三次元女子と同居なんて嫌だ!
「三次元先生、なんですか?話って」
「三次元先生って呼ばないの!私の名前は、瀬野日和!瀬野先生って呼びなさいっ」
「まじですか......」
「まじです。それと他の女の子も名前で呼ぶこと!」
「えー......」
三次元女子と関わりのない俺にそれは鬼畜すぎるんだけど!?
「それで話っていうのは?」
「あー。その事なんだけどね」
どんな事言われるんだろうか。今日早速クラスでやらかしたし退学とか?いやそれは流石にないか。
「寮の事なんだけど、実は伊奈日さんと同じ部屋になったの」
Why?ryou?エイゴムズカシクテワカラナイ。
「いいかな?」
「いいもなにも......向こうの許可はとってあるんですか?」
「うん。大丈夫だって」
まじか......。親父が部屋の事なんも言ってなかったのは寮で暮らすからって事か......。
三次元女子と同じ部屋で暮らす......。それも俺の彼女と嘘をついたやつと......。
いや、待てよ?別に関わらなければいい話じゃないか!これまでと同様に!所詮は三次元女子!
「俺も大丈夫ですよ」
「本当!?」
「は、はい」
お願いだから離れて!三次元女子に近寄られてもなんも嬉しくないから!
この想い君に届け!
「あ、ごめん嬉しくてつい......」
そう言って瀬野先生は二歩後ろに下がった。
届いた!俺の想い届いた!まさか俺ってエスパー?
「い、いえ。それで場所教えてもらいますか?」
「教えるもなにも学校の前だよ?」
「まさかここだったとはな......」
堤ヶ丘寮と書かれた建物の入り口に立っている。
ここ車で通った時、すげーとは思ったけどここが寮だったとわ!てかここ寮っていうかただの高層マンションじゃねえか!
「あら。たかし様ではありませんか。どうなさいました?」
「あ、えっと......」
この話し方どこかで聞いた事あるような......あ!「ある日突然俺の日常がラブコメゲームになったんだが」のラブ神そっくりだ!
説明しよう!ラブ神とはラブコメの神様で、もうメチャクチャ美人でスタイルも良くて、まさに神でありながら天使でもある存在だ!
「申し遅れました。わたくしは、南結衣音と申します。由依音とお呼びください」
ラブ神じゃありませんでした。
あ!どこか違和感あると思ったらラブ神は名前の後に「様」じゃなくて「さん」だった!
とゆうか下の名前で呼ぶとか、ただでさえ三次元女子を苗字ですら呼べない俺にそれはハードル高すぎる!飛び越せないハードルなんてハードルじゃない!
けど瀬野先生には名前で呼べって言われてるしな......。
「あ、ああ。わかった」
ここは一応承諾しておこう!
「それでどうなさったのですか?」
「307号室を探してるところだ」
「わたくしの隣のお部屋ですね。確かそこには伊奈日さんが住んでおられると思いますが......」
「なんかそこしか部屋が開いてないらしい!困ったもんだ!」
ほんと、なんで俺が三次元女子なんかと一緒に暮らさなきゃいけないんだ!
「なるほど。同棲というわけですか」
「ど、同棲って......!」
「冗談です。たかし様は三次元の女の子には興味ないんですもんね」
なんだこのとげのある言い方は......。俺を試してるのか?
「あ、ああ!ミジンコたりとも興味ない!」
「そうですか。それではついてきてください。ご案内します」
エレベーターで3階まで上がり、そこからまっすぐ進むと307と書かれた扉にたどり着いた。
「へー。ここか」
見るからには普通の扉だ!
「はい。中はなかなか広いんですよ?」
「まあ二人で暮らすために作られたもんな」
「いえ?昔は一人人部屋でしたよ?」
「は?」
「しかし、堤ヶ丘の生徒が想像よりも増えてしまい、結果二人で一部屋となってしまったそうです」
「なるほどな」
「はい。たかし様、鍵はお持ちですか?」
「持ってない!」
「困りましたね......。伊奈日さんもいらっしゃらないようですし......」
南由依音がインターホンから指を離した。
「くっそ!早くラノベ読みたいのに!」
せっかくこっちに来る前に奮発してBOOK・ON でまとめ買いしたのに!店長に一冊サービスしてもらったのに!ってそれは関係ないか。
「でしたらわたくしの部屋に来ますか?」
「は?」
なに言ってるのこいつ!やっぱり俺を試してるのか?
