第4話最初の願い

ハアハアハアッ・・・

おかあさんが・・・おかあさんが・・・

はやく・・・もっとはやく・・・

険しい山を登る一人の少女・・・

目指すは、山頂にあると言う祈りの祠であった・・・


少女の名はアニィ。

赤い短髪の髪、褐色の肌、そして獣と人の特徴を合わせ持つ姿。

彼女は、北の山岳地帯に住む山猫族の少女であった。

早くに父を亡くし、母親と2人家族。

それでも母親と2人、幸せに暮らしていた。


山猫族は狩猟と放牧で生計を立てる部族であった。

アニィの母は部族でも上位に入る狩りの名手であり、弓の達人であった。

ある日、狩りから帰宅した母は謎の高熱で倒れた。

部族の薬師もお手上げの奇病・・・

薬師の話ではもって後数日の命・・・


少女は部族に伝わる言い伝えを思い出し、何でも願いが叶うと言われている祈りの祠へと向かうの出あった。

険しい山を登る少女。

急斜面で何度も何度も足を滑らせ、その度に崖を這い上がり頂上を目指す・・・


目的の祈りの祠を見つけ、膝を付き祈りを捧げるアニィ。

「お願いします・・・助けて!」

少女の祈りに応える様に光り輝く祈りの祠。

周囲を白い光が包み、そこには1人の女性が立っていた。


転移した先で僕が目にしたのは、泥だらけの獣耳の少女の姿・・・

「私を呼んだのはあなたですか?」

(女神っぽいかな?僕じゃまずいよね?第一声としては妥当かな!?)

内心ドキドキ・・・

「はい・・・女神さま・・・お願いします。どうかおかあさんを助けてください!!」

少女は切羽詰った声で願いを言ってきました。


え・・・っと状況がわからないんだけど・・・

何から助けるのかな?

少女は僕の返事を待っている・・・

「・・・」

沈黙が辛い・・・


「少女よ、私に何を望むのですか?」

(こうなったら直接聞いちゃえ!)

女神になっても願いの中身まではわからないみたい・・・

凄いんだか凄くないんだか・・・

「はい・・・おかあさんが病気なの・・・でも、薬師にも治せないって言われて・・・だから・・・お願いします、おかあさんを助けてください!!」

涙ながらに訴えてくる少女。


「いいでしょう、その願いこの白姫ハクキが叶えましょう!」

(病の治療!うん、それなら大丈夫!)

その時、僕の視界に簡易マップが表示され、光点が点灯しました。

うん?これってひょっとしてこの子の母親の場所?

何て便利機能・・・

女神ってハイテクなの!?


「それではいきましょう!」

風化を使い、風に姿を変える僕。

竜巻とか出来るかな?

こうぐるぐる~っと!

「え?え?え?ちょっとま・・て・・・あ~れ~・・・」

うん、自重しませんでした・・・

まあ、危険な山道を歩いて帰らせるよりいいよね・・・きっと・・・たぶん・・・


山の麓にある集落まで一気に降下。

横回転をしながらだから少女に衝撃は無いはず!

目は回ってるでしょうけど・・・


目的の家へ回転しながら突入!

集落に吹き荒れる嵐・・・

ビュワヮヮーーーッ!!!

あれ?やり過ぎた!?

初めてだから許して!


家の中で風化を解除。

白い光を纏う僕の姿に驚いた表情を向けてくる彼女の母親らしき人物。

マーカーが点いてるから本人に間違いないようです。

それでは願いを叶えてしまいましょ。


「あの・・・あなたはいったい・・・」

ベッドの上で驚愕の表情を浮かべる女性。

まあ、いきなり押しかけられたらそうなりますよね・・・

(ここは女神らしく、凛々しい感じでごり押し!)

「我が名は白姫ハクキ、汝の娘の願いを叶えるために来た!!」


「め・・・女神様!?・・・あの・・・わたし・・・ご無礼を・・・」

ベッドの上でオロオロし始める女性。

うん、素早く済ませて逃げるように帰りましょう!

ところで神力の発動はどうするんだろ?

疑問に思っていると・・・


《世界の声》神力を発動しますか? Y/N

こうやって使うのね・・・

もちろんYesを選択。


僕から光りが女性に降り注ぐ・・・

ちょっと神秘的かも?

一応、彼女の状態を鑑定しておきましょ。


名前:アリア

種族:山猫族

職業:狩人

状態:健康


うん、問題無し♪

これにて女神のお仕事完了♪

では、撤収!

「お待ちください!女神様!」

うん、女性が何か言ってますがスルーです!

僕は来た時と同じように光が全身を包み込み、そのまま消えていった。


淡く輝く白い光を見つめる私。

その光が完全に消えると、女神様の姿は何処にもありませんでした・・・

「おかあさん!?」

床に倒れていた娘がガバッと置き上がり、私に抱き着いてきます。

「おかあさんだいじょうぶ?女神さまは治してくれた?」

「えぇ、女神様は私を治してくださったわ。もう、熱も無いわ。」

あんなに気だるかった体も元通り、女神様が治してくださったのね。

私は女神様に感謝の祈りを捧げました。

私の姿を見て、娘も同じように祈りを捧げていました。


この日より、山猫族の間では新たな女神の伝説が語り継がれることになる。

その名も”暴風の女神”とか・・・


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