第3話好
本当の意味でクラス全員の人間から好かれる、人気者などいるのか。
俺の問いは今日の高2のクラス分けで簡単に解決した。
…そういう人気者はいた。
真田観月。
月を見るでみづきとは何て簡潔な名前なのだろう。
彼女の自己紹介を聞いた俺の感想がそれだ。
それだけでただの無表情だったというのに、周りの皆は大声で「いいぞー」と歓声を上げたり、パチパチと拍手の音が聞こえてくる。
確かに彼女は顔も上品な感じだし、性格も面白そうだが、果たして他の人間とどこに違いがあるのかわからない。
人気者とそれ以外の人間の境界線とはどこで区切られているのだろう。
真田観月の周りには休み時間も人だかりができていた。
机の上で本を読みながらでもその様子は分かる。
女子の周りには女子があつまるもの、俺なりに理解していたはずなのに、その人だかりのメンツの中には少なからず男子もいた。そこからはたびたび楽しそうな笑い声が上がる。
かといって彼女に好印象を抱いているのは、その人たちだけでなく2,3人で固まっている地味な女子メンバーも、こういう事を言っているのが聞こえた。
「良かった、真田さんクラス同じで。彼女無駄に人の悪口とか言わないじゃん?1年の時から真田さんのいるクラスだけ明るい感じで皆がなかよさそうだったもん」
「言えてる。うちらも仲良くなりたいね」
これが人気者か。
…ちなみに俺は彼女の1年生時代のことを知らなかった。当たり前だ、そこまで人と関わりたくないのだから。
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