◆Preplay03◆仕様がいろいろあるんです
『アリアンロッドRPG 2E』はデータに溢れかえったゲームである。
発売してから五年―――数多くのサプリメントを出す機会に恵まれた。
ここ最近では、最低でも基本ルールブック二冊に『スキルガイド1』に『スキルガイド2』『エネミーガイド』、『アイテムガイド』『アイテムガイド2』を用意してセッションに挑む。しかし今回は……。
きくたけ(以下、GM):では、セッションを始める前にまず今回の仕様を発表しておこう。
浅見:仕様?
GM:うん。今回まず基本として……二〇一六年三月に発売される『アリアンロッドRPG2E 改訂版①』『同②』をサポートするためのリプレイになる。まあ、この改訂版ではどういう遊びができるかを示そうってわけだ。
Oはた:初めて『アリアンロッド』に触れる人にも優しい本になると。
GM:まあ、そうね(笑)。ゆえに今回のセッションにおいて、プレイヤーはサプリメントの類いは一切使わない……つまり二冊の改訂版ルールブックの内容のみを使用可能とする。
浅見:おー、つまりデータの山をひっくり返さなくてもいいってことだ?
GM:もともとこのゲームは、二冊の基本ルールブック……いや、実は一冊だけで遊べるようになってるからな。それでも選べる種族やクラスはけっこーあるぞ。
庄子:リーズナブル(笑)。
GM:リーズナブルです! んで、すでにご存じかと思うけど……この改訂版では“現代地球人”……すなわち“アーシアン”という新種族が加わっている。今回は、PC①と②にこのアーシアンを担当してもらおうと思う。
浅見:よくわかった。つまり、現代科学の力を使ってエリンディルで無双するんだな。
GM:別に無双しなくてもいいよ!(笑) でもまあ、そういうキャラにするのは全然OKではある。基本的な立ち位置としては、現代地球で暮らしていた人が、なんらかの形でエリンに迷い込み、ここで冒険するって話になる。
庄子:なんらかの形?
GM:そう。この改訂版では大きく分けて三種類があって……どれを選ぶかによって得られるスキルが変わるんだわ。
浅見:へー。
GM:まあ、これについてはあとで順番に解説しよう。ではまず、今回予告の読み上げからいこうか! えー……(と、シナリオに視線を落とす)
●今回予告
異界の門は開かれた。
学校に通い、変わらない日々を繰り返す少女に、少年に訪れたのはまるでゲームの世界のような冒険譚だった。
現代という世界に帰るため、このエリンという異世界で行方不明になった親友を探すため……今、ふたつの世界の英雄候補生たちが、ここに出会う―――。
『アリアンロッドRPG 2Eリプレイ・ストレンジャーズ』
第一話「冒険者になるための一〇の知識」
冒険の舞台が、キミを待つ!
Oはた:一〇の知識! いいですね。現代人が、ダンジョンは右手を壁につけて進めば絶対に迷わないとか、アコライトから殺せとかそういう知識を学ぶと。
庄子:あの、行方不明になった親友とか不吉な言葉が……(笑)。
GM:うへへ、それに関してはハンドアウトを聞いていただこう! 最初はPC①……これは庄子さんにお願いしたい!
●PC①用ハンドアウト
コネクション:響みさと 関係:親友
浅見:みさと……っ!
庄子:みーちゃんっ!(笑)
浅見:すごくリアルに想像できる!
GM:いやその、まだ読み上げの途中だからツッコミはちょっと待って……(笑)。
庄子:みさとと聞いて、つい!(笑)
GM:では、続き。えー……。
PC①には夢がある。
学校の仲間や親は、「いや、あんたの才能はそっち方面じゃないから」と何度も言われるが……なんとしても叶えたい夢だ。
誰もがキミの夢を聞くと苦笑いする中、親友のみさとだけが心から応援してくれる。だから、彼女が持っているという夢も応援してあげたい。夢は、人が生きるための糧だから。
そう、秘めたるふたりの夢とは―――。
庄子:夢……。
Oはた:ああ。イタリアでマフィアのボスになるとかですね。
GM:ちげえ(笑)。PC①になにか夢があると、キャラ付けをしやすいかなーと。最初、親友と夢を語り合うシーンから始まることになる。
庄子:みーちゃんと夢を語り合います!
Oはた:でも今回予告によると、親友は行方不明になって大変なことに。
庄子:さよなら、みーちゃん……。
浅見:そこは助けようよっ!? なんで笑顔なんだよっ!(笑)
GM:わはは(笑)。なお、PC①の種族は今回、アーシアンの[召喚]を選んでほしい。
庄子:アーシアンの[召喚]?
