敗北

練兵場に足を進める。カツカツという時を正確に刻む音を打ち鳴らしながら石畳を歩いていく。

練兵場に着けば若い美青年達が汗を流しながら剣技を磨いている光景が広がる。砂煙を上げ、若い気炎を上げ、その手に持つ鉄塊で藁の人形を切り倒していく。飛び散る汗が太陽に照らされ、若き青年達が俊敏に動く様を彩る。隅のほうに目をやれば、甲冑を着込み、大地を蹴り、他の青年達が支える樽を押し飛ばす姿が見える。その様は当に豪快。ちょうど高き崖から降り注ぐ瀑布を真横にしたような絶景。あるところでは、不必要な肉が一切ついてない研ぎ澄まされた筋肉質の精悍な身体を絡み合わせている。お互いの息遣いがこちらにも聞こえてきそうな手に汗を握る誇りをかけた戦い。組み伏せられた青年の首の横に短剣が振り下ろされ大地を穿つと周りから歓声が上がる。彼らの鍛錬は当に管弦楽、いや歌劇と言うべきだろう。美青年達が汗を流し自分を磨く様は、それ自体が芸術だと言ってもいい。その様を鑑賞する私は満足し笑みを浮かべる。我が祖国は安泰だ、と。


私は英雄と呼ばれている男だ。十年前、我が祖国は隣国と戦争状態に陥った。その頃の我が祖国は小さく弱い国で、隣国は我が祖国を飲み込もうとしたのだ。実際、始まりのほうは敗北続きだった。その苦境を覆すのは忘れもしない、首都に続く渓谷での奇襲。

齢二十にも満たない私は、あの時先陣を切り崖を駆け下りた。長い髪を棚引かせ、誰もが足を竦める様な切り立った崖を私は駆け下りた。そして誰しもが私に続いた。思いもよらない方向からの奇襲で敵国の主力軍を壊滅させる事に成功した我が祖国はその後破竹の勢いで勝利を重ね、有利な条件での講和を結ぶ事に成功した。あの勝利以降、どの戦いでも先陣を切り相手の陣を切り崩し続けた私は英雄と呼ばれる事になった。

英雄という存在には様々な条件があると思う。まずは、負けていないという事だ。敗北するときもあるだろうと思う者がいるかもしれない。でもそれは間違いだ。心が負けないという事が、負けていないという事だと私は思っている。例え、大勢では勝利を得たとしても、心が負けていればもうその者は戦士としては終わりなのだ。心が折れれば戦士としてもう一度戦場という晴れ舞台に立ち勇ましく戦う事はできない。

もう一つの条件は美しいという事だ。醜いものを崇めたいと思う民衆はいない。崇めるという行為は酔いしれるという行為とも言える。折角、日常とは違った気分になるために英雄譚という美酒を飲むというのにその英雄が醜ければ話にならない。

私はこの二つを兼ね備えた英雄なのだ。祖国の街角では大道芸人が演ずる私の活躍を描いた紙芝居を子供達が食い入るように見ているという。

肉体が最も高い能力を持っている年齢を過ぎた今の私は、後進を育てる立場についている。私たっての希望で美青年だけを集めた部隊の創設する事が認められ、聖戦士団と名づけられたその部隊の指導をしているのだ。

勿論、美青年だけを集めた部隊を作るのには正当な理由がある。軍が強い、という事は民も活気付くからである。そして強い軍を作るためには英雄が必要である。私のような英雄を作り出し、国民の意気を高めるということが祖国のためになるのだ。

想像してみて欲しい、貴方が閲兵式を見たときにどのような兵を見る事ができれば嬉しいかを。眉目麗しい青年で構成された屈強な部隊が行進しているのを見れば、誰もが心躍るはずだ。


この部隊には週末の夜に秘密の儀式を行う習慣がある。それは、私がこの部隊を創設した理由の一つと関わっている。有体に言ってしまえば、私の欲望と直結した儀式だ。私は、美青年を愛する事しかできない。私は英雄であるから、国としては私の種を残して欲しいという要求があった。国王陛下直々に美しい娘を集め、私と見合いをさせたこともあった。しかし私はどれも断った。