「お前、三次元女子でビッチとか救いようがねえぞ!」
「ビッチではありませんよ?わたくし、プライベートで男の方と話すのは初めてですし」
「初めて!?そりゃ大袈裟すぎるだろ!」
「いえ。わたくしが男の方と話すのは、父の仕事関係の時くらいです」
「お前のお父さん社長か何かか?」
「はい。ジャッジの-」
「なんだと!?」
「ジャッジってあのジャッジか!?」
「あのというのが何かは分かりませんが恐らくそうです」
説明しよう!ジャッジとはギャルゲーからラノベ、アニメのグッズなど二次元が大好きな人間なら知らないものはいない(大袈裟)会社だ。
「まじかよ......」
「それでよく父がゲームの事とかを語ってくるのですがよく理解できなくて......」
「それで俺を部屋に招き入れようとしたってことか」
「はい。たかし様のお話しを聞ければ少しは父の事を理解できるかと思いまして」
なんて優しい子なんだ!普通だったらそんな事知りたくもないはずなのに!自ら積極的に話を聞こうとするなんて!三次元女子の中でもかなり珍しいタイプの人間だな!
「よし!わかった!それとさっきビッチって言って悪かったな」
「いえ、お気になさらず。それではどうぞお入りください」
「今お茶入れますね」
「......」
おかしい......!ラノベに集中できない!なぜ俺が三次元女子の部屋に入っただけでこんなにもドキドキしてるんだ!?ギャルゲーのイベントで馴れてるはずなのに!
落ち着け......。ここは三次元の世界だ。そう俺の嫌いな三次元だ!
「どうしたのですか?そんなにも汗をかいて。暑いならクーラーでも......」
「問題ない!それにこの時期でクーラーなんて聞いた事ないぞ!」
今は六月。こんな暖かい時期にクーラーをつけるのは、よっぽどの暑がりかエアコンマニアだけだ!そもそもエアコンマニアって実際にいるのか?少し気になる!
ちなみに俺は二次元マニアだ!
「それもそうですね。それではゆっくり本を読んでいてください」
「あ、その事なんだが集中できないからゲームやらせてもらえるか?」
ほんと、なんで学校来るまでの電車でギャルゲーやっちゃったんだろ俺!こっちついた時にはもう充電切れちゃってたし......。
「ゲームですか......」
「まさか持ってないのか!?」
「いえ、所持はしておりますがたかし様の好みではないかと......」
「俺はギャルゲー以外のゲームでも大丈夫だぞ。心配するな!」
もちろん俺は美少女が出てくるゲームは大好きだ!けど美少女が出てくるのはギャルゲーだけじゃない。RPG だったりアクションものだったりと、幅広いジャンルで美少女は登場している。
だから普通にRPG やアクションものもプレイするのだ!けど一番はギャルゲーだ!
「わかりました。少々お待ちください」
そう言うと由依音はケーブルをコンセントに差し込みだした。
「随分と手なれてるんだな」
「はい。もう一人のお方に無理矢理やらされますので」
「うっわー。めんどくさい三次元女子だな!俺がそんな事されたら【地獄に落ちろ!(イケボ)】で瞬殺だぞ!」
「私も最初は嫌だったのですがじょじょにはまってしまいまして」
「そうゆうのは誰にだってある事だしな」
由依音の言ってる事はよくわかる。「嫌いだったはずのゲームをいつの間にか好きになってる」というのはよくありがちな事だ。
けど俺、人生ゲームだけは好きになれないんだよなぁ......。そもそも人生をゲームにするとか頭おかしいだろ!人生はゲームとは違って絶対にクリアできるようにはなってないんだぞ!クリアできないゲームなんてゲームとは言わない!
「準備終わりました」
そう言って俺にリモコンを差し出してきた。
「Wiiか!」
Wii のゲームあんまやった事ないんだよなー。だってギャルゲーないし!ちなみに俺はPSP を一番使ってる!
「はい。それでは始めましょう」
画面に目をやると【スーパーマリコシスターズ】という文字が映し出されていた。
「まりしすか!これって美少女出てこないやつだろ?」
「わたくしはデザイン好きなのですが......」
「なるほど。由依音は緩い感じのデザインが好きなんだな」
「はい。わたくしの好みです」
説明しよう!
ゲームにたくさんの種類があるのと同じで美少女にも種類がある!
まず、大きくわけて二種類に別れる。しっかりと細かい所までデザインされた美少女。そして、ゆるキャラマスコットのようなデザインの美少女だ。例えるなら○常のようなデザインだ。
そこからはイラストレーターによって個性とかが出るから好みによって別れてしまう。
もちろん俺は前者だ!
「まっ、とにかくやろうぜ!」
「そうですね」
「俺のキノコとりあがったな三次元女子が!」
「申し訳ございません。つい」
「ふっ......大人しく俺にキノコを譲っていればボスのルッパなんて瞬殺だったのにな!美少女じゃないキャラクターなんて全て滅ぼしてやる!」
「......」
「どうした?」
「たかし様は本当に女の方は嫌いなのでしょうか?」
由依音がリモコンを置き俺に問いかけてきた。
「二次元の女の子は愛してるぞ!」
「そちらではないです」
「ってことは三次元女子か。どうしてそんな質問をする?」
「今日、クラスで暴言を吐いていたのに今こうして普通にわたくしとお話ししてるではありませんか」
「なるほどな。確かに俺は三次元女子が嫌いだ!そこらの三次元は、キャーキャーうるさくてオタクをバカにしてくるような連中だ。けどお前は違う。お前はオタクをーーお前の父の趣味を理解しようとしている!それだけでもお前と関わる理由にはなる」
「そうですか。わかりました。ちなみにたかし様」
「まだなにかあるのか?」
「画面をご覧ください」
俺は言われた通り画面に目をやった。
「しまったああああああ!」
画面に表示されていたのは【ゲームオーバー】の文字だった。
「なぜ一時停止ボタンを押さなかったんだ!」
「ついうっかりしていました」
「......くっ!せっかくここまできたのに!」
「でしたらまた今度いらしてください。すぐ隣ですし。今度はもう一人のお方とも一緒に遊びましょう」
「もう一人のお方が誰なのかわからん!」
「たかし様が今日お話しされていたーー」
そこまでいうと外から【ガチャ】という扉を開く音が聞こえてきた。
「伊奈日さんがお帰りになられたみたいですね」
「そうみたいだな。それじゃ俺帰るわ!」
「はい。また明日」
ー彼女を作れ。
ってなんで俺今親父に言われた事思いだしてんだよ......!彼女か......。
そんな事を思いながら由依音の部屋を後にした。
「本当にごめんねオタかし君!」
「ふざけるな三次元女子が!......と言いたいところだが今日はしかたない。急だったしな」
「その事もだけど学校での事......」
「俺の彼女と嘘をついた事か?」
「うん。ちっちゃいころから悪戯が好きで......」
「二次元の女の子はあまーい悪戯しかしないぞ!少しは見習え!」
「あまーい悪戯って?」
おっと?この子まさかピュアガール?
「なんでもない!気にするな」
「う、うん」
それでもどこか納得していないような顔だったので俺は咳払いをし、話をそらした。
「ん、ん!よし。それじゃあ今から俺とお前が同居するうえでのルールを決める!」
「ルール?」
「ああ。まず、俺は料理ができない!だから料理は任せる!そのかわり洗い物は俺がやる!」
ギャルゲーのイベントにも料理イベントはある。美少女が家にやってきて【ご飯なににする?】といった感じのものだ!毎回画面越しに【君の作る料理ならなんでもいいよ!】って叫んでる!
「買い出しは私に任せて!」
「なら買い出しも頼む。次に風呂の入る時刻を決める!」
「その時その時でよくない?」
「よくない!」
「なんで?」
「アニメやラノベでよく見るんだよ!主人公が服を脱ぎ、風呂に入るとそこにはシャワーを浴びている美少女がいたーーというシーンを!二次元の女の子とそんなシチュエーションにあったらもうウェルカムだが三次元女子はノーウェルカムだ!」
アニメやラノベなら【キャー!】と叫ばれついでにビンターーといったかんじでおしまいだが、現実は甘くない。
ビンタされるところまでは同じだ。だがその後、110にコールされる。それが何を示しているのかわかるだろ?
ネット用語でいう【人生オワタ】だ!
「そ、そっかそうだね!なら最初はオタかし君からどうぞ!私の帰りが遅い時には先に入ってもらって構わないから!」
顔を赤くし、早口で伊奈日が言った。
「了解。まあとりあえずはこんな所か。またなにかあったら決めるってことで」
「はーい」
その後俺は自分の新たな部屋に行き、荷物を整理した。なかなか部屋も広いし何より綺麗だ!だが俺はこの綺麗な部屋を別の意味で綺麗にしなければならない!
「よし!始めるぞ!」
「なにをー?」
「うわ!ビックリした!急に部屋に入ってくるな!三次元女子!今度からはノックしろ!」
「三次元女子って言わないの!陽菜って呼びなさい!」
「断る!」
「なんで?」
「俺が陽菜ちゃんと呼ぶのは二次元の陽菜ちゃんだけだと決めている!よって俺がお前を下の名前で呼ぶわけにはいかない!」
「せめて苗字で呼んでほしいな......。三次元女子なんていやだよ......」
そんな暗い顔するなよ!罪悪感が出てきちゃうだろ!
「わ、わかった」
「うん!それで何を始めるの?」
さっきの暗い顔どこいった?今超笑顔じゃん!
「くくく......。よくぞ聞いてくれた!今からこの部屋に陽菜ちゃんなどその他俺の好きな美少女達のポスターを貼るのだ!」
「おらオタかし君......いつの間に私の写真を......」
「お前じゃねえよおおおおおお!」
これからほんと、こいつとやってけるのか心配だ!
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