二日目 午前
鳥類の鳴き声が聞こえて目が覚めた。
一瞬鶏かと思ったが、第一此処は地球ではない事を思い出した。
ああ、焼き鳥、鳥が食べたい。
微睡みながら、私はそう思っていた。
前に食べた焼き鳥もどきは、美味しかったのだが……こう、何かが違った。
焼肉を串に刺したような感じだ。
つまりコレジャナイ感が半端じゃなかったのだ。美味しかったけども。
次にあの肉を使って料理をするなら焼き鳥じゃなくて、焼肉にしよう。
ああ、でもタレがない。焼肉のタレがない。
味付けは塩しかないというのか。ならばせめてレモンをくれ。
……そういえば、シソーラスで買った食材、尽きたな。シソーラスじゃなくてもいいから、何処か買いに行きたい。でもハルが居ないと買いに行けないのだ。
……自分でも転移石を作れないものだろうか。
だらだら思考を垂れ流しながら、私は瞼を開けた。
真っ先に目に入るのは土で覆われた洞窟の壁。ここ数ヶ月で随分と見慣れた壁だ。
その後ウォンと
藁のベッドの上でウォンがで丸まっていた。こう見ると本当にハムスターにしか見えない。
ウォンの隣の藁で寝ている筈のモナへと視線を移したとき、漸く私は異変に気が付いた。
モナは、……あれ! モナは!?
藁の上にいた筈のモナがいない!?
モナが寝ていたはずの藁はもぬけの殻になっていた。
慌てて洞窟中を探し回ったが、何処にも見当たらない。事態の深刻さがはっきりとわかったことで、血の気が引いて、どっと冷や汗が出てきた。
頼みの魔法書で引いても、何も出てこない。
どうしよう。
今までこんなことは無かった。
探しに、探しに行かないと。
完全にパニックに陥った私はまだ寝ているウォンを抱き上げて、宛もないまま森へと飛び出した。
***
モナは先日生まれたばかりだから、そう遠くに行っていない筈だ。魔物の赤ちゃんに私の常識が当てはまるかわからないが、そう信じて私は森を走り回っていた。
「モナー! モナー!」
遠くに聞こえるようにモナの名を叫びながら獣道を走る。こういう時、ランニングしていて良かったと心底思う。
鍛える前の私では早々に倒れていただろう。
「キュー! キュキュー!」
走るうちに起こしてしまったウォンも何時もより大きな声で鳴いていた。
私は一度立ち止まり、額や頬を伝ういくつもの汗を拭いながら、上がってきた息を整える。
……見つからない。
私は既に二時間近くは探し回っていた。時計がないので、下手すればもっとかも知れない。
……無事だろうか……。
まさか、死んで……いや考えるな。足を動かせ。私が諦めてどうする。
足を叩き、唇を噛み締め、私は前を見た。
──その時。
オオオオォォン!!
聞き覚えのある遠吠えが聞こえた。
黒い艶やかな毛並みを持つ美しい獣が、樹木を蹴り、空を舞い、鮮やかに私の前に降り立った。
「……ルー!」
私がそう名を呼ぶと、ルーは低く鳴いた。
少し離れた場所に他のブラットウルフが控えているのが見える。上手くやっているようだ。
「ルー……モナが、白い、小さなパラレプスの子を探してるんだ。何か知らないか……?」
何でもいい。何でもいいから知りたい。
ルーは目線を私に寄越して、それから自身の背を見た。
背に乗れ、の合図だ。
……ルーはモナについて何か知っているのかもしれない。
例え、知らなくてもルーの探索能力があれば見つかる可能性は私より俄然高い筈だ。
やっと見えてきた希望を抱き、私はウォンと共にルーの背に乗った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます