◆Opening03◆それの半分は優しさでできていたりする

 未知なるものへの興味は、いつしか欲求へと変わった。

 きっかけは、幼き日に受けた痛み。

 頭頂部をゆっくりノコギリで押し引きするような、それでいて頭の内側から発せられるもの。痛くて、苦しくて、でも指を頭に這わせてもその痛みには触れることもかなわない。

《ヒール》も《プロテクション》も意味をなさないこの痛みを打ち砕いたのは、異世界の白い錠剤だった。


GM:では、次……フジヤマのシーンにいこう。

フジヤマ:OH! ミーの出番ネ!

菫:それにしても他人のシーンを見ているのって面白いですね! 茶々入れながら聞いているのってすごく楽しい!

クロウ:……っていうか、にーやん!(笑) トラックが部屋に突っ込んできて異世界に飛ばされるってどーよっ!?

GM:“異世界トリップもの”において、トラックが原因で異世界に転移するのは大事だ。

クロウ:そ、そうなの……?(笑) つーか俺、どうなったの?

GM:まあ、それに関してはまたあとで(笑)。さて、フジヤマのシーンは……エリンディル大陸西方のある小さな街から始まる。

フジヤマ:わかりやすく「アリアンロッド」だ!(笑)

GM:(笑)。フジヤマは、この大陸のどこかの山中にある大学都市オーカーからのスタートとなる。“地球”という名の異世界に興味を抱いたキミは、この街にやってきてのち、さらに興味を深め―――。

フジヤマ:いつか、年始にフジヤマに登り、茄子なるものを食べつつ鷹に乗って祝い事をするというイベントを一度やってみたいものデースっ!?

菫:どこかすごくまちがってるような……(笑)。

GM:さて。オーカーはひとつの独立した街であると同時に、その運営基盤は日本における大学のイメージに近い。ただ、学年によって特定のカリキュラムがあるというよりは、学びたいことを専門のゼミに通って学ぶ……そんな方式で運営されている。

クロウ:学年よりは、キャラレベルやクラスで管理されていそうだな。高レベルになれば、参加できるゼミのバリエーションが増えるみたいな。

GM:だね。さて……異世界や“科学”なるものを学ぶ日々が続く中、今日もお昼の時間がやってきた。フジヤマが、学食にいると……。

フジヤマ:あー、そこのキミ? 知っていマスか? おにぎりとは、鬼を殺したとされることを語源とした恐るべき食事なんデスよ!

菫:そうなのっ!?

クロウ:いやいやいやっ!(笑) 堂々と間違ってることをそれっぽく言うなよっ!?(笑)

GM:だが、この街で学ぶエリン人は素直に感心して聞くことも多い。お昼の時間には、異世界に興味を持った人たちがフジヤマを囲んで談笑することも珍しくない。

フジヤマ:HAHAHA! 他にも、地球ではうかつなことを言うと、首にはめている首輪が爆発するんデスよ。「士道不覚悟」によるハラキリと呼ばれているアイテムで……。

菫:腹切りなのに首輪なの!?(笑)

GM:言ってることが正しいかどうかはともかく、面白いのは間違いがない。そりゃお昼時には拍手喝采、人気になるわけだ。

フジヤマ:ふふふ、なんでも聞いてくだサーイ!

GM:と、いつものようにそんな話をしている時だ。「……ああ、異世界って言えばさ。お前が興味持ちそうな話があるぜ」傍らの学生がそんなことを告げた。

フジヤマ:お?

GM:「……昨日、野外講習を終えて、街に戻る最中にさ、妙なものを見たんだよ。もしかしてあれ、現代地球人の服なんじゃないかって。ちょっと見てくれよ」そう言いながら彼は紙とペンを取って、さらさらと絵を描き始める。

フジヤマ:ほう、それはいったい。

GM:その生徒が描いた絵はあまり上手いものではないが……特徴は捉えている。なにか厚手のコートと、その下にひらひらふわふわの服を着込み、妙に丈の短いスカートをはいている女の子の絵だ。そのふわふわな服の色は、鮮やかなオレンジ色で……。

菫:オレンジ!? ひらひらふわふわ!? みーちゃんっ!?

フジヤマ:OH!? ゲイシャっ!?

一同:ちげえっ!(笑)

ルイン:そんな服だけなら、こっちの世界にもありそうな?

GM:「いや、明らかにちがうんだよ! もっとふわふわというか……ちがう文明と技術でデザインが作られているというか……わかるだろう? この感覚!」

フジヤマ:わかりマス! それこそがゲイシャ! 言うなればジャパニーズ・アイドル!

GM:……アイドルと芸者って同じ認識なのか……(笑)。

フジヤマ:フジヤマの中では同じ扱いです。で、そのアイドルをどこで見たと?

GM:「ディアスロンド北側の山奥」

フジヤマ:現代地球人がひとり、この世界に放り出されるとかとてもデンジャラス! しかし、ゲイシャとは、バードとダンサーを極めることによってたどり着くことができる大いなるクラス。あまり危なくないかもしれない。

GM:「でもその女、後ろ手に縛られてフォモールたちに担がれていたんだ」

フジヤマ:それを先に言え―――っ!? (素に戻って)フォモール! 妖魔じゃねーか! 

GM:「……危害を加えるというよりは、丁寧に扱っているように見えたけど」

フジヤマ:後ろ手に縛って丁寧もなにもないわ!(笑) 人間がフォモールにさらわれたとなれば一大事! それではミーが偵察に行ってこよう。ティーチャーに伝えておいて!

GM:「OK。でもひとりで行くのか? ……キミはサムライだな」

フジヤマ:イエース! これぞ士道!

GM:「敵前逃亡は打ち首だっけ?」

フジヤマ:イエス! ハラキリ!


 会話がかみ合ってないのは気のせいである。


フジヤマ:とにかくそっちに向かうデェス! 誰か一緒に来てくれないものかっ! ちらっちら……っ(と、ルインのプレイヤーを見る)。

ルイン:いやその、こっちはまだオープニングにも入ってないんですが(笑)。

GM:(笑)。では、フジヤマが自分の部屋にとって返して冒険の準備を始めた……なんてところでシーンを切っておこう!

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