第11話赤
「さあ、入って」
真田に続き、少し広めの玄関で靴を脱ぐ。
そこは、もうそんな広さは必要ないというのに。
その玄関は端の方にほこりが積もっていた。
「真田は掃除が苦手なんすか?」
真田は、俺の言葉にうなずいた。
「誰も、やり方を教えてくれなかったからね」
それは自分の過去を悲観している言葉なのに、やっぱり俺はうらやましいと思ってしまう。俺もそんな風に、周りが誰も干渉してこない生活をしてみたい。
今まで散々干渉されてきた代わりに未来ではそんな風なことはないと信じたい。
「最初からメインディッシュで行く?それとも16歳純情乙女の部屋を見に行きたい?」
メインディッシュ、を見に行きたい気持ちはやまやまだが、後回しにしておいた方が、それを見せる真田的にも、パフォーマンス精神がわくのではないか。
不思議だ、本当に不思議だ。
今日の朝まで、彼女が関わってくることをあんなにも拒否していたのに、半日でこんなにも状況が変わるとは。
思いもよらなかった。
「じゃあ、別にそこまで興味があるわけじゃないんすけど、じゅんじょーおとめの方で」
俺がそう言うと彼女はやっぱり、にっこり嬉しそうに笑った。
「こっちだよ、水谷君」
玄関の前には廊下が広がっており、その突き当りには階段があった。
その玄関から階段までの中途には4室くらい大きな部屋らしきもののドアがあるのだが、彼女はスルーし、階段を上がり始める。
俺の部屋も家の2階にあるのだし、一般的には個人の部屋というのは2階にあるものなのだろうか。ともだちというものがいなかったのでよくわからない。
そもそも今、真田と、ともだちというものになれているのかも分からない。
階段を上がると、2階の廊下が広がっていた。
2階には、6部屋も(つまり右に3部屋、左に3部屋ずつ)、あるらしかった。
その奥のベランダに近い、右の1部屋は彼女の部屋のようで、迷わずドアを開かれた。
「・・・・っ」
俺は絶句した。机やベッドがあるのは、普通だったのだが。
そこの壁や天井にはたくさんの穴が開いており、また血痕のような赤い跡も残っていた。
彼女を見るとまだあの笑みを絶やさずにいて、正直恐ろしく感じてしまったのは、ただの過剰な反応なのだろうか。
「ここは、私の部屋で、事件現場じゃないよ。私はねえ、くるってるの。部屋のものとか、あとは自分とかを傷つけずにはいられない。生きてることすら許可されてないんじゃないかって思うの」
彼女を直視できなかった。
だって、これじゃあ、これじゃあ、まるで。
君は恵まれているはずなんだ、真田観月。
でもそんな恵まれているはずの君がなぜこの俺と同じことを感じているんだ?
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