですか?」
「………急ぐ………」
「?」
「急がないといい席が無くなるからね。人数にしては席が少ない気もするし」
「なるほどです」
ヘルプデスクの近くには担当達が使いやすいようにセルフサービスの飲み物や食べ物がいかれているので、二重の意味で楽になる。
素早く動いた事で広めのテーブルを一つ、占拠出来た。直ぐに二人を座らせて飲み物を取りに行く事にする。
「飲み物はどんなのがいい?」
「………ぐれーぷじゅーす………」
「リンゴジュースでお願いするです。無ければみかんで」
「わかった」
リンゴジュースはちゃんとあった。炭酸系は無かったが、コーヒーなどもある。俺はコーヒーにして、二人にリンゴジュースとグレープジュースを取る。ついでに摘まめる食べ物を持って行こうと思って、食事の配布所に行くと銀色の袋に入った四角いケースが多数奥の方に置かれていた。手前には注文をする為であろうパネルが置かれている。とりあえず、栄養ドリンクなどがあるがフライドポテトを注文してみる。すると暖められた銀色の箱が出て来た。それを持ってテーブルに戻る。
既に動き出した他の連中でテーブル席はかなり埋まっていて、取り合いすら起きている。ソロの奴が一人で四人用のテーブルを占領したら、それは怒られる。もっとも、二人用のが少ないのも原因だろうが。
「お待たせ。グレープジュースとリンゴジュース。それにフライドポテト」
「ありがとうです」
「………ん、感謝………」
席について、フライドポテトを開けてみる。すると、中には四角い固形物が入っていた。ふやかす訳でもなく、どうやらそのまま食べるようだ。
「これはなんです?」
「多分、フライドポテトじゃないかなあ………」
「………細い奴じゃ、ない………?」
「とりあえず、食べてみるか」
一つ掴んで食べてみるが、かなり不味いフライドポテトっぽい味がする。確かにフライドポテトなのだろうが、記憶と感じる祖語が激しい。
「これは………不味いな」
「えっと………」
「………ん、凄く不味い………」
二人も食べたようで、直に顔を顰めている。きっと、俺も一緒だ。
「もしかして、食事は期待できないかも知れないな」
「……」
俺の言葉に嫌な表情をする珊瑚。確かにこんなのを食べて生活するのは嫌だな。
「じゃあ、私が作るです」
「………お願い………」
「いいのか?」
「はいです。料理は妻の役目なのです」
「じゃあ、悪いけどよろしく。手伝いはするから、色々と必要なら言ってくれ」
「もちろんです」
家事をしない男性は嫌われるからな。それに小さな二人に負担を出来る限りはかけたくない。
「しかし、コーヒーも不味いな」
「ジュースもです」
「………飲めなくは………無い………」
だが、好んで飲みたくは無い。しかし、こんなのしかないなら作るしかない。いや、ある意味ではちゃんとした食事を作れれば儲けになるかも知れない。
「まあ、今はスキルだな」
「ん」
「私は料理系を取りますね」
「それは余ったら………」
「………先………絶対、先………」
「わかった。先でいい」
さんごの強い要望に従って先に取ってもらう。俺はとりあえず射撃と体術、剣術のスキルをレベル1で習得する。スキルにはレベル1からレベル10まであるようで、5以上から上位スキルを取れる仕様のようだ。できれば高速機動による高機動戦闘を行いたいので、それを補助するスキルを選ぶとしよう。
「料理スキルはありましたけれど、これってどういう事です?」
「ん? どんなのがあったんだ?」
「これです」
料理スキル:料理全般に補正を行う。ナノマシンによる料理にも有効。
料理知識:自然料理からナノマシン料理の知識が得られる。なお、自然食品は高額であり、ナノマシンを使った料理が一般的である。
「そういう事か」
「?」
「つまり、自然食品が超高額になっているから、代用品としてナノマシンを使って遺伝子改造でもされた物を培養して提供されているんだろう」
「それって………」
「自然な料理よりもナノマシン関連のスキルを取った方がいいな」
宝の持ち腐れになる可能性が高い。それにナノマシン関連なら色々と出来そうだ。
「………ん、これがいい………」
るりが進めてきたのはナノマシン操作というスキルで、ナノマシンを使って味を自由に調整したりできるスキルだ。それにこれなら調理以外にも生かせる。
「そうですね、これにするです」
「なら、良さそうなのも取っていくか。先ずはるりのラピスからでいいよな?」
「………大丈夫………」
「お願いするです」
先ずは戦艦を操縦する為に必要な艦船知識のスキルを習得して貰う。これは宇宙戦を扱うのに必要な知識だ。これが無ければ操縦すら出来ない。次に船舶操作のスキル。これは実際に動かす為に必要な物だ。そして、攻撃に必要な射撃スキル。この三つは最低でも習得してもらった。残りのスキルスロットが八個だ。
次にナノマシン関連だ。まずナノマシン知識、ナノマシン操作、ナノマシン適正を取ってもらう。ナノマシンに関する知識を習得し、実際にナノマシンを操作できるようにしたのだ。そして、ナノマシンを扱うには適正が必要みたいなのでナノマシン適正も習得して貰った。これで残り5五個。余った五個で特殊系のスキルを選択して貰う。
