第8話変

図書館で人気者に会ってから初めての週明け。

俺は少しある可能性を危惧していた。

人気者は、俺がおととい関わるなといったことを完全無視し、普通に話しかけてくるのではないだろうか。

俺の読んでいた本を横取りしたことからして、それは十分あり得る話だった。

登校中、電車に揺られているときもその場合の反応をどうしようかと考えていた。

彼女のことだから、きっと自分の友達も群れのように引き連れてくるだろう。

そんな時に「水谷くん」などと言われたら、いちいち俺は人気者の友達にも説明してあげなければいけないのだろうか。

…、それはないか。

何しろ俺は裏で陰口を言われているような輩だ。

人気者がいくら友達と言ったとしても、信じないか。

それに気づいたのは教室に入る前のことで、俺はようやく解決策が見つかったとほっと一安心し、教室のドアに手をかけた時だった。…あとから思えば、教室はいつもに比べ確かに静かだった。

「あんた、殺人罪でつかまえられた男の娘なんだねー、観月」

ドアを開けようとしていた手が止まり、宙に落ちた。

「昨日、真田ってグーグルで検索したら、その事件がヒットしちゃって~。

情報が流出してて、その被告の家の住所見たら観月んちじゃんね~」

ネットで情報を見つけたのは、女子のようだ。

誰かは分からないけれど。

でも観月という名前は明らかに人気者の名前だ。

「佐奈。気づいたんだ…」

人気者の声は、少し沈んではいたものの、いつかこの日が来るんじゃないかと予想していたかのようでもあった。

「んで、うちらそんな危険人物と血がつながっている人となんか仲良くする気ないから。ばいばいだねっ」

きっと佐奈という人(確か前はいつも人気者の隣にいた)のまわりにもともと人気者と仲の良かった人が集まっていったのだろう。

人気者はこう口にした。

「ばいばい、みんな」

そして足音がしたかと思うと、

目の前のドアから人気者が出てきて、

俺にぶつかった。


彼女は泣いていた…。


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