幕間 本の化身、緑青は再び独考する。

 しかし、なぜあそこに本持ちだけが居たのか……。私は『本』の気配を探って、あのビルの下まで来たはずなのに。


 長い、美しい髪の持ち主。彼女の傍らに、『本』の姿はなかった。だが、私たちのような『本』の気配は確かにそこにあった……。


 『こちら』に来たのは初めての経験ですが、こんなにイレギュラーな事が起きるものですかね。確かに『平穏』を失った志田さんの周囲に、異常な事件が頻発するのは納得できます。


 でも、『予報』が機能しない人の死なんて、本来はあるはずがない――起き得ないこと。だからこそ、鴉羽からすばが居た。そして鴉羽が人を生き返らせる頻度は、こちらの時間で十年に一度ほど。それなのに、たったの二日の間に志田さんと犬飼さんが生き返り、その上、この街には『本』が五冊はある。


 のか、……。


 何が起きているのか、確かめる必要がありますね。姉さんも、きっと同じ思いのはず。


 まずは今日、もう一度あの女性と会わなければ。

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