三章 ヨーデル編
一日目
暖かい日差しに自然と目が覚めた。
隣を見るとウォンとヨーデルはまだ夢の中のようだ。
目覚めの為に雨水の貯水で顔を洗い、 朝ごはんの準備を始める。
ごりごりごり石臼で魔石をすり潰しながら、私は空を仰ぎ見た。
本日快晴、涼しい風が時折そよぐ絶好の探索日和である。
「キュキュ!」
「メェ……」
しゅぴっと効果音が付きそうなほど、気合いに満ち溢れたウォンと、まだまだ眠たそうなヨーデル。案外対照的なふたりである。
ウォンが寝起きから元気なのは、ウォンが生まれた時からよくよく知っている。
うとうとしているヨーデルをフードの中に入れて、ウォンには何時だったかハルにもらった青と白のストライプの紐を腹に緩く括りつけた。
意外とお高いらしいこの紐は迷子防止用の呪文が掛けられているそうだ。
対の赤と白のストライプの紐を枝に括りつけて、その枝を立ててから倒すと青の紐を持っている相手がいる方角が分かるらしい。
その他、最終手段もあり、紐を千切れば相手のいるところまで移動できる簡易転移石にもなるのだ。(その場合もう二度と使えず、ただの紐になってしまうそうだが)
……モナの時に色々あったアレやコレやが起こった時への保険である。心臓がいくつあっても足りない。
ウォン自身が嫌がったら外すつもりだったが、当のウォンは溜め池にうつる自分の姿を見て、くるくるぴょんぴょんしている。たまにこちらの方を見て渾身のドヤ顔(可愛い)を披露してくるから大丈夫そうだ。後でハルにも伝えよう。
本格的に眠りに入り始めたヨーデルは迷子の心配はなさそうなので、取り敢えず迷子紐は保留である。
そうして準備万端の私達だが、今日の予定はといえば『ひたすら森の中を探索』である。
目標はたくさんの魔物と会うこと!
ついでに何かあれば拾うこと。
その二つである。
「よし、じゃあ探索開始だな」
「キュキュー!」
いつも朝ランニングしている道ではない方向へと歩き出す。自身も迷子にならないように木に目印を付けたり、どんぐりを落としたりして、てくてく進んでいく。
どんぐりは食べられてしまう可能性が高いだろう。でもいいのだ。
どうしても道がわからなくなった時は浮いて洞窟を探せば多分何とかなる。あの洞窟目立つしな。
ならば、なぜどんぐりを落としているか。
それはロマンだ。趣味ともいう。
ウォンがたまにどんぐりの道を楽しそうに振り返るのだ。わかる。楽しい。
のほほんと歩いたり、振り返ったりしていると、真っ黄色の毛玉のような魔物がひょこっと木陰から顔を出した。
そして二度三度辺りを見回すと、ぴゅーっとどんぐりを一つ掻っ攫っていった。……なんの魔物だ? ケセランパサラン?
ケセランパサランか?
ーーー
祝100話!
ありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます