◆Middle07◆雑踏の向こうに
生徒会長・五行清秋と交渉の末、菫たちはようやく学園の外に出る可能性を手にした。
満ち足りた心地で寮へ帰るその途中、菫たちはふと違和感を覚えた。
見やったその先に現われたのは……。
GM:では、次のシーンだ。伝説の樹の下からの帰り道、先ほどよりも少し時間が経過したぐらいだと思ってほしい。菫のシーンだが、全員登場となる。
菫:はーい。なんか、さっきのシーンで謎の満足感を覚えてます(笑)。
GM:さて、夕刻の人通りはかなり多い。家や寮に帰る者、友人同士で食事に行く者たち、街の住人が往来する通りにキミらが出た―――その時だ。全員【感知】で判定してほしい。
菫:【感知】判定!(ダイスを振る)よし、15です!
クロウ:(ダイスを振る)なかなか。14だな。
フジヤマ:(ダイスを振る)13! ミーよりも、現代地球人たちの方が高い……!
ルイン:私はあまり得意ではないな。(ダイスを振る)8だ。
GM:現代地球人すごいな(笑)。ちなみに、10以上ならば成功だ。人通りの多いその中で、キミたちは気づく。その人波の中に、ひとりの女性のうしろ姿があることを。
人波の中、まるで魚のひれのように、ひらりと“彼女”の衣装の裾が揺れる。
それは、菫にはなじみ深く―――同時に、この世界にはそぐわない物に見えた。
菫:あ、あれ……っ!? そっちへ振り向いて確認します!
GM:キミが振り返ると、髪の毛がふわりと風に流れるのが見えた。人波にまぎれて消えようとしているそのうしろ姿に、菫は見覚えがある。
菫:みーちゃんっ!? え、あれっ!?
フジヤマ:ミーもそれに気づいた、と。……おお、めずらしい衣装デスよ。あれは化学繊維・ナイロンデスねぇ(一同爆笑)。
クロウ:俺は、なんだあのアイドル衣装、とだけ……。
菫:お、追いかけます!
フジヤマ:おおっ!? ど、どうしたんデスか!
クロウ:俺はみさとさんの顔を知らないが……一話でフジヤマの持ってた絵を見てるはず。それに似ていると、すぐ気づこう。
フジヤマ:そうだった! ナイロンがどうこう言ってる場合じゃなかったデス!(笑)
クロウ:俺たちも追いかけるぞ!
菫:みーちゃんっ……!!
人と人の合間をすり抜けるその背を、菫は必死に追いかける。
何度も誰かの肩とぶつかり、そのたびによろめいた。
「おい、なんだよ!」
「気をつけろ!」
「すみません、すみませんっ! ごめんなさい、通ります! 通してください!」
聞こえる怒声へ頭を下げながらも、菫はひたすらに走った。やがて追いつくことを願い、詰まる息と痛む心臓にもかまわずに。
だが―――。
GM:……やがて小路を抜け、大通りへとさしかかる。キミが息を切らせて懸命に追いかけていた彼女の姿は―――もうどこにもない。
菫:そんな……あれは絶対、みーちゃんだった……。
GM:それは確信を持って断言できる。たしかに、キミの探しているみさとだ。
菫:呆然と立ち尽くします……。
フジヤマ:じゃあ、そこに追いつきマスよ。
菫:みんなぁ……うう、泣きたい気持ちになってきました……。
クロウ:結城さん、もしかして今の子が……?
菫:(やや取り乱した口調で)あれが、わたしの捜してた子なの! わたしが捜してた友達が、今、今ここにいたの! 絶対ここにいたの、みーちゃんが、絶対……っ!
クロウ:俺たちも、女の子がいたことには気づいたが……どこに消えた。
菫:わ、わかんない……急にいなくなっちゃって……。
フジヤマ:(しばらく考えて)……え、つまり? 彼女は学園の外ではなく、この学園のどこかにいる……?
菫:えっ!? ど、どうして……?
フジヤマ:さすがにミーでも、そこまではわからないデスねえ。しかし、立ち止まっているわけにはいかないデスよ、すみぽん。少なくとも、ミーたちは一歩前進したのデス。
クロウ:そうだな。彼女が本物のみさとさんなら、その生存が確認できたわけだしな。
ルイン:たしかにそのとおりだ。菫くん、気を落とさずに。
菫:はい……。もう一回、人通りを眺めます。
GM:彼女の姿はもうすでに人波に飲まれ、もはやあの特徴的な衣装を見つけることはできない。
菫:どうしてみーちゃんが、学校の中にいるんだろう……?
GM:その問いに答えは返らない。キミのつぶやいた言葉が風にさらわれたところで、シーンを終了しよう。
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