◆Middle07◆ナイトメア

 いともあっさりと最初の戦闘を切り抜けた一行。

 四人の間に弛緩したムードが流れていた。

 しかし、その安堵がかりそめであると知ったのは、そのあとのことだった。


GM:さて、ゴーレムを倒すと、目の前の扉が開き……次のエリアへと入ることができた。そこは、遺跡の中でありながら石畳がくずれた、どこか朽ちた雰囲気の通路。しかも道の先は二股に分かれていた。

クロウ:ゴブリンが、どっちの道に逃げたかってことか。

ルイン:こんな時こそ、足跡を辿るのだ。

GM:正解。ここで判定に成功すればゴブリンの逃げた方向がわかる。難易度は12だ。

菫:じゃあ、やってみます! 【感知】で……えい!(ダイスを振る)やった! 10だから、14で成功です!

GM:キミは即座に、即座に左の通路が正しい道であることを見抜いた。

菫:左だよ。こっち! と進みます。

GM:OK。では、キミたちはそのまま左の通路へ向かった。しばらく道なりに進んでいくと……小さな部屋に出たのだが、その先の壁は崩れ、道をふさいでいた。

フジヤマ:行き止まりっ!?

クロウ:あれ、ゴブリンは?

GM:うん、その崩れた壁には隙間があってね? そこからゴブリンが尻をつきだし、足をばたつかせている立体映像が……。

菫:あの、かわいいんですけど……(笑)。

GM:だが、ややあって……すぽん。コミカルな効果音と共に、ゴブリンは穴の向こうに逃げていった。

一同:逃げたっ!?

ルイン:かわいいとか言ってる場合じゃなかった!

GM:ではここで、ゴブリンがなにか落としていないか、【感知】判定をしてみよう。全員判定していいよ。二段階の難易度が設定されているので、高い数値を出した方がいいぞ。

フジヤマ:(ダイスを振る)10! 達成値、16!

GM:ぶっ!?(笑)

菫:(ダイスを振る)あっ、11出ました! 16です!

クロウ:(ダイスを振る)8だから、達成値は13。

ルイン:(ダイスを振る)う、低いな。出目は5、達成値は8。

GM:では、ルイン以外は気づく。まず、10で成功した人。ゴブリンが通ったであろう抜け道の近くに小さな鍵を見つける。おそらく、隙間を通り抜けるときに落としたのだろう。

菫:あらら、おっちょこちょい。

GM:そして、13以上出した場合……三人もいるな(笑)。

ルイン:すごい疎外感を抱く(一同爆笑)。

GM:穴の近くに土を掘り返した跡があり、MPポーションが二本、大事に埋めてあるのがわかる。どうも穴につっかえるのでここに埋めていったようだ。

一同:やったあああ―――っ!!

菫:すごーいっ! よかったーっ!(拍手)

GM:特に罠とかもないから、そのまま回収してOK。

フジヤマ:ルインさんは飲んでもいいと思いマスよ。

ルイン:では、一本いただこう。(ダイスを振る)……7点。《プロテクション》と《ヒール》分、回復した。ありがたい。

GM:それではここで、小さなマスターシーンを挟もう―――それは、この建物の一室。キミたちが歓喜している光景を見ている誰かがいた。「……なかなかにやる」そうつぶやいた。

菫:……誰? 

GM:それはわからない。その人物は、おもむろに口もとに意味ありげな笑みを浮かべ、無言のまま、キーボードを叩いた。……と、ここで場面は再びキミたちの方へと戻る。ルインがMPを回復した直後のことだ。突然“ぶうぅ……んっ”という低い音がうなり―――。

菫:え、なに?

GM:“ヴィィィィィイイイイ―――っ!”突然の警報音! 直前まで部屋の映像はアトラクション風味の映像が映し出されていたのだが、いきなりそれが黒と赤を基調とした恐ろしげな映像に描き換わる!

クロウ:……なんか様子が変だ。

GM:そしてキミたちが辿ってきた通路の後方で起こる崩落音。気がつけば来た道が崩れ落ち、崖になっている。

フジヤマ:おかしいデス! どういうことか!? 来た道を駆け出して、そのまま落ちる。

一同:落ちるな―――っ!(一同爆笑)

ルイン:ぬう、私の腕に掴まれ―――っ!? がしい……っ!(←掴んだらしい)

フジヤマ:ファイト―――っ!!

ルイン:いっぱ―――つ!!