GM:そうそう。アーシアンは大きく三種類に分類されるんです。いかなる理由でエリンにやってきたかを表わし、キャラ作成時にどれかひとつを取得することになります。
[召喚]……何者かの意思で力を与えられ、エリンへと召喚されたアーシアン。
[事故]……なんらかのトラブルにより、エリンへと転位したことを表わす。
[転生]……現代地球人だった者がエリンに生まれ変わったことを表わす。
庄子:つまりわたしは、誰かの意思によってエリンに召喚されるってことですね!
GM:うん。この三つのうち、どれを選ぶかでもらえるスキルも変わるよん。[召喚]の場合、一シナリオに一回、ダイスロールに+2Dするのと……現代アイテムがお安く買える効果のスキルだな。
浅見:なるほど、そこはヴァーナやドゥアンと同じだ? ヴァーナが、ウサギと狼と猫に分かれるみたいな。
GM:そういうこと。なお、今回は仕様のひとつとして……PC①は、サンプルキャラクターを使ってもらいます。
庄子:サンプルキャラクターって、ルールブックに用意されてるキャラのことですよね。
GM:そうそう。ゲームをすぐに始めるための、出来合いのキャラデータですな(……と、絵を見せる)。
庄子:かわい―――っ!
GM:今回は、キャラ絵もそれをベースに想定してくださいませ。作ったキャラ設定によってデザインや表情、どっか変えるかもしれないけど。
庄子:わかりました!
GM:では、次は浅見のPC②!
●PC②用ハンドアウト
コネクション:エリンディル大陸 関係:人生
キミは、エリンディル大陸を闇より統べる王だ。
「漆黒の魔術師」……人々は畏敬の念を込めてキミをそう呼び、その名は世界に轟いていた。
もはやこの世界に敵などはいない。
浅見:おおっ!? やべえよっ、俺最強!? ちょっと張り切っちゃうよっ!?
Oはた:浅見さんがすごい笑顔に!(笑)
浅見:この大陸には多くの国がある。だが、俺の実力をもってすればどの国の騎士団も、冒険者も俺に勝つことはできない! 実質、俺がこの世界の最強存在ってことだな! どこの国も俺には逆らえない! 滾る! いい気持ちになってきた!
GM:うはは。では、ハンドアウトの続きを読み上げよう。
そう、敵はいない。いるとするならば、唯一の王であり的な英雄であるキミに嫉妬し、その地位からひきずり下ろそうとするアンチユーザーどもだ。
浅見:アンチユーザー?
キミは、奴らとの最終決戦の場にひとり乗り込んだ。
そう、世界を席巻する大ヒット作「アリアンロッドMMO」の頂点に立つべく。
浅見:ゲームじゃねぇかぁああああぁぁぁああぁぁあああぁぁぁあっ!?(一同大爆笑)
一同:わははははははははははは!(笑)
浅見:つまり俺は廃人ゲーマーかよっ! 超わかりやすいよっ!
GM:そうだろうそうだろう。お前、『ラグナロクオンライン』では廃人級だったもんな。そこをイメージしてもらえばだいたいまちがいない。
浅見:よくわかった。俺は、そのゲームの知識を活かしてエリンでの冒険を、ゲーム感覚で楽しむ奴にしよう。どうやって転移するのかはしらんけど!(笑)
GM:ああ、そこに関してはハンドアウトの続きがある。
―――ところでゲームを満喫していたその日、キミの実家に向けて爆走している一台のトラックがあった。
浅見:なんだよそれはっ!? 危険な香りしかしねえよっ!?(一同大爆笑)
GM:異世界にトリップするのに、トラックは大事な要素なんだよ。では、次はOはた!
●PC③用ハンドアウト
コネクション:現代地球 関係:憧憬
キミは、エリンディルに生まれながらにして「げんだいちきゅう」という世界に憧れていた。いつか、その世界に行きたい……常々そう思っていた。
秘匿された現代人の街“大学都市”オーカーに身を置くキミの耳に、捨てがたい情報が入った。“聖都”ディアスロンド北側の山地で、見たこともない服をまとった女性がひとり、ふらふらと歩いていたという目撃情報を。
Oはた:Oh! ワタシ、チキュウというセカイにアコガレテマァス! いいなそれ、とてもやりやすい。地球かぶれのエリン人にしよう。
GM:やりやすいのはいいが……なんで口調がエセ日本語口調……。
Oはた:(少し考えて)……現代人の知識を手に入れたい、現代人とお近づきになりたい……いろいろな夢を持っていて、異世界への鍵を探しているみたいな……(くわっと目を見開いて)……フジヤマ、ゲイシャ! スキヤキ食べたいデェス!?
一同:まちがってるまちがってるっ!(笑)
浅見:ところで、この大学都市ってなに?