「私は祖国のために戦場に身を置く者ゆえ、帰るところを祖国以外に求めてはならないのです」

誰もがこの言葉は真の戦士たるがゆえの言葉と受け取っただろう。しかし、私が女性との婚姻を断りたいという理由で述べただけの言葉だという事を誰も気付いていない。もし、知っているとすればこの部隊の青年達のみだ。


男根剣技。

私はこの儀式をそう呼んでいる。

地下の一室で、蝋燭だけが照らす中行われる静謐な行為。この競技の規則はとても単純だ。互いのそり立つ硬くなった男性の象徴を擦り合わせる。その間、互いの男根に手を触れるのを禁止する。ただし、その他の部位に触れる事は認める。また、腰を引き男根を離す行為を禁止する。不意に離れる場合は許されるが、明らかに自分の意思で離した場合はその時点で心が負けたと判定する。そして、先に射精をしたほうが負けとなる。つまりは相手を感じさせ、また自分が耐えることで勝利を手にする事ができる。

この儀式には戦士として必要なものが全て詰まっている。不正を許さない戦士としての潔さを磨き、相手の弱点を認識する観察眼を磨き、そして快楽に惑わされない強い心を磨く。また、この儀式には私を満たすものが全て詰まっている。眉目秀麗で、引き締まった肉体美を持つ青年達が快楽に震えながら勝利を得ようと互いに身体を絡ませる姿はこの世のどんな芸術よりも素晴らしい。


今宵も若き肉体が絡み合い、火花ではなく白き精が飛び散る戦いが始まる。

壁沿いに並ぶ青年と私、そして部屋の中央に決闘者が二人。金色の髪を肩まで伸ばし前髪を切りそろえた長身の青年、ハーキュレス。そして彼より一回り背の低い黒髪の青年。艶やかな髪を腰まで伸ばしどこか儚い表情を浮かべるイオラウス。二人は互いに硬く口を結び、自分の象徴を勇ましく立たせながら歩み寄る。そして、二人の男根が重なると誇りをかけた戦いが始まる。


始めは互いに鍔迫り合いのように擦り合わせていたが、まだ先走る透明の液すら流れてこない。どちらも筋肉の上に薄く張る瑞々しい肌に玉のように汗を浮かべながら目で互いに牽制し合っている。

膠着状態を打ち破ったのはハーキュレスだった。彼が背丈の差を活かし、イオラウスの耳を責め始めたのだ。舌が彼の耳の外周を嘗め回し始めると、イオラウスの身体が震え始める。すでにイオラウスの鈴口からは透明な液体が流れ始めている。その液体は潤滑液となり、二人の擦れあう男根に更なる快楽を与える。

雨で濡れているときの戦闘が不意の事故を起こし、その僅かな感覚の違いが二人の力量差を無にして戦いの結果を分からなくするように、あふれ出した先走りは彼らの下半身の戦いにも変化を齎す。

不意にお互いの男根が凄まじい勢いですべるとイオラウスは背を反らせ震えた。しかし射精しまいとハーキュレスの背に強く爪を立てるとお互いの身体が密着し二人に更なる快楽を与えた。一気に引き付けられた二人の身体は男根も例外ではなく速い刺激を与える。少しだけ短いイオラウスのそれがハーキュレスの逞しく浮き上がる裏筋をなぞりあげると堪らず彼も先走り汁を出しはじめる。

すでに地下室は彼らの汗の匂いが充満していて観客である私も酔いそうになっている。どちらも限界が近いのだろう、噴出す汗は留まるところを知らない。ハーキュレスはこの戦いを終わらせようとイオラウスの唇を奪い始めた。男根だけではなく舌と舌も鍔迫り合いをはじめた。口腔内というのはむき出しの肉で、柔らかい舌で撫でられようものなら嫌が応でも感じてしまう。ここで、身体の大きさの差が勝負を如実に分けた。

長いハーキュレスの舌は前哨戦である鍔迫り合いに勝利し、イオラウスの中へと侵入を開始した。彼の蹂躙が始まると、イオラウスは只管短い喘ぎ声を上げ始めた。

突如、彼の背が引き絞った弓のようになった。それと共に長い髪が空中を舞い不規則な軌跡を描くと、汗が宝玉となって彼を妖艶に装飾した。

そして放たれた白き精。

その精をハーキュレスが掬い飲み干すと、彼は拳を振り上げ勝利を宣言した。歓声が上がる。皆の拍手が突撃を始めた時の様な轟音をあげて地下室に木霊する。私も惜しみない拍手を二人に送った。しかし、イオラウスには指導が必要なようだ。私は緩みそうになる口元を隠しながら、二人が戦った証である水溜りに跪くイオラウスを抱えると、自室に運んだ。


週が明けると新しい青年が我が聖戦士団に加入した。

名はアレクサンドロス。

慣例では、冬が明け、春を迎えた時に新しい団員を募るのだがその時期から外れてやってきた。普通の青年ならば、私は入団を認めなかっただろう。しかし彼は強かった。そして美しかった。どうやら地方の村で猟師をしている家に生まれたようで、私の前に現れたときには既に完成された戦士といっても良かった。

訓練が始まると誰もが彼に驚いた。小柄で、女性にも見まごうような中性的な顔立ちであるものの一度服を脱げばその肉体は誰をも圧倒した。他の団員に比べると、身体の線は細い。しかしその細い肉体には緻密に力が詰め込まれてた。全ての無駄をそぎ落とし、俊敏に動き、そして強い力を発揮するための肉がほぼ細密といっていいほど整然と詰め込まれているのだ。その完璧さには私も息を飲んだ。

実際に訓練に参加させてみると、彼の戦士としての完璧さをすぐに見せ付けた。俊敏な身のこなし、瞬発的に発揮される強い力、尽きる事のない体力。その全てから見て取れるのは、彼の恵まれた肉体を彼自身の脳がしっかりと、完璧に使いこなしているという事だ。例えば、いくら力に優れていてもその力を注ぎ込む方法を知らなければ、剣は鋭くならない。しかしながら宙を舞う羽虫を針で正確に突くような人並みはずれた技巧で彼は武器を扱う。体躯が大きいもの相手でも、その動きをまるで未来が見えているかのように読み取り、要所でその力を注ぎ込み相手を崩し、組み伏せる。

戦が無い事が祖国にとって望ましい、しかし彼が戦に出ればどのような伝説を作り上げるのかという事を妄想してしまうほど彼は強いのだ。


しかし彼には弱点があった。週末の男根剣技で早速彼を戦わせたが、いとも簡単に射精してしまったのだ。私はすぐに指導と称して彼を自室に呼んだ。

「何をなさるつもりで?」

全裸の彼を寝台に座らせると早速私は彼の身体を堪能し始めた。まず接吻をしようと顎をつかみ唇を食む。そして彼の口腔を侵略し始めた。彼は全く抗おうとせずに悩ましい声を上げ始める。こういうところも完璧じゃないか。全てが私を魅惑する。強い事、美しい事、そして可愛らしく感じてくれるところ。神が作り出した存在なのではと勘違いしてしまうほどの完璧さだ。

舌を挿入しながら私は彼の身体を撫で回し始めた。既に瑞々しい肌からは汗が浮き上がっており、唇を離し彼の首元に顔を埋め息を吸うと彼の匂いで私の頭がいっぱいになった。

触れていて分かるのは、兎に角彼の身体は密度が高いという事だ。その滑らかな肌の奥にはすぐに力の源のなる肉があることを感じさせる。首筋を舐める。彼の汗の味を感じながら彼の皮膚を吸う。私が彼を味わうたびに、彼は小刻みに震え吐息を吐く。

