第11話 情報収集
~sideルナ~
エレア達と別れて情報収集に来たルナ。
「でも、情報って何処で集めるのが一番良いんでしょう。
マスターの知識によると……なるほど。市場で買い物をしながらが良いみたいですわね!と言うことで市場に向かいましょう。場所がわかりませんので適当に街の様子を見ながら歩きましょうか」
と、街をうろうろすること数分。
「なぁメイドの姉ちゃんよ、こんな路地裏を歩いてるって事は、襲ってくれってそういうことで良いんだよな?」
「はっ!どうせどっかのボンボンに仕えてんだろ?ならすこーし金を恵んでくれても罰は当たらねぇよなぁ?」
「そうだぜ。痛い目に遭いたくなきゃ大人しく言う事聞いた方が良いぜ?」
フラッと入った路地裏で小悪党に絡まれた。
こいつらなんなんですの?まあ適当にあしらえばいいですわよね。
と思いながら返答する。
「今はご主人様の命令の途中ですの。急ぎですので失礼いたしますわ」
「おっと、そう言うなよ。少しで良いんだ少しで」
「生憎と雑魚に構ってる暇は無いんですの」
「あ?誰が雑魚だって!?」
「貴方達の事ですが?」
「ちっ。大人しく金を渡しておけば痛い目に遭わずに済んだのによ。おい!こいつやっちまうぞ!」「おうよ」「ああ」
先頭のリーダーらしき人が懐からナイフを取り出して切りかかって来る。
いきなりナイフで切りかかってきますか。雑魚が三人、正直めんどくさいですわ
と、口には出さず頭の中で思考する。
横薙ぎされたナイフを最小限の足運びで躱し、素人感丸出しの雑魚のナイフは空ぶる。マスター達と魔物との戦闘をこなして、倒した魔物の能力を手に入れているルナは、どうやらそこそこに強くはなっているらしい。
ルナにとって相手の動きが遅すぎるようで全く相手になっていない。
飛びうさぎの方がまだ素早いだろう。
雑魚の相手をしている暇はないですので、さっさと片付けさせていただきますわ
と頭の片隅で思いながら、バットから得ていた能力の【超音波】を雑魚達に向けて放つ。キィィィンと頭に直接響いたであろう甲高く響く不快な音は、雑魚達の脳を揺さぶり雑魚達は地面に倒れ伏した。
「はぁ、余計な時間を食いましたわ」
地面に倒れた雑魚達を憎しみを込めて足で踏みつけながら大通りへと向かう。
踏みつけられた雑魚達は体をピクピクと震わせながら泡を吹いて気絶しているが放置で問題ないだろう。
「路地裏は駄目ってことがわかりましたので、大通りを適当に歩きましょう」
路地裏で雑魚を蹴散らし、大通りを更に歩くこと数分。
街の中心と思われる場所に市場があった。多種多様な物が売っており、食品から装飾品、雑貨などもあるフリーマーケットの様な場所がそこに広がっていた。
「ここなら何か情報を得られそうですわね」
と一人呟きながら、取りあえずお店で情報でも聞きますかと、串焼きを売っている屋台へと向かう。
「この串焼きを二本ほど頂けますかしら?」
「おうらっしゃい。メイドさんがこんな所で買い食いとは珍しい。もしかしてさぼりかい?」
「さぼりとは人聞きが悪いですわね。ちゃんとご主人様から許可は得ていますわ」
「そうかいそうかい、それはすまないねぇ。ほい串焼き二本で500セタだよ」
焼きたてで見るからに熱そうな串焼きをお金を渡して受け取る。
「ちなみになんの肉ですの?」
「ボアの肉だよ。秘伝の特性ダレを絡めて焼いているのさ!美味いと思ったらまたよろしく頼む!」
「ええ、美味しかったらまた買いに来ますわ」
「おう!」
「一つ聞きたいことがあるのですけど良いかしら?」
「ん?なんだい?」
「この辺で情報が集まりそうな場所ってありますの?ご主人様に色々聞いて来いって頼まれまして探しているのですけれど…」
「情報が集まる場所って言ったらあそこしかねぇな」
「あそこと言いますと?」
「ああ。この大通りを真っ直ぐ行ったらすぐ左に酒場があってな、そこはこの町で知らない奴が居ないほど有名なとこで、『モッフル』て言う酒場なんだが色んな奴が居るから情報収集には持ってこいだと思うぞ?」
「それは良い情報を有難う御座います。今日ここに着いたばかりで地理に詳しくありませんので助かりました」
「おうよ!客には優しくしないとな!」
「では失礼いたしますわ」
「また頼むぞー!」
屋台のおじさんに背を向けて串焼きを頬張りながら話にあった酒場へと向かう。
食べ歩きは少々行儀が悪いかも知れ無いと思うが、別に構わないだろう。
