◆Middle11◆推測と確信
生徒会副会長ヒルダ・ユンカースは、校内の病棟へと運ばれた。
フジヤマたちからの連絡を受け、その場に駆けつけた菫とクロウはヒルダのひどい状態を目にして言葉を失った。
GM:では、次のシーンに入ろう。ルインとフジヤマが、怪我をした副会長を病棟に連れていき……連絡を受けた菫とクロウが合流するって場面を作ろう。
フジヤマ:てぇへんだぁ! てぇへんだぁ……っ! ミーらは病棟に副会長を連れてきまして……。
菫:あ、そこに到着してもいいですかっ?
GM:OK。では、塔に行っていた菫とクロウも同じタイミングで病棟に駆け込んだ。
ルイン:おお、ふたりとも! かくかくしかじかな状況だ!
菫:ええっ、ヒルダさんが!?
クロウ:しまった、黒幕じゃなかった! これは本当に証拠を握ってて、狙われたか。
GM:「んぁ~? ど~したの、そんなあわててぇ……ひっく」「怪我人か? 偶然だな。俺はプロテインをもらいに来た」
菫:マッスル先輩とエレイン先生っ!?(笑)
フジヤマ:っていうかなんでここに!?(笑)
GM:「いやぁ? ちょっと彼と話してたのよぉ」
フジヤマ:先生が、寮長となんの話を……。
GM:「生徒会長が泣いてたって話」(一同爆笑)
菫:……って、そんなことより、ヒルダさんの状態は!?
GM:そこでマッスル先輩が、ルインに背負われた少女に気づく。「……な! 副会長のヒルダか!?」エレイン先生もその声に、驚きの声を上げた。「どうしたのよ彼女、ひどい怪我じゃない! どこから落ちたの!?」
ルイン:おそらく校舎の屋上から落ちたのではないかと……。そうだ、医務の先生はいますか! 急患です! 怪我人です!
GM:「待ってて、呼んできてあげる」と、先生が病棟に駆け込んでいく。
クロウ:…………。
GM:やがて飛び出してきた医務の先生が、血まみれの副会長を見て険しい表情を見せる。そして、彼女の負ったダメージが深刻である、と判断。手術が行なわれることになる。「これより、魔術と外科的手術の複合術を始める! 患者をオペ室へ!」
菫:ヒルダさん、大丈夫かな……?
クロウ:……助かると願うしかないな。そうだ、手術に入る前に医務の先生にこっそり聞きたいことがあるんだけど、いいかな。
GM:こっそり?
クロウ:うん、誰にも聞こえないように、こっそりと。……さっき診察した時に、副会長、携帯端末以外になにか持ってなかった?
GM:「いや、なにも」
クロウ:ふーん……(少し考え込み)ありがとう、彼女をよろしくお願いします。
そして、手術が始まった。
重苦しい空気の中、手術室の前で待つ一同。そして数時間後―――
GM:……では、明け方となり、長い手術の執刀を終えた医者がキミたちの前にやって来て事情を説明してくれる。あ、エレイン先生は理事長に報告に行ったので、今は不在だ。
フジヤマ:ともあれ、先生! どうなんデスか! と、詰め寄る。
GM:「最初の応急処置がよかったのだな。一命は取り留めたよ」
クロウ:どういう怪我だったんですか?
GM:「ああ、傷の具合からして高所より落ちたものと思われる。かなり傷も深くてね、本当によく生きていたな。全身打撲と身体の各所に裂傷。臓器に致命傷がなかったのが幸いだ。おそらく、落下中に木かなにかがクッションとなったのだろう」
フジヤマ:おお、ミーたちの見立て通り。
菫:ねえ、待ち合わせ場所って、第七校舎の裏だよね? なら、高いところから落ちてくる意味がわからないよ。屋上に行ったってこと?
クロウ:たしかに変だな。
フジヤマ:まあ、飛行できるエネミーやドゥアンの天翼族などが空まで持ち上げて落とすなど、やり方はいくつか考えられマス。手段を論じるのは、このエリンでは意味がないデス。
菫:うう、さすがファンタジー世界! 少し不思議!
クロウ:いずれにせよ、副会長の持つ情報が邪魔で、かつ、俺たちを邪魔に思う第三勢力からの攻撃と見るべきだな。でも、敵の目的がわからん。なぜ、俺たちを狙う?
菫:たぶん、みーちゃんに絡んだこと……そういえば、オープニングで変な夢を見たな。
クロウ:そういえば、夢じゃなくて助けを求めるみさとの思念がもれてきたもの、ってGMが言ってた! ジョークっぽく言ってたからスルーしてたが……どんな夢だっけ。
菫:みーちゃんが縛られてて、鈴がどうとか、それがなんかを引き寄せる、とか?
