◆Opening04◆結束、それは血統の力

 他国が巨大な力を持つゆえの恐怖は、国家間に牽制という名の調和をもたらした。

 大学都市オーカーに秘匿される、異世界の技術と知識には、それだけの価値がある。

 各国はこぞってこの都市に外交官や貴族の子弟を送り込んだ。

 ルイン・シュレディンガーもまた国家の威信を示すべく、この街にやってきた貴族だった。

 だが、彼には国よりも大事なものがあった。


GM:オープニングのラストは、ルインのシーンだ。今、キミは大学都市内にある一室……各国の貴族の子弟たちが集まる部屋にいる。ここは大学都市の中でも特別扱いされた……言わばエリートたちが集う場所で、他とは別棟になっている。

フジヤマ:真っ赤な絨毯とか、シャンデリアとか、お付きの人が待機する部屋が隣にあったりするにちがいない。

GM:そうそう。今日もこの特別室に、高名な家の子弟たちが中心となって組まれたギルド“ブラックロータス”のメンバーが集まって円卓を囲んで席についていた。

ルイン:幹部会とかかな。なお、私はガートルード様の右腕として参加している。

GM:ここは各国の代表が集う会だ。ルインはその中でも末席の扱いだが、その実力は確かなもので一目置かれていた。

菫:かっこいい!

ルイン:各国の利害が一致するように話し合いをしたりする、と。

GM:メンバーが談笑していると……「ごめんね、待たせちゃった」そんな言葉と共に、少し慌てた様子で入室したのはギルドリーダーである、“紅髪の戦姫”ガートルードだ。

クロウ:意外に気さくだった。

ルイン:これはこれは、ガートルード様。ご機嫌麗しゅう。

GM:「ありがとう、ルイン君。さて、みんなそろっているわね? そろそろギルド対抗の闘技大会が近いけれど、みんな、準備はどう?」

ルイン:もちろん、万全です。とりあえず、私は“聖都”ディアスロンドの特待生だったことにでもしておこう。

GM:けっこういいところの出身だ(笑)。「……それはなにより。そろそろ大会に出場するメンバーを選出しなきゃいけないんだけど」

ルイン:この“ブラックロータス”の中から、メンバーを選出するということ?

GM:そう。“ブラックロータス”の代表としてトーナメントに出るということ。すなわち、選に漏れた国は少しばかり恥をかくわけで……。

ルイン:……ふふふ。少なくとも一名は誰が選ばれるか、わかっていること。くいくいっ、と自信ありげに中指で眼鏡をもちあげる仕草をする。

GM:ガートルードが出場することだけは決まっていて、あと三名必要になるわけだが……。

ルイン:ガートルード様の右腕である私が出るべきだろう。

クロウ:(メンバーになって)「ならば、左腕たる俺も!」

フジヤマ:(メンバーになって)「いや、ガートルード様の右足と言われたこの自分が!」

GM:ガキの言い争いか!?(笑) 彼女はバンと机を叩いて言う。「騒ぐのをやめて」

ルイン:は……!

GM:「みんな、各国の代表としてここへ来ているのだから、自覚を持って! それぞれ思惑があるのは承知しています。それでも、三人だけを選ばなければならないから、今回は実地訓練で決めようと思うの」

ルイン:実地訓練、と言いますと?

GM:「本日の夕刻から夜明けまで……その間に、どれだけのエネミーを狩れるか、その数を競ってもらうわ。みんな、大切なメンバーだから公正に、ね」

ルイン:あ、あの……私はアコライトゆえ……攻撃力がないわけで……(笑)。

GM:「……大丈夫。三名一組で競ってもらうから」

フジヤマ:(メンバーになって)「……ガートルード様、おっしゃることはわかりますが、実地訓練の参加者も選定すべきでは。例えばルイン殿は新米ですし、それに家柄の方も……」

ルイン:い、家のことは言うな!

クロウ:なるほど、ルインは没落した貴族で、でも実力はあるから妬まれていたり、低く見られていたりするんだな。

GM:そういうこと。貴族を名乗ることもおこがましい……ガートルード以外はみんなルインを疎ましく思っている節がある。「はい、そこ! 言い争いしない! 言ったでしょ? みんな大事なメンバーなんだから、家柄とかそういうのは関係なし。公正公平に決める」

クロウ:なんかいいな、このガートルードって子。気さくだし、まっすぐで親しみやすい。

GM:実際、メンバーからは好かれている。彼女がいなければ、各国の思惑・思想を持ったこのギルドをまとめあげるとか不可能だ。

ルイン:すばらしい。私が仕えるに値するお方だ。

GM:「では、出立は今日の一八時とします。それまでに準備を整えておいてね」

ルイン:ふふふ。準備なぞ、すでに終わっております。冒険者たる者、いつでもすぐに戦えるよう、心がけることが―――。

GM:「じゃ、一八時までに好きな人同士でチームを作って報告してね」

ルイン:待ていっ!?(一同大爆笑)

フジヤマ:そ、その方式はどうかと……っ!?(笑)

GM:「なんで?」

クロウ:素かよ、この人っ!?

GM:「ん? だって人と人が交流して、互いを信じ合う……戦いにおいては絆というものも大事だから」(一同爆笑)

クロウ:ガートルードさん、天然ボケでなければSだな……(笑)。

ルイン:な、なんて残酷な……っ!(わなわな)

クロウ:ガートルードさんは、人の気持ちがわからないのか!?(笑)

ルイン:ふ、ふふ。ガートルード様は“あぶれる”という経験などしたことがないのだ……。

GM:むしろ、希望者がいっぱい来すぎて困るくらいだね。

ルイン:あぶれる人がいるなど、想像もできないのだ。だが、現実は、そんな明るい子供たちばかりではない……ばかりではないのだっ!(笑) みんなが楽しそうにチームを組んでいく中、私はひとり……。

菫:(ギルドメンバーになって)「ガートルード様! ルインくんがひとりぼっちです!」

ルイン:や、やめろ……。

GM:「ちょっと! 冗談でもそういうのはやめて!」(一同爆笑)

ルイン:傷口に塩――――――っ!!(笑)

クロウ:おい、ぼっちな属性が俺とかぶってきたぞ!

GM:では、そんなところでシーンを切ろう!

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