クロウ:なんでそんなCM知ってんだよっ!?(一同大爆笑)

GM:なお、崖の近くの地面に、さっきまでなかった魔法陣が浮かび上がってい……。

フジヤマ:触ってみます。

GM:フジヤマの姿がかき消えた。

一同:なに―――――――――っ!?

フジヤマ:上半身だけスッと消え、下半身だけ残って大変なことになりました。

GM:全身消えたよ!(笑)

クロウ:どうやら、俺たちの快進撃を見て、誰かが難易度の変更をしたみたいだな。

GM:そう。ふいに、周囲の壁に「Nightmare Mode」という文字が浮かび上がっている。

一同:ナイトメアモードっ!?

GM:そして流れる女性アナウンス。「(陽気な声で)ダンジョンがナイトメアモードに移行しました♪ これより先、イベントの難易度が“飛躍的に”上昇し、【HP】が0になったPCに対して“とどめを刺す”場合があるので注意してね?」

一同:待て――――――っ!(笑)

菫:と、とどめ……?

GM:ああ、ふつうPCは【HP】が0になると戦闘不能の状態になる。でも、その状態からさらに“とどめを刺す”と、PCは完全に死亡します。

菫:大変じゃないですかっ!?

フジヤマ:そ、それで? ミーはどうなったんです?

GM:キミはとある場所へとテレポートした。今、キミはある場所で呆然と立ち尽くしているのだが……そこはあとで演出しよう。視点はこのまま、残った三人の方で進めるが……キミらの選ぶべき道はふたつ。この魔法陣へ突っ込むか、崖を渡るか。

クロウ:よ、よりによってこの状況でシーフが……(笑)。

GM:なお、ダンジョンのルート構成が変わったわけではない。基本的にほぼ一本道ではある。よって、フジヤマはダンジョンのどこかに転移していると思われ―――。

クロウ:今、どういう状態なのか知りたい。

GM:ではここで、フジヤマの置かれた状況をカットインしよう。フジヤマはある部屋の、開かれた扉の前に立っている。そして、部屋の中をのぞき込んで絶望した表情を見せている。

フジヤマ:オーマイガー。助けてすみぽん―――っ!?

菫:すみぽんって呼ぶな―――っ!?

GM:なお、この魔法陣についてだが。描かれた複雑な紋様の解析に成功すれば、どこに転移したかがわかる。むろん、【知力】で判定だ。難易度は11。全員判定していいよ。

クロウ:よし……っ(と、ダイスを握る)。


 そして、この判定にはクロウとルインのふたりが成功した。

 その結果、わかったことは……先ほど戦闘を行ったウッドゴーレムの部屋の入口に転移される、という事実だった。


菫:あれ、それだけ?

GM:それだけ。今、フジヤマは、さっき戦ったウッドゴーレムの部屋の前に立っている。

フジヤマ:ミーの眼前には、再び二体のウッドゴーレムが……ひとりでどうしろと……と、呆然としています。

GM:いや、視線の先にはなにか機械仕掛けの獣が一体。キミが部屋に入ってくるのを手ぐすね引いて待っている。

フジヤマ:機械仕掛けの獣……? まさか、あれってメタルビースト!? うそ―――ぉ!? それやばいって! あいつは無理すぎるっ!!(笑)

GM:正解。ま、フジヤマは知っていたことにしよう(笑)。プレイヤーの知識がないことにしながらゲームはしにくいわ(笑)。


メタルビースト

 獣の形状を持つゴーレム系統のエネミーの一種だ。

エネミーレベルは8。先ほど戦ったウッドゴーレムが2であることを考えれば、1レベルのPCが戦ってはいけない敵である。そう、例えばウッドゴーレムの攻撃力が2D+19であったのに対し、メタルビーストが4D+36―――と言えばその強さがわかりやすいか。しかも、一回のメジャーアクションで二発の攻撃を繰り出すのである。

メタルビースト画像↓(お手数ですが下記URLをコピーして、ブラウザに入力してください。イラストを閲覧できます)

http://www.fear.co.jp/kakuyomu_gazou/09metalbeast.jpg


フジヤマ:ヘルプミー――――――っ! と、全力で声をあげます。三人がいる部屋まで、そう距離はないはず! 声、届きませんかねっ!?

GM:OK、届いたことにしよう。最低限の状況は知らせたということで。なお、さっきまでは「チュートリアルダンジョン」と表示されていたが、今は「チュートリアルダンジョン

ナイトメアモード」という文字に変わっており……。

フジヤマ:チュートリアルでナイトメアとはどういうことなのヨ!? どんなクソゲーだよこれは……ッ!!(一同爆笑)

GM:そこで陽気に流れるこんなメッセージ。「キミの実力ならいけるはず! さあ、戦ってみよう!」

フジヤマ:無理無理無理無理―――っ!?(爆笑)

クロウ:(少し考えて)……そうか、なるほど。この魔法陣に乗ればゴーレム部屋の入口に。崖を越えればゴーレム部屋の出口から続く二股の場所に戻れるってことだ。

GM:そのとおり。なお、メタルビーストは部屋から出ることはない。

クロウ:なら、崖を越えれば俺たち三人は先に進めるな。

菫:クロウくんっ!?

フジヤマ:ちょっと―――っ!?(笑)

ルイン:待てよ。さっきの部屋、戦わずに出口に辿りついてもOKだったはず。

フジヤマ:なるほど。しかしですね……あいつの速さ(【行動値】)は半端なかったはずでして……ミーが部屋に入った瞬間に殴られてダンジョンの赤い染みになる自信がありマス。

菫:やだあっ!?(笑)

ルイン:我々が出口の側に行って、《プロテクション》しつつ逃げてくるのを助けるか?

フジヤマ:無理―――っ! たしかあいつ、《連続攻撃》持ってる―――っ! 連続で殴られると《プロテクション》はどっちかにしかかけられない―――っ、赤い染みに―――っ!

クロウ:(少し考えて)……だめだ、手詰まりだ。少なくとも、ここじゃ状況がわからない。ともかくあの部屋の方に行こう。

菫:じゃあ、魔法陣?

クロウ:いや、全員が部屋の入口に行くと手詰まりの可能性がある。危険だが崖越えで行く。


 ―――その判断は正しいと言えた。

 崖を越えるジャンプの判定(【筋力】)はあったものの、最初に【筋力】の高い菫が崖を飛び越え、ロープを渡すことで難易度を下げることに成功。

 残るふたりも、かろうじて無傷で崖を渡ることに成功した。

 そして来た道を戻り、メタルビーストが鎮座する部屋を挟み、三人はフジヤマと再会したのであった。


クロウ:フジヤマ! 走ってこっちに来れるかっ!?

フジヤマ:無理デェ―――ス!! 無理いいぃぃ―――っ!!(一同大爆笑) マジ無理ぃ!! もう、エセ日本語とかしゃべってる余裕もない!(一同爆笑)

菫:みんなでかかれば勝てたりは……。

フジヤマ:あ、こいつは範囲攻撃を繰り出してくるので、みんなまとめて赤い染みです。

菫:ひいぃ~!? 中に入ったら皆殺しにされる~!

クロウ:なにか、ここをクリアする手掛かりはないか。ナイトメアモードと言いつつ、かなり無理めなエネミーが配置されてるってことは、なにか他に解決手段があったり……。

GM:(……お) ではここで全員、【感知】の判定をしてもらおう。

フジヤマ:(ダイスを振る)げっ、目が低い! 9しかないデスよ。もう怖すぎてダメデス。

ルイン:(ダイスを振る)う、うーむ。【感知】は得意ではないな。8しかでていない。

菫:(ダイスを振る)あっ、けっこういいよ。13です!

クロウ:よっ!(ダイスを振る)お、11だ! 達成値16!

ルイン:アーシアンは優秀だ!

GM:10を超えた人はわかるね。フジヤマから見てこの部屋の右の壁に……なにかフタのようなものがあることに気づく。そこには、壁の色よりちょっとだけ濃い文字で……「緊急

停止装置」と書かれているな。

一同:おおっ!?

ルイン:おお、希望が見えた! フジヤマ、全力で走って停止スイッチを押すのだ!

フジヤマ:いや、だからあの……これ、入った瞬間に戦闘ラウンドで進行しますよね? 行動値はメタルビーストの方が高いですよね? 入った瞬間、赤い染みになります。

菫:う、ええぇ……!? じゃあ、【HP】の多いわたしが行く……? 【HP】満タンだから、殴られてもたぶん大丈夫だと……。

GM:(超笑顔で)……ホント?

菫:あうっ!? わ、わかんない! 一発で死んじゃうかもしれない! 怖い!(笑)

クロウ:(しばらく考えて)いや……手段はある。俺たちが出口側に来てよかったな。

一同:おおっ!?


