異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~
タック
1話 始まりと終わり(物理)
俺、
平凡な高校せ──。
「きゃー! 頭に何か刺さって誰か倒れてるー!?」
玄関から出た瞬間、頭にダーツが刺さって死亡した。
* * * * * * * *
「ここは……」
俺は目覚めた。
白い壁、白い床、それに白いワンピースを着た幼女がいる奇妙な空間。
なぜ奇妙か? 出口がないのだ。
「あの、君」
とりあえず、誰かいれば聞けば良い精神を発揮してみた。
世の中のおかしな事なんて、大抵は個人による思い込みなのだから。
「あ、本当に頭にダーツが刺さったのに生き返った!」
そんな不思議な返しをされた。
その元気な幼女は金色のツインテールを揺らし、小さな身体を威厳いっぱいにふんぞり返りながらこちらを見ていた。
「ふふふ、何を隠そう私は神様なのです! つい先日なりました!」
あ~、俺の妹も小さい時はこんな妄言吐いてたな~。
ふと懐かしい思い出が蘇る。
今や、その妹は立派に成長して兄をゴミクズ扱いする中学生になってしまったが。
「な、何をニヤニヤしてるんですか! 信じてないですね!」
「あ、いや。うん。信じてる、信じてるから。お母さんはどこかな?」
やばいやばい、顔に出ていたか。
小さくてもレディだ。
どんな妄言にでも、きちんと相手をしてやらないと。
「そんなに信じないなら……」
幼女は、空中で何かフリックするような動作をした。
やるやる、ちょっとしたSFゴッコみたいなの。
何もかも微笑ましくなってしまう。
「こうして……」
突如、何も無かったはずの空間に、ミニチュアながらも
「こうじゃ!」
幼女が指さした地球の部分、突如キノコ雲が上がった。
宇宙から見下ろしているような視点でもわかるレベルの爆発。
たぶん3D技術を使った最新ゲームなのだろう。
「はは、すごいすごい」
幼女は褒めておくに限る。
こうすれば大抵は気分が良くなってどうにかなる。
「そ、そうですか? それじゃあもう一発!」
「わーお」
「もう一発!」
「さすがです」
「それ! それそれ~!」
そんなこんなで、地球シミュレーターみたいなものはボロボロになってしまった。
もう青の星とか、地球は美しいみたいな言葉を言えないレベルだ。
「あ、それでここがどこか分かるかな?」
「言ってませんでしたっけ。地球からの勇者よ、ようこそ! ここはお前達が異世界と呼ぶエーデルランドの神の間です!」
えっへん、とふんぞり返る幼女。
うん、可愛い可愛い。
「はは。それじゃあ、あの星は異世界の地球的なものなのか~」
「あ、しまった。住人達は大丈夫かなっと……」
幼女が何かを操作すると、エーデルランドとやらの映像がアップになっていく。
衛星写真を段々と近付けていく感じでだ。
俺は、その時に気が付いてしまった。
寄っていくと、異常にリアルに作り込まれている。
舞い上がった塵で出来た雲を抜け、赤熱化した大陸、干上がった海。
「あ、あれぇ~、よく出来てるね~」
「当たり前です。私のおじいさまが管理していた世界ですから」
街らしきところまでアップになると、そこには人間がいた。
泣き叫び、神は死んだのかと絶望する人々。
生きる意思を失った老人の顔のシワまではっきりと分かる。
「な、何か……これリアリティありすぎな映像だね……」
「困ったら、地球から勇者を呼べと言われました! これから、よろしくお願いします!」
幼女──いや、幼女様に呼ばれたその日、2分で異世界は半壊した。
異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~ タック @tak
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