第20話 キルナの独白
──この人は何を言っているのだろう。
──あの男と戦うつもりだろうか。でもきっと無理だ。
──あの男は、本当に真面目だ。
──人として狂ったところもあるけれど、それだけは言える。
──そうじゃなかったら、ああ何度も血を吐くほど魔法を勉強したりしない。
──初めてここに来た時には全くといっていいほど扱えなかった魔法も、今ではあんなに多彩に、自由に使える。
──あれ……。そういえば私はどうやってここに来たのだっけ? 思い出せない。
──誰かと一緒にいた?
──はじめから一人だった?
──そんなことを考えてたら屋敷の中が火でいっぱいになってしまった。
──体に力が入らないし、自力じゃ逃げられないかな。
──そういえばこの人、さっきは私を抱えてどうするつもりだったんだろう? 誘拐?
──ああ、私は『道具』だから、泥棒が正しいよね。
──でも、この人とあの男、なにか違う。
──あの男に持ってない何かをこの人は持ってる。
──これはきっと親近感ってやつだとなのかな。今まで感じたことのない感情だ。
──でもこの人、どこかで会ったっけ?
──懐かしいような、うれしいような……。
──あの夜、この人と目が合ったのを覚えてる。
──なんだろう、この感覚は。
──包まれるようで暖かい。
──もし選べるなら、私はそちら側に行ってみたい。
──この人に付いて行ってみたい。
──私にそれが出来るのならば。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます