サプリメント03 2月のイベント前編(節分)

先日、出張先で雪に足を取られ左肩の骨を折りました。

おかげで起き上がることすら激痛が走る状況。嫁さんや子供に介護してもらいなんとか仕事をする日々。

皆様も雪道はお気を付けください。


あと、飯テロ成分が低い。なぜだ!

---------------------------------------------------------------------


 二月三日


 日本の文化で言えば節分。季節を分ける日だが、一般的には豆まきや恵方巻き、そして柊鰯をはじめとした厄払いのイメージが強い。

 しかし異世界、それもナザリックでそんな風習を知るものはいない。このナザリックに転生し、地下第9層のBARでバーテンダーとして働く私以外は……。

 そんな節分の日のお通しは、甘めのカクテルを注文されないかぎり、決まって炒った豆をお出ししていた。もちろん理由を聞かれれば節分と言えるわけもなく、なんとなくと回答するしかないのだが。


「アインズ様?突然アイテムを広げて何をなさるのですか?」


 今年の2月3日。

 ナザリック最高支配者であらせられるアインズ様が来店された際、昼食とのことでイワシの煮物定食といっしょに、炒り豆とビールを一杯お出しした。

 定食に炒り豆、そしてビールを食されたアインズ様は、おもむろにアイテムボックスに手を入れ、様々なアイテムを取り出されたのだ。

 豆のようなのものに、色とりどりのおもちゃの銃。それに柊鰯のようなもの。


「ああ、ユグドラシル時代の節分イベントアイテムだよ」

「なるほど。クリスマスやハロウィンがあるのですから節分も、実装されていたのですね」


 アインズ様は炒り豆のようなものを取り、1つを私に手渡される。


「食べてみるか」


 そう言うとアインズ様は、一粒口に入れられる。

 私もならい口に入れると、独特の歯ごたえと香り、まさしく炒り豆の味がした。


「なかなか美味しいですね。アインズ様」

「これは節分の日に配られた豆まき用アイテムで、実際に投げることもできるが、このように食べることもできる。こんな形だが、異形種特効が付与されているのだぞ」


 私は豆を眺めてみるも、自分がお通し用に準備したものと差を見つけることはできなかった。


「この豆を鬼は外という風に投げるのですか」

「所詮は豆だからHPは殆ど減らないのだがな。どこかのギルドが赤鬼と青鬼キャラを準備して、プレイヤー総出で豆まきで討伐なんてユーザーイベントもあったな」

「それはなかなか楽しそうで」

「その後に実装されたのがこれだ」


 アインズ様が取り出されたのは、様々な銃に炒り豆が入ったタンクがついたもの。生前の100円均一のショップで売られていた水鉄砲、その水タンクの代わりに豆が入ったタンクが付いているような、チープなデザインだ。

 アインズ様はその銃を手に持ち、懐かしそうに構える。


「こいつは、炒り豆を打ち出す銃で名前は豆鉄砲。デザインはいろいろ有るが性能に差はない。面白いのは、ガンナースキルLv1が付与される。逆にガンナースキルを持っていても、この銃を扱うときはLv1になってしまう呪いアイテムでもあるがな」


 私も1つ受け取り構えてみると、撃てばそこそこ当たるような感覚が脳裏をよぎる。これがレベル1の恩恵なのだろうか。


「ということは、この銃でサバゲー大会のような感じになったのですか?」


 もし全員がガンナーLv1でなら、他スキルやステータスのハンディはあるだろうが、そこそこ楽しく遊ぶことができるだろう。もっとも骸骨やブレインイーター、へたすると肉棒や触手が100均で売っている水鉄砲で全力サバゲー。すごくシュールな絵面が浮かび上がる。


「ああ、この銃が実装されたころにはアインズウールゴウンも結成されていて、6層の森を使ったサバゲー大会もあったな。遠距離無双だったペロロンチーノさんを、みんなで撃ち殺したり」

「撃ち殺しですか」

「まあ、フレンドリーファイアの規制が緩和された限定PVPのようなものでだがな。無駄に熱くなったものだよ」


 銃を構えた異形の軍隊が、森に展開しゲリラ戦。

 無線通信やデータリンクはメッセージや魔法で代用するとして、結構戦術練習にはもってこいでは?まあ、話に聞く外界との実力差では、力押しでも結構いけてしまうようなきがするし、玉というか豆は補充も出来そうにないアイテムではあるが。

 そういえばまだ説明されていないアイテムがある。


「アインズ様。その柊鰯に似たアイテムは?」

「ああ、まさしく柊鰯なんだがな、対異形種の結界アイテムだ」


 そう言われて使用方法を考える。しかしろくな使用方法が浮かばない。


「もしかして、ダンジョンとか狩場もそいつで隔離できたり……」

「ああ可能だ。そして予想通りに使われたよ」


 つまり、狩場や美味しい採掘地点から一時的に異形種排除できるのだ。そんな利用方法が最初に思いつくぐらい単純な機能なのだろうが、それはそれで利用範囲は広そうだ。


「とはいっても2月3日の0時から24時までの時間限定だから、目くじら立てるものは居なかったな。むしろるし★ふぁーさんは、 隔離された優良狩場の隣にトレインで集めたモンスターを封印し、24時になった瞬間に狩場を専有していたプレイヤーにモンスターが襲いかかる時限爆弾を作って笑ってたが」


 状況を予想してみる。

 24時間美味しい狩場を専有しホクホクのプレイヤー達が、結界がとけた瞬間大量のモンスターに囲まれる。


「鬼ですか」

「まあ、愉快犯ではあったな」


 至高の方の所業なのですが、つい素でツッコミをいれてしまった。そんなツッコミも楽しそうに返すアインズ様。


「まあ、節分も仲間との思い出があるのだよ」

「とはいっても、サバゲー大会をやるわけにはいきませんね」

「まあ、少なくとも私に銃を向けるものは居ないのが寂しいかぎりだ」


 たとえレクリエーションでも、至高の主に銃を向けるのは不敬にあたるだろう。アインズ様はそういうと少々残念そうな雰囲気になる。


「ではどうでしょう、本日いらっしゃる守護者の方をあつめて、恵方巻きを振る舞われるのは」

「ああ、あれなら皆で一緒に楽しむことができるな」

「もっとも方角はわかりませんが、好きな方向を向いて食べるだけでも楽しむことができるでしょう」


 そんなこんなで夜は恵方巻きの食事&その後の飲み会が急遽決まっただった。


 アインズ様が招集した結果、予想通り全守護者が集合し忘年会のような雰囲気を呈していた。

 珍しい料理でしたが、アインズ様の故郷にあたるリアルの風習と説明し、恵方巻きは好きな方向を向いて齧り付けと指示を出されていた。


 男性陣とアウラ様はなんの躊躇もなく、アインズ様を向いて恵方巻きをいっきにかぶりついていた。しかしアルベド様とシャルティア様、マーレ様は恥ずかしがって違う方向を向いしまった。まあ好きな異性に大口を開けて食べるのは、なかなか勇気がいることだから理解はできるが。


 和食もOKなデミウルゴス様とアルベド様はお気に召されたようで、その後、日本酒といっしょに楽しまれていた。コキュートス様は意外にもイマイチだったようだ。アウラ様はもう最近なんでも良く食べられるので見ていてこちらも楽しくなる。マーレ様は、あえて細巻きで準備させていただいたのですが、最後までたべれなかったようで残念がってました。まあ、そのような姿も愛らしいのですが。


 さて恵方巻きから始まった飲み会も終わり、アインズ様や守護者の方々が帰られ、残ったのは作りすぎた恵方巻き十数本のみ。

 明日一日の食事はすべて恵方巻きかと考えていると、不意に「バンッ!」と大きな音を上げて店の扉が開く。

 転がり込んできた二つの影は、SWAT?のような完全武装に豆鉄砲を持ったヴァンパイアとワーウルフであった。


「おや、あ……」


 二人は、無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きでカウンターに置かれた恵方巻きの山を、皿ごと強奪すると素早く店の外に消えていった。所要時間は十秒も掛かっていない。


「まあ、皿は明日には洗って帰ってくるでしょう」


 そう考えを切り替え、翌日の仕込みをはじめるのだった。

 なにより節分のようなイベントが実装されていたのだ。きっと2月14日は忙しくなるだろう。さて誰が最初にここに来るか。だれも来なければあの方にお声がけでもしようか。

 ああ楽しみだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック!

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう!