隣の歌姫
伊藤亜貴
歌姫はここにいる
あぁ、今日は最近ヒットした恋愛映画の主題歌か————
コンビニで買ってきた弁当を食べ終え、ベッドで横になってた僕は微かに聞こえてくる歌声に耳を傾けていた。
僕の暮らしているこの月4万円の安アパートは値段の割には綺麗で立地も悪くない中々お買い得な物件であった。しかし、防音性はあまり高くなく大きな音を出すと周りに聞こえてしまうのだ。
社会人になる少し前のここに越してきた初日、引っ越しを手伝ってくれた大学時代の友人と徹夜で飲み明かしたときは酔った勢いでバカ騒ぎをして、次の日に苦情を受けた大家さんからお説教を受けてしまった。あの後、急いで近隣の住民に謝りに行ったっけ……。
そんなことを思い出していたらいつの間にか歌声はもう止んでいた。
この歌声は1か月前、丁度梅雨が明ける頃から聞こえてくるようになった。
周りの住民がどう思っているのかは知らないけど、僕は結構気に入っている。
歌声が聞こえ始めたら僕は耳を澄まして聞いている。言葉にすると完全に変質者なことは一旦置いておく。拾うことはない。
しっかりと聞こえてくるわけではないけれど、その歌声はとても透き通っていて、仕事で疲れてくる僕にはちょうどいいBGMなのだ。
そんな誰に向けたか分からない言い訳を心の中で呟き、僕の意識は落ちてゆく。
隣の歌姫 伊藤亜貴 @ito110
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