◆Middle08◆相談と選択

 雑踏の中で見つけた菫の親友みさとは、まるで幻のように消え去ってしまった。

 なぜ、外にいると思われた彼女の姿がこの大学都市にあったのか。

 腑に落ちぬ思いを抱えたまま、寮に戻った一同が見たものは―――大量の空き缶と、飲んだくれている先生であった。


GM:ということで、次のシーンだ。場面は再びキミたちの方に切り替わる。寮に帰ってきたキミたちが部屋に集まると、ひと足先に寮に戻っていたエレイン先生が「おっかえりぃー!」と出迎える。ついでに山積みの缶ビールもある。

ルイン:あ、はい(一同爆笑)。

フジヤマ:祝勝会をひとりで開いている!(笑)

ルイン:あー、こんなに飲んで……。

GM:「も~、どこいってたのぉ~? いきなり走り出しちゃってぇ……せっかくビールをいっぱい買い込んで待っていたのにさあ」

菫:待ってないですよね? もう飲んでますよね?

GM:「飲んでる飲んでる! おかげで先生のキャラ変わっちゃったよぉ」(一同爆笑)

フジヤマ:先生、むしろこの酔っ払いバージョンの方が正体だと思えてきまシタ。

GM:「ほっといて。ま、それはともかくさ~、これでようやく学校の外に探しにいけるじゃん~? よかったねぇ~」

クロウ:それなんだが……。

菫:あの、実は……って、さっき、学校の敷地内でみーちゃんを見かけた話をします。うん……あれは絶対みーちゃんだった!

GM:「は? まさか~! そんなわけないわよ~! だってありえないでしょ~!」

クロウ:それでも「学外に出る」という選択も見直しが必要なのだ。

GM:「ちょっ、ちょっと待って!」と彼女は慌て始める。「いやあ、でもさ~? 今まで助けに行くためにがんばってきたじゃない~?」

クロウ:たしかに、そのとおりだ。だが、俺たちの目的は「学校の外に出る」ことではなく、「結城さんの親友を助けに行く」ことだ。方針はなにも変わっていない。

ルイン:まずは、学園内で彼女が隠れていそうな場所を探す方がいいかもしれない。

菫:うん。そういう場所、あるかな?

GM:「そっかぁ……この資料、無駄になっちゃうなぁ~……」と先生は寂しげに言う。

クロウ:資料?

GM:「いやあ、だってこれ……学外で現代地球人がさらわれた、って話でしょ? これまで転移してきた人たちの記録を集め、統計を取って……分析したの。転移が多く見られるポイントごとに、やって来た人たちはどこに向かうかとか……どこで被害に遭ってるとか」

菫:被害っ!?

GM:「そりゃそうでしょ。誰もが転移してすぐ、この街に収容されるわけじゃないもの。むしろ、あんたたちは運がよかったのよー……ひっく。ほら、これ」と分厚い資料を見せる。

クロウ:おいおい、デキる便利NPCみたいじゃねーか!(一同爆笑)。

フジヤマ:先生! 酒だけ飲んでたわけじゃないんデスね!(笑)

GM:「昔から、飲めばできる子って言われてるのよ?」(一同爆笑)

菫:とにかくその資料を、ぜひ拝見させてください~!

GM:資料は複数のファイルにわかれていた。「大学都市の近くにあるパワースポットと転移の因果関係」「分布しているエネミーの種類や、目撃情報の詳細なデータ」「過去のアーシアンたちの記録」……歴史、統計学、魔法学……あらゆる観点で作られたレポートだ。

フジヤマ:ホントに酒を飲んでいるだけではなかった!

GM:多くの知識と記録に基づいて、転移してきた現代地球人を効率的に捜す方法や、その過程で対峙するだろうエネミーへの対処法とか、そういうデータが記載されてる。

クロウ:これはこれで持っていた方がいい気がするな。攻略本派は、ゲーマーとしてはありだ……!(一同爆笑)。

フジヤマ:コーリャクボン? オー、マニュアルってことデスネ!

GM:「作った資料が無駄じゃなかったと信じて、も~飲むしかないね~」(一同爆笑)

フジヤマ:やけ酒にシフトしてる!(笑)

GM:「でもさ、街の中にいるならすでに安全は確保されている、ということよね? でも、一〇〇%の確証はない。逆に、その子が外にいたら危険にさらされている、ということ。それなら、まずは外に出て彼女の痕跡を探した方がよくない~?」

菫:う、たしかに。

GM:「だったら外出許可のために武闘大会で名を上げるべきよ! そもそもさ、その女の子? 見まちがいの可能性だってあるわけだし~?」

菫:そんなことないです! あの服はどう見ても地球のものだったし!

GM:先生が、菫の言葉になにか意見を返そうとした時―――“がちゃっ!” 誰かが部屋に入ってきてこう言った。「オレンジの服の少女の話……俺も聞いたことがある」

一同:誰っ!?

GM:菫が情報収集した時に出会った寮長……マッスルさんだね。

一同:マッスルさんっ!?(笑)

菫:寮長さん、マッスル先輩と呼ばせてください!(←気に入ったらしい)

フジヤマ:し、しかしいきなりなぜここに……。

GM:「いやな? 五行の奴が部屋に戻ってくるなり、目に涙を浮かべて……『僕は大事なものを失った』だの『この繊細な心が、もはや壊れる寸前だ』とか……わけのわからないことを言っててな。で、なにがあったか聞いたら……お前たちの名を出した」(一同爆笑)

フジヤマ:だから原因を聞きに来たと……(笑)。

菫:ご、五行さんは、ちょっと青春のわななきを……(一同爆笑)。

クロウ:フラグが一本折れてしまっただけだ。思春期にはよくあることだ。

GM:「そうかそうか。あいつの泣き顔を見るのは至福。もっとやれ」

フジヤマ:ユーはSなのっ!?(一同大爆笑)

ルイン:ずいぶんとひどい奴だなっ!?

菫:でもきっとすごい仲良しなんですよね!?(笑)

GM:「そんなことより。さっきの、オレンジ色の服を着た少女の話なんだが……」

菫:あ、その話の方が大事だった! つい興奮しちゃったよ!

クロウ:あ、あのー……菫さん?(笑)

GM:「オレンジ色の奇妙なひらひらの服の女……その目撃談は、生徒の一部で噂になっている。ちょっとしたオカルト話、としてな」

フジヤマ:ファンタジー世界でオカルト……(笑)。

GM:「不思議な服を着た女が夢遊病者……いや、幽霊のように街中をふらふらと歩き……衆人環視の中でその姿がふっと消える、と」

菫:わたしたちが見たのと同じだ。……やっぱり、みーちゃんは街の中にいる?

クロウ:(少し考えて)外に出て時間をロスするより、街の中を調べてた方が早いか?

菫:でも、この街って広いんだよね? 目撃情報が集中している場所を絞って調べたい。

フジヤマ:ふっふっふ、噂、聞き込みと言えばBBS! ネットの噂が渦巻き、さまざまな憎悪と愛情が渦巻いて新たな伝説を生み出す! それがBBSだと聞いてマス!

菫:あ、それだーっ!

GM:先生はキミたちの話を聞き、落胆したような声を出す。「はぁ~、いいんじゃなぁい……? 先生、もう帰るねぇ~……オカルト話って苦手で~」(一同爆笑)

フジヤマ:では、先生の力がどうしても必要になったら、相談しマス!

GM:「わかった~、用事がある時はいつでも呼んで~。先生の寮は近くにあるから~、先生は帰ってお酒飲みます! マッスルゥ、お前も付き合えよぅ」

フジヤマ:え、マッスルさん飲めるんデスか?(笑)

GM:「(渋い口調で)いえ。自分、学生ですから」(なぜか一同爆笑) その言葉に、先生も「あーそー」と帰っていった。その背中を見送ると、寮長も部屋を出て行く。「では、俺は五行を慰めに行く」

クロウ:生徒会長の様子、あとでレポートよろしく。

GM:「―――任せろ」なぜかその頬は紅く染まり……(一同爆笑)。

菫:うほっ!

GM:「うほっ」じゃなくてっ!(笑)

菫:ともあれ、ここでやっとBBSが生きるね! さっそく検索しよう!


 菫たちは寮の共通スペースに設置された端末を使うことにした。

 BBSで奇妙な衣装を着た少女の目撃情報を探るため【幸運】の判定に挑む。

 この判定、難易度9で基本的な情報、11でよりくわしい情報がわかることになっていた。

 そして、ルインがあっさり12を出して成功する。


GM:まずは9でわかる基本情報から教えよう。たしかに目撃情報がいくつか見つかる。というか、一部では有名な都市伝説になっているらしく、専用の掲示板まであるよ。

菫:見つけた! ヒットしたよ!

ルイン:その中から精度の高いものを探さないとな。

GM:さて、その掲示板では「夜な夜な、ひらひらの服を着た女が徘徊する」という噂について会話されているようだ。

菫:どの辺でよく見られるとか……場所が書かれてないか探す!

GM:……菫が、画面をスクロールしようとしたその時―――「404 Not Found」場所を特定する前に、そのページが削除された。

一同:ええぇぇっ!?

GM:それだけじゃない。検索できたヒット数が、リアルタイムにどんどん減っている。

菫:なにこれっ!? すごく情報規制されてる!?

GM:が、ルインは達成値12を出したことにより、消去された情報のログをサルベージすることに成功。目撃情報が多いのは……現在、生徒の立ち入りを禁じている実験塔の周囲だ。

一同:おおお―――っ!!

ルイン:よし、このウェブ魚拓を保存しておこう。

クロウ:く、本来は俺が持っていたはずの属性を、着々とルインが集めている気がする……くそっ、ネット時代の申し子がファンタジーの住人に負けるなんてくやしいっ!(一同爆笑)

ルイン:ともあれ、これで目撃される場所がわかったな。

菫:みーちゃん、やっぱりこの大学都市内にいるんだ! 行かなくちゃ……!

GM:と、菫が立ち上がった時。キミのメールアドレスに副会長ヒルダからメールが届いた。

菫:え? なんて書いてある?

GM:「今から第七校舎の裏に来て。会長のIDの不正アクセスの証拠ログを押さえた。メールでは怖いので直接データを渡したい」

菫:今から……今、何時ですか?

GM:だいたい夜の九時半ぐらいだな。

菫:……どうする? わたしが第七校舎に行くべき?

ルイン:二手に分かれて調査するか? 片方を後回しにするとよくない予感が……。

クロウ:(少し考えて)……そうするか。ただ、注意すべき点がふたつ。みさとさんの顔を認識しているのは結城さんだけということ。

菫:あ、そっか。じゃあ、わたしは実験塔の方に行く。

フジヤマ:たしかに。では、エリン人組と、アーシアン組に分けまショウ。ミーとルインさんで副会長に会いに行きマス。

クロウ:わかった。じゃあ、そっちはくれぐれも注意してくれ。

フジヤマ:注意? ホワイ?

クロウ:わからないか? 実はずっと気になってたんだ。もし、本当に生徒会長がシロだとすると……俺たちをダンジョンで殺そうとした奴は他にいるってことだろ? そして、ダンジョンの設定を変えた人物のIDが生徒会長だと俺たちに教えた人物は―――。

菫:あ……。


「……そう、生徒会副会長ヒルダ・ユンカースだ」

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