真夏の昼の黒水蓮

佐藤.aka.平成懐古厨おじさん

真夏の昼の黒水連

灼熱の日差しの中、セミたちが自らの残り少ない命を燃やしながら、鳴き続けている。そんな暑い夏の日の午後のことだった。


冷房のない熱気に満ちた部室で、二人の男が決して負けられない戦いを繰り広げていた。


お互いのプライドを賭けた、男同士の真剣勝負。

しかも、敗者は勝者の用意した罰ゲームを受けなければならないという厳しい掟があった。


これは誇り高き戦士の決闘なのだ。

たとえ、それがカードゲームであっても。


「コスト7を支払い、召喚獣カード《黄金牙の化身》を召喚する。こいつで形勢逆転だ!」

渡辺は力本に対して堂々と宣言する。

しかし、力本は余裕を崩さない。


「残念だったな、渡辺よ。そううまくいかないのが世の中というものだぞ」

「なんだと……」

「俺は、コスト3の《容赦ない発掘》を使うゾ〜。こいつは捨て場にあるカードの効果を使用できるカードだ」

「捨て場にあるカード……ハッ?!まさか……」

「そうだ。俺が使うのは《むさぼり食い》だ」

「アッーー!」

思わず奇声を上げる渡辺。

《むさぼり食い》は、相手の召喚獣カードを破壊できるという強力なカードだ。

それを使用されるということは、切り札である《黄金牙の化身》が破壊されるということを意味する。


渡辺は、自らの敗北を察したのだ。


「貪り食いの効果で、俺はお前の≪黄金牙の化身≫を破壊。さらに、俺の場の《獰猛なる野獣》で攻撃させてもらうぞ」

渡辺にこの攻撃を止める手段はなかった。


おぞましい姿の巨大な野獣に貪り食われる。

そんなイメージを脳裏に浮かべながら、渡辺は敗北した。


「そっ、そんな……」

「これで、お前のライフはゼロ。お前の負けだ」

カードゲームでの敗北。それはすなわち、力元の罰ゲームを受けるということである。


「それでは、罰ゲームの時間だ。約束通り、お前に男の世界を味合わせてやるゾ」

「やっ、やめてくれ!俺はそんな世界知りたくない!」

必死に抵抗する渡辺を、部室の奥にある、開かずの間へと強制的に連行する力本。




「アッーーーーーー!」

しばらくの後、奥の部屋から一人の男の悲鳴が響いた。

その声には、苦しみや恐怖だけでなく、ねっとりとした快楽の色が含まれていた。


外ではセミの声がやかましく鳴り響き、まるで二人の危険な戯れを隠すと共に、それを祝福しているかのようだった。

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真夏の昼の黒水蓮 佐藤.aka.平成懐古厨おじさん @kinzokugaeru

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