第3話 生きて還るまでが任務
「〈
そんなことがあるのでしょうか?」
若い兵士の声がする。
「そうだな、俺たち一兵卒はいいとしても……。
〈
通常部隊ならいま頃は……」
「
〈
『まかせてもいい』って……」
「おいおい。
〈
冗談だろ?」
「おやっさん。
オレだって、しけた警備会社。
んなもん継ぐ気なんかなかったんすよ。
でも、〈
そりゃあもう。
ただの警備会社じゃねえってこってしょ?
それならオレだって。
〈俺〉は初耳だが、そんなことはおかましなし。
若い声が興奮気味に続ける。
「もちろん。
まずは
たとえば地元の
実績つくってって……。
ちゃんと俺だって。
みんなのことだって。
先のことだって。
考えてますって!」
「お、こりゃあ。
二代目社長様に足を向けては寝られねえナ。
俺らの老後のことまで考えてもらっちゃあナ」
壮年の兵士の声が、ちゃかし気味にいう。
そのとき射撃音が響く。
複数かつ、連続的だ。
「〈
〈俺〉は振り返る。
足を鮮血で染めた若い兵士。
フィールドに倒れ込んでいる。
そして、もがくようにして
〈俺〉は、「馬鹿野郎!」と叫ぼうとする。
しかし、声は出ない。
若い兵士を助け起こそうとする。
が、足が動かない。
「〈
行ってください!!」
壮年の兵士が、
そんな馬鹿なことがあるか!
それに〈俺〉は、「生きて
訓練中にも、出撃前にも!
こいつら全員、
〈俺〉の目に、
〈俺〉は
しかし、やはり腕を動かすことができない。
そのとき、右腕に痛みが走った。
「
お時間です」
遠くで声がする。
「全周囲警戒!
さあ、立て!!
突破するぞ!!!」
〈俺〉は叫びながら、
自分がいまどこにいるのか、
負傷した若い兵士の姿はどこにもない。
〈機械仕掛け〉のカメラアイのレンズ。
それが、寝ぼけた男の顔を映しているだけだ。
「目覚めましたか?
音声での呼びかけでは目覚めませんでした。
そのため、中強度の電気ショックを使用しました。
問題ありませんか?」
「ああ。
夢を見ていたようだ。
おかげで目が覚めたよ。
ありがとう」
〈俺〉は右腕をさすりながら
ちょっと
だが、じきに消えるだろう。
「全周囲警戒中。
状況に変化なし」
「衛星画像を見せてくれ。
最新のだ」
〈俺〉は展開された液晶モニターを
周囲に敵影はなし。
〈
「よし。
いっきに〈
先行してくれ」
「了解。
〈
「それから、〈俺〉のことは〈
みんなそう呼んでいた」
「我が軍では、上官を階級で呼ぶのが慣例です」
「命令だ」
「了解。
〈
「それでいい。
よし行こう」
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