私は彼との接吻を再開し、肉と肉の間の溝をなぞり始める。彼の強さを構成する筋の形を隅々まで私の手に覚えさせると、既に硬くなっている彼の男根に触れる。もう既に彼は先走りの液を垂れ流していた。私はそれを掬い、味わう。彼という存在の密度が濃いその液はとても美味だった。勿論彼にも味わって欲しいと思い、指で掬い上げて彼の口に指を挿れると、彼は喜んで私の指を吸った。

なんて淫らなんだ。私はこれまで幾人もの美青年の身体を楽しんできたが、彼ほど快楽を受け入れそれに酔いしれる男を見た事が無い。

「さて、そろそろ指導をしないとな」

私はそういうと、彼の男根の根元を紐で縛った。そして彼のそり立つそれに舌を伸ばす。浮かび上がった裏の筋を舐め上げて鈴口まで舌を伸ばすと彼を濃縮した液の味が舌に広がる。その間も彼の身体は震えたままで、すぐにでも精を吐き出したいといった感じで男根が脈打っていた。

「まだ射精してはいけない、お前は強いが、耐える力が無い」

私はそういいながら彼の竿を舌で焦らす様に責め立てる。舐める、口付ける、舌でつつく、吸う。そんな繊細な責めに彼はただただ喘ぎ声を上げていた。全く駄目だ。こんなもので感じているようでは真に強い戦士にはなる事ができない。

私は彼の男根を飲み込んだ。喉の奥まで深く。その快楽が彼の脳を貫いたのか、私の背に彼は爪を立てる。そしてその指から伝わる僅かな不規則な力の揺れ具合が彼が達した事を私に伝えていた。

全く、なんと弱いのだ。私は彼の男根に一心不乱にしゃぶる。私の頭が前後するたびに彼はもはや言葉にならない原始的な声をあげる。彼の快感を詰め込んだ亀頭がどんどんと膨れ上がり破裂しそうになると、私は紐を解いた。そして私の中に注がれる濃い彼の精。まるで堰が切れて氾濫するする濁流のように私の中に染み渡る。私の舌だけでなく脳も満足させるその味と強い彼の匂いに、私は酒で酔ったような感覚になる。

その液を彼との接吻で交換し合うと私は彼の菊門に私の男根をあてがうと、一気に貫いた。やはり痛いのか、彼は私の頭の後ろに手を廻し接吻を求めるように引き寄せてきた。唾液が何割で、彼の精が何割か、そんな事がもはや分からない粘着質な液の交換をはじめると、私は少し腰を引き男が感じる部分を責め立てはじめた。彼はそれが気に入ったのか鼻にかかった高い声で喘ぎ声を上げるようになる。それと共にだらだらと少し白みがかった液体を流し始める。まるで赤子の涎のように意思など捨てて我慢する事も忘れて彼は只管それを流し続ける。

けしからん、なんという節度の無さ。私が徹底的に指導し、彼に我慢を教えなければならない。そんな使命感にかられ、私は何度も何度も彼を絶頂に導き、彼の中で我が精を吐き出した。その後も事あるごとに彼を呼び出しては指導と称して彼の身体を貪った。


ある時、彼は私の部屋に来てこう言った。

「団長、いや我が国の英雄アイアス様」

私の部屋に来るときは淫らな顔になる彼だが、今日は違っていた。そのある種の覚悟をした表情、そして団長ではなく私の名を呼んだことでこちらの顔も引き締まる。

「今宵の薄明かりの刻、決闘場でお待ちしております」

彼はそういい残して私の部屋を去った。なるほど、私に男根剣技で挑もうと言うのだな。面白い、そして―――若い。


湯浴みを終え、地下の決闘場に向かって歩む。満月、そして漆黒の闇に散りばめられた明かり。夜空というのは私の過去を思い出させる。

月、夜空の中で一番大きくそして一番明るく輝くそれは、人々が追う英雄。しかし夜空という歴史を彩るのは決してそれだけではない。私の側で散っていった者たちもいる、私が散らせた者もいる、そういった星々全てが夜空を彩るのだ。地下へ向かう階段を降り、決闘場へ足を踏み入れる。

