二.月からきた女の子

「降りてきたみたいに見えたけど」

 

 だけど女の子は、こう言っています。

 

「とにかく、落っこちたんだって。足をすべらしてさ。そのままさかさに落ちたら、死んじゃうでしょ? だからまっすぐに立ってこう、うまくばらんすをとりながら、ゆっくり、落ちてきたの」

 

 月から落っこちてきたという女の子は、そう言いながらすべり台をするりと下りました。砂場に下り、そのまま体育すわりですわります。

 とくに怪我をしている様子とか、落ちこんでいるような様子もなく、女の子は明るい調子で喋っていました。

 

 男の子は、すべり台の階段にもたれて、少し離れたところにいて、あまり女の子の方を見られません。それは、女の子が月からきたというからではなく、町工場の男の子は、女の子と話したことなんてないからなのですが。

 

「ねえ……」

 

 女の子が、すぐ近くにまで来ていたので、男の子ははっとしました。

 

「今から、月の魚をつかまえるんだ」

 

 女の子の、おおきな目。

 

「手伝ってくれる?」

 

 髪は、肩にほんのちょっと届かないくらいのところで、やわらかくゆれていました。

 

 男の子のむねは、なぜだかどきどきしてしまいました。

 

 大きな月は、ふたりのま上でしずかに輝いています。

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