坂の上の家

@SatoRichman

第1話

坂の上の家にはいつも鳥がいた。

風が吹くと木の葉がざわめく。

サイレンの音に近所の犬が遠吠えをして、

夜の深さを確かめられた。

日曜日に二人が買い物から帰る頃は

夕焼けが空一面に広がっていた。

風は冷たく、君は僕の手袋をして、

僕は君のマフラーを借りていた。

僕らは、二度の冬を坂の上の家で過ごし、

次の春に別々の道に向かった。

そして、坂の上の家はいつしか朽ちて、

大きな木の下で小さくなっていた。

何ごとも無かったことのように。

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