既に蝋燭に火は灯され、アレクサンドロスが中央で立っていた。精悍な顔つき、無駄なものが一切存在しない研ぎ澄まされた肉体、そして逞しく聳え立つ男根。いつ見ても彼は、美しい。ただ彼の瞳の奥にはいつもは見られない強い炎が宿っていた。そんな彼の瞳に射抜かれた私の脳内に一瞬敗北という恐怖がちらついた。まさかな、そんなはずはない。その理由はただ一つ。―――私が英雄だからだ。数多の命を屠り敗北を知らず勝利し続けた唯一の英雄だからだ。


服を大仰に投げ捨て自分の肉体を彼に見せ付ける。既に私は勃起していた。もう全盛期の肉体ではない。しかし身体に刻まれた傷が、私の英雄としての装飾品だ。

どうだ美しかろう、恐ろしかろう。

私は彼に歩み寄り男根をすり合わせる。戦いは始まった。彼の弱点は既に良く知っている。何度も口で責め立て、すぐに形を思い描く事ができるのだから……。その弱点を只管責めればよい。硬い男根は彼の弱点を的確に責める。鍔迫り合いでは敵わないと思ったのか、舌での攻防を開始しようとする。むき出しの肉の攻防が上下で始まる。舌の侵入を防ぎ彼の体の内側に入り込む事さえできれば勝利を得る事は容易い。

だが、私の作戦は狂った。

―――あまりにも彼と交わりすぎた。本能的に快楽を求めるように彼の中に入り込むと、こちら側も快楽を得たいという隙を意図せず与えてしまったのか彼は私の中に侵入してきた。そう、幾度と無く快楽を交換したせいか、こちらも彼に責められたいという欲求が芽生えてしまっていたのだ。幾度と無く唾液を交換したせいで、私の剥き出しの肉の弱い場所を彼は知っていた。そして彼と交わった経験が頭の中によぎる。

負ける……私が負ける。


―――射精していた。

これまでの男根剣技の試合の中でも一番速いあっけない終幕だった。私は跪いていた。そして情けなく精液を垂れ流していた。勝利の宣言として彼は私の精液を掬い口に含むと、私にもそれを分け与えた。そして未だ勃起をやめない私の男根を飲み込んだ。私に馬乗りになり彼は腰を振る。

「話の中でしか知らない英雄」

私は英雄なのだから、そんな誇りは打ち砕かれた。もう自尊心は打ち砕かれて矮小な人間に成り下がっていたが、性欲が私を突き動かし、彼を押し倒し腰を打ちつけた。

「我が国は貴方という英雄のおかげで平和を手にした、それはもう私が英雄になる機会がないということだ」

私の性欲は尽きる事を知らず射精しているのか、そうじゃないのか分からないまま腰を振る。

「でも、私は英雄になりたかった」

頭の中で快楽が弾け、目の前に火花が散った。

「私は貴方に勝つ事でしか英雄になる事ができない」

私の腹部に暖かい飛沫を感じて彼も射精をしている事が分かる。

「そして今宵、私は勝った」

負けた。それは私が英雄の座から引き摺り下ろされた事を意味する。私が犯している彼は、私に勝利した美しき英雄。彼の中を私の精で染め上げてもその事実は変わらない。

「いくら今、貴方が私を押さえつけ私を犯していても、貴方は私に負けたのだ」





私は聖戦士団を辞め、故郷の村に帰った。心が彼に負けた、それは私が戦士として戦場に立つ事はもうできないという事を意味する。負けてしまえば私は英雄ではないただの人間だ。夜空を支配する月ではなく、遠くで輝く小さな星に成り下がってしまったのだ。そんな矮小な私は今日も彼の事を思い出し手淫に耽る。

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