第5話人

図書館では、騒ぐ人はいない。

静かにじっと自分の世界に浸ることができる。

つくづく俺向きの場所だと思う。


さすがに何度も来ているからか、時間配分はぴったりで、ちょうど開館すると同時に自転車を駐輪場に止めることができた。

ちなみに自転車は確実に施錠する。前にこの地域では殺人事件があったらしく、その時、犯人は逃走するのに、ここの駐輪場に置いてあった施錠されていない自転車を使ったそうだ。

持ち主には本当に同情する。

自分の住む街で殺人事件があり、その犯人が逃走しているというだけでも身の危険を感じるのに、どんな形であれ、その事件に関わってしまったことになるのだから。

まあ、自業自得ともいえるのか。

図書館には朝でも意外と人はいるものだ。

高齢の人が多めなのは否定しないが。

俺はそんな人たちが図書館内のソファに座り、雑誌や新聞を読むのを傍目で見ながら、返却カウンターへ足を向けた。


本を返却した後は、いったん2階に上がり、DVDを借り、それを視聴することにする。

2階にはあまり高齢の人は来ないので、ほとんど俺の独占状態となっている。

DVDの並ぶ棚の中で俺好みのものを探す。

意外とそういうのは探したらたくさん出てくる。

今日はこれにしよう。

そう思って選んだのは「明日、君がいない」。

実はもう何度も見たことがあるのだが、面白いのでやめられない。

そうして、ソファに座り、小さい丸テーブルに置いてあるカセットにDVDをセットした。

さあ、また嘲笑してやる、この登場人物たち全員を。



大体まとめると、さまざまなものを抱えた6人の高校生の中で誰が死ぬのか、というようなストーリーだ。

よくミステリーにあるエンターテイメント的な要素は全くなく、人と人との関わりについてかなり真剣に書かれたものだ。

確かに俺以外の人が見たら、泣いたりするかもしれない。

でも俺は、、笑っていた。

ああ、馬鹿だ。

こんな風にわざわざ人と関わろうとするからこういう運命になるのだ。

やっぱり関係という言葉は嫌いだ。

俺みたいに誰とも関わらないでいれば幸せだろうに、安定した生活を送れただろうに。

可哀想に。


何度この映画を見ても感想は変わることなどないので、いつもこう思う。

ああ、俺はいつまでたってもこのままなのだろうな。

きっと1人で生き1人で生活し、1人で死んでいくのだろう。

潔く、誰にも迷惑をかけずに。





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