「何が要る「かな?」
「そもそも戦艦って一人で操れるのです?」
「無理だな」
「………人、雇う………?」
「調べてみるか」
調べてみると、人員を雇ったり、AIに操作させたりするようだ。人員は基本的にアンドロイドでいけるらしい。だが、どちらにしろ、高額な賃金が必要だ。最初はほぼ赤字に近い黒字になるかも知れない。
「………これ、ナノマシンで………代用できない………?」
「AIで操作できるなら出来そうだが、るり………ラピスの負担が半端なくないか?」
「………無理………?」
「いえ、大丈夫です。特殊系のスキルで取っていけば平気なのです」
特殊系にあるマルチタスクで扱える量を増やし、精神強化で複数の処理をしても問題無いようにする。これだけでは足りないだろうが、これに演算処理強化と高速演算で操作性も強化する。それに思考加速で思考を高速にして扱える量を増やす。
「これの構成なら、大丈夫そうだが………」
「問題があるのです?」
「………大丈夫そう………だけ、ど………?」
「いや、ナノマシンの数を考えるとな。数も要るだろうし代金だって馬鹿にならないだろう」
スクリーンを展開して検索したら、とんでもない値段がした。確かに性能次第で大分変るようだが。
「………なら、製造スキル、取る………」
「さんごちゃん、お願いします」
「任せる。それで、料理の方は自力習得だな」
「わかったです。味はナノマシンを操作して作ればいいだけですし」
自力習得も可能みたいだからな。とりあえずはこれでいいだろう。次はさんごのコーラル、ルラだ。
「次はさんごだな」
「……ん、どれがいい……?」
「そうだな……開発系だと知識とかだな」
相談した結果、ルラには工学知識、整備技術、修復技術、機械操作、ナノマシン製造、武器製造、戦艦製造、機動兵器製造、高速設計、高速開発、高速改造。これで十一個なので残り二個だ。
「残り二個はどうする?」
「必要そうなのは既に取ってるです」
「……プラント、と……動力炉……」
「危険すぎるが、トラブルがあったら直さないといけないわけだし、いいか」
動力炉製造とプラント製造を習得して十三個のスキルスロットを使い切った。しかし、色々と作れそうな構成だな。ちなみに高速スキル関連とプラントと動力炉製造が特殊スキルだ。
「……ナノマシン知識は、教えて、貰う……」
「そうですね、それでいいはずなのです」
「自力習得もできるようだし、これでいいか。じゃあ、次は俺だな」
俺は射撃、体術、剣術スキルを取るのは確定している。残りは近接戦闘で使える思考加速。高速戦で身体が耐える為に肉体強化と視力強化。それに高速戦闘をで補正を得られる高機動適正。何より必要そうな特殊スキルの直感。攻撃を避けるのに使えそうだからな。これで八スキル。残りは五個のスキルが習得できる。
「しかし、直感のレベルを上げたいな。他は何か取る物があるかな?」
「……ゲームな、ら……索、敵……鑑、定……」
「でも、それって戦艦でできるですよ?」
「だよな」
まあ、有った方がいいんだろうけど、基本的にヒットアンドアウェイによる戦法を取って、火力は戦艦に任せればいいだろう。問題はフレンドリーファイアだ。高火力の弾幕を張るのだから、その隙間を縫って動き回れるぐらいの機動性は欲しい。かなり無茶だが。
「……いいの、ある……」
「ん?」
「……スロット、捨ててポイント、貰う……」
「そんな事が出来るのか」
知らべてみると、スキルスロットを消す事で経験値、レベルアップや戦艦などの購入に必要なクレジットが10万クレジットも手に入るようだ。特殊系スキルの直感はレベルアップに現在のレベル×1万のクレジットが必要だ。つまり、45万クレジットがあれば直感を10レベルに出来るという事だ。
とりあえず五個のスロットを売り払って50万クレジットを手に入れた。45万クレジットを支払って直感を10レベルで習得した。残り5万クレジットは残しておく。
「これで基本スキルは全員、取ったな」
「はいです」
「……大丈夫……」
「よし。じゃあ、次に行こう」
次はいよいよ戦艦や機動兵器を購入する事になる。先ず、宇宙戦艦以外にも輸送船や母艦などがある。輸送船と母艦は置いておいて宇宙戦艦だ。宇宙戦艦には基本となる高火力の宇宙戦艦。それよりも小さく、戦艦よりも速度が出て火力が戦艦より低い巡洋艦。速度はかなり出るが、火力は巡洋艦よりもさらに低い駆逐艦だ。
「どれにするのです?」
「もちろん、戦艦だ。それも重砲撃タイプの戦艦だな。足は遅いが、防御力と火力が共に高い」
足に関してはオプションである程度は補えるので構わない。それよりも火力だ。それに現状でも色々とカスタム出来るようなので、そこはさんご、ルラに任せるとしよう。
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