クロウ:鈴? 引き寄せる? なんてファンタジーな会話なんだ。
フジヤマ:それはよくあるパターンデス! 強い魔力や資質を持つ人を触媒に、強い魔族を呼び出すとか。
クロウ:たしかによくあるな! RPGやラノベやアニメで!(笑)
ルイン:あ、副会長のスマホに情報が入っていないか? 彼女は、なんか犯人の証拠を押さえたっぽいからな。
GM:そこは調べたけど、それらしいものはない。
ルイン:すると、USBメモリみたいなものにデータを入れていた、とか?
フジヤマ:USBメモリ! なんてファンタジーな会話なのか!(笑)
クロウ:いいぜ、この挑戦……受けてやろうじゃないか。
菫:わたし、また塔に行きたい! 実験塔の中が見たい!
ルイン:ならば、生徒会長に協力を求めた方がいいかもしれないな。
菫:協力してくれるかな。
クロウ:大丈夫。俺たちは生徒会長の青春の黒歴史を握っている!(一同爆笑)
菫:そっか! それじゃあ、五行さんのところに行こう!
ルイン:では、私は残ろう。副会長が再び狙われる可能性もある。
菫:わかりました! お願いします!
クロウ:(少し考えて)……あ、出る前にひとつ、みんなに話しておきたいことがある。俺らだけでちょっと外に出ていい?
GM:OK。では、部屋に医師とマッスル先輩を残して外に出た。
クロウ:では、みんなに俺の考えを語る。ちょっと仕掛けを打つぞ。
菫:仕掛け?
クロウ:たぶん、黒幕がわかった。
一同:えぇ……っ(笑)。
クロウ:でもまだ確信がない。だから、あぶり出したい。まあ、聞いてくれ―――。
クロウは、自分の考えをその場にいた全員に語った。
彼の推測を聞き、最初は「え? まさか」と半信半疑な反応を見せる。
クロウの言葉に、最初に同意したのは菫だった。
菫:なるほど……そういえばあの人、明らかにおかしな発言してた。あれ、と思ったんだ。
フジヤマ:しかし、あんな面白い人が……(笑)。
ルイン:このセッションのNPC、面白キャラしかいないがな!(笑)
クロウ:まあ、見てろって。絶対にあいつ、こういう展開にしてくるから。
GM:……(笑)。
クロウ:とりあえず、病棟に戻って話をしよう。
クロウは、その場にいた医師に耳打ちをした。
医師はいぶかしげな態度を見せたものの、申し出を了承する。
GM:「……? それが頼み事かね? まあ、かまいませんが」
クロウ:それが、少なくとも数日は副会長の身を守ることになるかもしれないんだ。
GM:では、話がついたところで……そうだな、エレイン先生が顔を出す。「……おはよう、みんな。副会長の容態はどう~?」
菫:あ、先生。一命は取り留めたみたいですけど……。
GM:「しかし、まだ予断は許しません」菫の言葉を受けて、医師が告げる。「少なくとも一〇日は目を覚ますことはありますまい」
フジヤマ:まあ、生命が助かっただけでもよかったデス。
GM:その言葉に、エレイン先生は頷く。「そうね、本当に。なら、今日は寮に帰って休みなさい。本当にご苦労様。明日は武闘大会が始まるし……しっかり寝て、備えておきなさいね」とキミたちを気遣ってくれる。
菫:え? わたしたち、出る必要あるの?(笑)
GM:「え、出ないつもりだったの? 生徒会長に申告しちゃったわよ~っ!?」
クロウ:まあ、面白そうだし出るのはかまわないんだが(笑)。マッスル先輩はどうする?
GM:「では、俺も残ろう」とマッスル先輩。「副会長がいなければ、五行も困るしな」
菫:先輩も徹夜なのに残るんだ?
クロウ:じゃあ、俺たちは寮に戻る前に、生徒会長のところに報告に行く。たぶん、副会長のことを誰も報告してないし、塔のことも聞きたい。先生、ここは任せていいか?
GM:「え? うーん……テストの採点とかあるんだけど……いいわ。私がここに残る。なにかあったら報せるわ」
クロウ:オッケー。ありがとう、これで安心してこの部屋を出ていけるよ。
ルイン:ふうむ、私ももうしばらくここに残っておこう。
クロウ:ああ、任せた。先生、マッスル先輩、ルイン……三人もいれば、黒幕の手から副会長を守れるだろうしな。
菫:じゃあ。会長のところに行こう!
GM:OK。では、菫、クロウ、フジヤマの三人は病棟をあとにした……ってとこでシーンを切ろうか。
一同:ういっす!
菫:じゃあ、最後に生徒会室に向かいながら……クロウ君に言います。
「……すごい。ほんとにクロウ君の言ったとおりになったね」
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