GM:それはエリンのとある場所に存在する、アーシアンたちの街のこと。数年前、地球のとある大学のキャンパスが丸ごとエリンに転移……そこを中心に形成されたという街だ。
浅見:ああ、いくつもの学園があるんじゃなくて、キャンパスごとなのか。
GM:うん。なお、この街はある山の奥にあり、基本的にはエリンの人たちから秘匿されている。もっとも各国のトップはこの街の存在を知っており、スタッフを派遣している。
浅見:各国? 互いに牽制してる感じなのかな。
GM:おそらくね。他国が特殊かつ強力な技術を持つのは、避けたいだろうからね。一応、この都市は自治を確立しており、各国と協定を結んで物資の供給も受けている。アーシアンの街ではあるが、エリン人も住んでいるよ。
Oはた:では、そこで異世界の知識に触れ、魅了されたわけですな。あっしは。
GM:きっとね(笑)。なお、この街ではなんらかの理由で地球から転移してきた人たちを保護し、このエリンという世界の常識や技術を教えることを旨としている。なにも知らず、異世界に放り込まれたら生きていけない……あるいはこの世界にとって脅威になるからな。
庄子:あの、ところで……見たこともない服をまとった女性って……みーちゃん?
Oはた:うへへへ、その女がキミの親友かどうかはまだわからないが、保護はこのワタシに任せていただこう。ぐへへへ。
庄子:そのへんな笑いはなんですかっ!?
GM:Oはたのそーゆーとこにツッコミを入れたてたら負けです。では、次はPC④!
●PC④用ハンドアウト
コネ:“紅髪の戦姫”ガートルード 関係:主従
キミは、大学都市オーカーにおいて、各国貴族の師弟が集まるハイソサエティ・ギルド“ブラックロータス”のメンバーだ。
ギルドマスター・ガートルードの旗の下、ここに属するキミには誇りがあった。近く開催されるという、学園内トーナメントの代表になることこそ、キミの心を満足させてくれる……そしてその資格が自分にこそあると、信じていた。
丹藤:気のせいでしょうか。PC④だけゲームがちがうように見えるんですが……(笑)。
Oはた:ふつうのファンタジー(笑)。
丹藤:しかしハイソサエティ・ギルドとは……。
GM:ブラックロータスは、この大学都市の中でも特別な存在なんだよ。エリンの各国は競ってこの街に貴族の子弟を送り込んでいて……。
浅見:ああ、この街での実権を握るためとか、他国の監視的な意味で。
GM:どういう思考なのかはそれぞれだろうがね。ただ共通して言えるのは、このギルドのメンバーは大学都市への帰属意識より、出身国の代表としてここにいるという考えの方が大きいってこと。それゆえか、この世界の新参者であるアーシアンを低く思っている者や利用したいと思っている奴もそれなりに多い。
丹藤:なるほど。このガートルードさんっていうのは?
GM:ブラックロータスのギルドマスターにして、メンバーのアイドル。
一同:アイドルっ!?
GM:あ、いや、カリスマ的な意味でね(笑)。ともすれば出身国の思惑によって対立しかねないメンバーをひとつにまとめ上げている人物だ。
丹藤:では、学園内トーナメントとは?
GM:この学園には闘技場があってね、定期的に武闘大会が開催されているんだわ。この街で学んだことを示す証として。住人たちはこの大会で勝利すべく、切磋琢磨する。
Oはた:それはそれとして……「―――信じていた」という一文が気になるわけで。
丹藤:……もう嫌な予感しかしない(笑)。
Oはた:えーと、クラスの配分はどうしましょう? PC①がウォーリア、PC②がメイジで確定だから……。
GM:ああ、PC③と④でシーフとアコライトを分担してくれればいいよ。キャラ作成の仕様は、改訂版ルールブックのみ使用、キャラクターレベルは1ということだけだ。
Oはた:了解です。じゃあ、キャラデータを作るので庄子さんと浅見さんは、少々お待ちを。えー……丹藤さん、シーフとアコ、どっちやります?
丹藤:どっちでもいいけど、ハンドアウトの雰囲気的にアコライトかなあ。
Oはた:では、こっちがシーフにします。さて、どんなシーフにするか……PC①がウォーリア/シーフだから、そことちがった機能を持たせたい……すると組み合わせる候補になるサポートクラスは―――(と、考え込む)。
庄子:ルールブックも見ないで……っ!?
GM:ははは、Oはたは我が社のデータマンですからね(笑)。担当するゲームのあらゆるデータが頭の中に入ってます。1レベルのキャラなら、作るのに三〇分もかからない。
庄子:おお、すごいっ!(笑)
Oはた:うっへっへ、おまかせあれ。すでに何パターンか想定済みです。
浅見:三〇分はすげえなあ。俺だったらデータをひっくり返して悩むから……(笑)。
GM:ともかくちゃっちゃっと作って、時間があまったら丹藤くんのPCデータのアドバイスでもしてあげて!
Oはた:おっす!
―――そしてなぜか二時間が経過した。
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