第2話 ここはどこ? 私は……どうなったの?

 何処からか歌が聞こえる。


 優しい音色……


 柔らかい声……


 聞きなれない……言葉……?



 俺はそっと目を開いた。

 まるで眠っていたかのように瞼が重たい。

 ゆっくりと視界が開かれると、そこから容赦なく光が目の中に入り込んできた。


 ウギャァーーー! 目が痛い!

 そして視界が真っ白!

 真っ白なのになぜか揺れている。


 これは……地震か!?


 そう思い、体をビクっとさせるが、動く事ができない!

 

 しまった!

 既に俺の体は瓦礫の下か!?

 いかん、このままでは瓦礫の重みで押し潰されてしまう!

 ジタバタと手足を動かそうとするが、全くと言っていいほど動かないではないか!


 俺は助けを呼ぼうと声を上げた!

 ところが……


「うぅー、ああぅーあーー……」


 なんとまぁ、か細い声だ事……どうやら胸か喉辺りも何かに押し潰されているようだ……


 早くも絶望感しか湧いてこない……


 何か俺の人生は絶望感にひたる瞬間しかない気がするんだけど……


 あーぁ……

 人生ってやり直せるのかな?

 やり直せたら凄く楽しいんじゃないだろうか……


 あの時こうしておけば……あぁしておけば……と思う事は多々ある。


 あの頃に戻れればなぁ……と何度思った事か。

 俺としては小学校に入学する前か……


 いや、幼稚園の頃も、確か親は張り切って進学目的の幼稚園に入れたからなぁ……

 

 俺としては、幼稚園に入る前……

 となれば、幼児も幼児。


 赤ん坊からか……俺のリスタートは。

 そうだなぁ、赤ん坊からやり直せれば最高かもなー。

 親の敷かれたレールを踏み外す為に!

 俺は自由だと、高らかに叫ぶ為に!


 俺が俺である為に……って、うわぁ⁉︎


 いきなり視界ががくんと下がった。


 そして、俺の視界に入り込んで来たのは……


 顔……。

 でかい顔。

 とにかくでかい!!


 て、巨人⁉︎

 しかも女⁉︎



 うわーーー‼︎


 何だ⁉︎ これって、今流行りの○○の巨人って奴か⁉︎


 しかも女って……これは○型の巨人って奴かーー⁉︎


 うあー! やめろ、俺に手を出すなーー!


 そうか、お前! 俺を食べる気だな!

 あの壁の外にいる不気味な奴らの如く……

 

 事故で重傷を負った俺を、今まさに食べようとするんだな!


 その為に俺の上に乗っているんだな!

 あれは地震じゃなかったんだ、こいつが俺の上に乗って来たんだ!


 よっく分かった!


 こうなったら、俺も男だ!

 せめて、最後は男らしく散ってやるぜ!


 お? どうやら左手は動かせるようだ。

 だったら力の限り、お前の顔にパンチを叩き込んでやるぜ!

 あらんの限りの力を込めて手を振り上げると……


 俺の目の前には、弾けんばかりにぷっくりと膨れ、シルクのようにきめ細やかな肌が現れた。


 なんじゃ、こりゃ? 


 頭上に突き出せばプルンと震える腕と手。

 これは一体どういう事?

 これってさぁ、手だよね?

 

 だけど、俺は高校二年生なんだけど……


 この手はどう見ても、子供……

 それも、かなり小さい……


 どうなってんの?

 

 

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