◆Middle08◆欲望と安らぎと

 そこは、部屋の半分にしか床のない、切り立った崖のある部屋だった。

 崖の下には深い闇……落ちれば助からないとわかる。

 なるべく崖に近づかず、部屋の出口に向かうことを決めた時……四人は、人の欲望の深さを思い知ることとなった。


GM:では、次のエリアに入ろう。キミたちは先ほどの二股の道を右側に進み……新たなエリアへと入った。入ってわかるが、部屋の右半分は崩れ落ちている。

フジヤマ:また崖が……っ!(笑)

GM:とはいえ、部屋の入口からまっすぐ進めば出口にはたどり着けそうだ。

クロウ:? じゃあ、まっすぐ進めばいいな。

フジヤマ:もう危険は懲りたデスね。

GM:まあ、最後まで話を聞け。(図解しながら)この部屋の右側には、わずかに崩落せずに残った部分がある。そして、その上にはなんかでっかい宝箱が。

一同:なに――――――いっ!(笑)

フジヤマ:つまりジャンプして宝箱を取れと!

クロウ:また【筋力】か! 《アスレチック》を持ったメンバーが偶然いなければ、こんな恐ろしいイベントを攻略するなんてできなかった!(笑)

ルイン:おまけに、菫さんは罠を外すのに案外向いている! 【器用】が高い!(笑)

菫:よおーしっ! 飛ぶぞ―――っ!(一同爆笑)


 四人には、この宝箱を無視するという選択肢はないらしい。


GM:え、あー……うん。飛び越えるには難易度10の【筋力】の判定に成功すればいい。

クロウ:よし。とりあえず、宝箱に近い場所までみんなで移動しよう(と、全員のポーンをMAP上で移動させる)。

GM:はい。そこで全員、危険感知だ。


 切り立った崖に立った瞬間、地面が大爆発を起こした。

 しかし、判定に成功した菫、フジヤマ、ルインは地面を踏み込む瞬間に危険を察知し、うしろに飛びのいた……その刹那。

 クロウが爆炎の中に消えていくのを三人は、見た。


一同:あははははははははははははははははははっ!(大爆笑)

クロウ:こんなとこに地雷を仕掛けるなよっ!? 超無警戒だったよっ!?

菫:(腹を抱えて大爆笑しながら)だ、ダサイ……っ!!(笑)

GM:まあ、「宝箱」と「崖を飛び越えないといけない」という事象に注意を引いて、その心理の裏側に罠を仕掛ける。トラップの基本だ。

クロウ:く、この俺としたことが……っ、にーやんに引っかけられた! くやしい!

GM:でも安心して。ここから【幸運】で難易度10に成功すればダメージを回避できる。

クロウ:【幸運】か! でもフェイト使うのやだっ!(笑)

ルイン:大丈夫、私の《プロテクション》を信じなさい!(きっぱり)

クロウ:わかった!(即答) よし、じゃあいくぞ……!(ダイスを振る)よっしゃ! ぴったり10で成功だ! っしゃあ、オラアっ! ふう、こんなことだろうと思ったぜ!

菫:じゃあ、あらためて飛び越えよう……!(と、ダイスを握る)

クロウ:待て、崖に近づくな! 《再起動装置》っていう罠があるんだよ! もう一回、同じ罠を設置し直すってやつが!

菫:ええっ!? そ、そんなのがあるんですか!?

フジヤマ:そう、あれは危険……っ! 

GM:大丈夫、今回はそんなものは仕掛けていない。

菫:じゃあ、とりあえず飛ぶよ! ロープ抱えていくね。3Dで……えい!(ダイスを振る)よしっ……合計で15! 成功!

GM:おお、あっさり成功だ。キミはぽんと軽く地を蹴って、崖を飛んだ。その姿はまるで白鳥が翼を広げて空に舞い上がったかのよう―――そしてその目はゆっくりと、スローモーションで着地地点を見据え……(←超笑顔)。

菫:待って!! 待って……っ!? ちょっと待ってぇええええええっ!!(一同大爆笑)


 菫の声は、祈りは、神には届かなかった。

 着地と同時に、彼女の足下で“カチリ”と音が鳴った。

 宝箱の周囲から、真っ白な霧のような催眠ガスが噴き出した。

 判定は、ファンブルだった。


 菫は、飛んだ先の床の上で着地と同時に深い眠りについた。

 それはそれは安らかな寝顔であった。


 それを見たクロウたち三人は、途方にくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る