 クロウが提案した作戦はこうだった。

 まず最初にフジヤマが部屋に突入、戦闘ラウンドを開始する。

 最初の行動はメタルビーストは、部屋に入ったフジヤマのエンゲージに移動するのは確定だ。移動を確認したら、残る三人が部屋に入って、停止装置まで走ってこれを作動させるのである。


フジヤマ:あの、それはつまり……ミーを囮にして、メタルビーストに食われている間に停止装置を作動させるってことでは……。

クロウ:そのとおりではあるが、それしかない。でも、お前が一撃で倒されたら、メタルビーストは俺たちの方に突っ込んでくるんだ。

ルイン:あの、停止装置のフタを開けるのにメジャーアクションはいります?

GM:フタを開けるのはマイナーアクションでOK。装置を起動するのには必要だ。

クロウ:このフタに鍵がかかっていたら最悪だ。1ラウンド目で三人のうちの誰かが鍵開けに成功しないと……2ラウンド目の頭でビーストがこっちに突っ込んできて範囲攻撃だぞ。その場合は、三人のうちの誰かが停止装置を押す奴をかばうしかない。

ルイン:なるほど、それなら確実にスイッチは押せるか。

クロウ:最悪全滅だが、これしかない。やろう!

菫:うん!

フジヤマ:では、部屋に……入るっ!

GM:では、それをトリガーにメタルビーストは動き始めた! それでは戦闘を始めよう!


       *   *   *


●第1ラウンド

▼行動値

メタルビースト   14

フジヤマ      12

菫         8

クロウ       8

ルイン       5

戦闘図版↓(お手数ですが下記URLをコピーして、ブラウザに入力してください。戦闘図版を閲覧できます)

http://www.fear.co.jp/kakuyomu_gazou/08M07_R01-01battle.jpg


フジヤマ:うおっ、2足りなかった! しかし、なんら問題ないのデス! クロウ様の立てた作戦なら絶対クリアできるはず! かかってきなさい、ミーは白い錠剤の力がある限り負けないのデェス!


 四人は、一斉に予定どおりの行動を開始した。

 予想通り、ビーストは最初に部屋に入ったフジヤマめがけて突っ込む。そして、その鉄の爪をもって一閃した。


クロウ:頼む、なんとかよけて少しでも時間を稼いでくれ!

フジヤマ:おう!(ダイスを振る)……失敗!(←なぜかドヤ顔)

GM:(ダイスを振る)……ダメージは55点。

フジヤマ:赤い染みになりました。

菫:い、いやああ―――っ!? わ―――ぁっ!?(一同大爆笑)

クロウ:問題ない、ここまでは予想どおりだ。では、残りの三人も順番に部屋に入る!


 最初に飛び出したのはクロウだった。

 一気に停止装置の場所まで駆け込み、設置されたフタに手をかける。


クロウ:たのむ、鍵とか罠はやめて……っ!(笑)

GM:うん、罠もなければ鍵も掛かってない。フタはあっさり開いた。

クロウ:中身を確認! スイッチはあるか!?

GM:スイッチとおぼしきものはある。それは立方体の不思議な箱だった。キミは、その箱を地球において見たことがあった。ルービックキューブだ。

一同:ルービックキューブぅうううううううううっ!?(一同爆笑)

GM:もちろん、各面はぐちゃぐちゃに色が混ざってるわけで―――。

クロウ:つまりあれか!? これを解かないと停止しないのかっ!?

GM:そうだ。解くためには【知力】と【器用】で判定をしてもらおう。【知力】で判定に成功すれば、【器用】の判定に挑むことができる。難易度は両方10だ。

菫:いや、【知力】って……クロウくんしか成功しないんじゃ……(笑)。

赤い染み:成功させて――――――っ!?

クロウ:おもしれえ、この俺にゲームやパズルで挑んでくるとはな……っ! 闘志が湧いてくる……! まず【知力】判定!(ダイスを振る)……合計で15! 成功!

赤い染み:そんな無造作にっ!? フェイトを使うか検討くらいしてもいいかと!(笑)

GM:クロウはキューブを見た瞬間、六つの色がどう動かすと組み合うのか一瞬で見抜く。

菫:すごーいっ!

クロウ:よし、次は【器用】! フェイトを1点使って3Dにする。3D+3!(ダイスを振る)よし、11だから14で成功!

GM:迷いがねえな!(笑) クロウはキューブを両手で取って、超高速で色を組み替えていく。そしてわずか一〇秒ほどで……六色をそろえることに成功した。


 その瞬間、“ぶううぅん……”と唸るような音が部屋に響き―――。

 メタルビーストは、そのすべての機能を停止した。

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