ボアの串焼きは肉の柔らかさに加えて、タレの美味しさと相まりとても美味しかった。マスターに食事の必要ないですけど、後で買って帰りましょうかね。
と思うルナであった。
串焼きを食べ終わり少しした後酒場に着く。
冒険者や荒くれが居そうな雰囲気の酒場ではなく、どちらかと言うとバーの様な雰囲気の建物みたいだ。看板には『モッフル』と書かれていて、屋台のおじさんが言ってた通りだ。モッフルってなんですの?と思いながらお店に入ると、
「「「いらっしゃいませ!モッフルへようこそ!」」」
酒場の喧騒に負けじと聞こえてくる店員たちの挨拶。
中では色んな人達が酒を酌みわし騒いでいた。
適当に空いているテーブルに座ると、取り敢えず店お勧めの飲み物と料理を頼む。
少しして出てきた料理は、お店の名前であるモッフル。ワッフルの中にモス肉が入っていると言うものだった。どうやらモスの鱗粉を麻痺しない程度の配合で練りこんであるのか、ピリリッとした味が良いアクセントになっていて、酒場の主力商品なのがうなずける程に美味しい。モッフルを食べながら周りの話に耳をそばだてていると、モスが美味しいというのは結構常識のようだ。
モスは、火に集まる性質から初心者たちの狩りには最適と言う中々に優秀な魔物のようで、ただ気を付けてないと群がり過ぎて逆に食べられるという事態に陥るの。だから初心者たちは対策をしっかりとして挑んでいる。
モッフルを食べながら周りの声を聴きつつ初めての飲み物を一口煽る。
「この飲み物中々美味しいですわね」
初めての飲み物を飲み、その美味しさに驚いていると
「お?嬢ちゃん酒がわかるのかい?」
後ろのテーブルで騒いでいた冒険者らしき人達が声をかけてきた。
「これお酒なのですか、初めて飲みましたが中々美味しいですわ」
「ほう、酒が初めてとは珍しい」
「しかもメイドさんがこの時間にお酒とは…もしかしてさぼりかい?」
「さぼりとは失礼ですわね。これでもご主人様に頼まれて情報収集に来たのですわ!」
マスターからのお使いなのです!と誇らしげに胸を張る。
「おいおい嬢ちゃん。情報収集とはあんまり公に言わない方が良いぞ?」
「そうでしたの、それは申し訳ないですわ」
「まあまあ、そんな事より楽しく飲もうぜ!」
「だな。メイドの嬢ちゃんはあんまり世間には詳しくなさそうだし、飲みながら話そうぜ!」
「ええ、そうして頂けると嬉しいですわ。世間に疎いですのね色々と教えて下さいますか?」
「こんな可愛い子と飲めるなら大歓迎さ!なあ皆!」
「「「おうよ!!」」」
そして始まる宴会。
話を聞いていると、どうやら彼らは冒険者になって結構経つ、ベテランと言われる冒険者らしいと言うことがわかった。今しがたクエストでの狩りを終えて、良い素材が取れたので切り上げたと言う事らしい。
クエストでの話を詳しく聞いていると、どうやら黒魔法を使ってくるガーゴイルが居たらしく、苦労の末倒したという話を面白おかしく聞いていた。
ルナと一緒に飲んでいる冒険者のパーティは、4人1組で前衛の3人と魔法を使う後衛が1人と言う理想的なパーティのようだ。
ガーゴイルとの戦闘も、魔法を巧みに躱しながら後衛のサポートを受けつつ、徐々に削っていったらしい。流石ベテランだ。
他にも色々と話を聞いた。冒険者家業の事や、最近起こった出来事。パーティでの美談や経験談など、色々な話を聞いていた。
勿論お酒を飲みながらなので、段々頭がふらふらしてきたのか呂律が回っておらず、適当な喋りになっている。
どうやら初めてのお酒に酔っぱらってしまったようだ。
ちゃんと話を覚えているのか心配だが、多分大丈夫だと信じていたい。
そして冒険者たちと楽しく話をしていると、エレアから連絡が入る。
「ルナ、聞こえますか?」
「はーい!ルナちゃんれすよー!」
「ルナ¡?どうしたんですかその喋り方は!」
「ほぇ?特になんでもないれすよぅ。今は酒場で情報収集してた所れ!万事良好れす!」
「良い時間なのでそろそろ帰りますよ。迎えに行くので場所を教えてください」
「場所れすか?えーっと、モッフルっていう酒場れす!」
「わかりました。すぐ行きますので大人しく待っているように」
「了解れあります!」
ちゃんと声に出してはいないので周りの冒険者には聞こえていないだろう。
そして連絡を終わってしばらくして、エレア達が迎えに来て冒険者たちと別れを告げて外に出る。お酒や食事の代金はエレアがさっとテーブルに置いて行った。ぬかりのない良いメイドだ。
そしてエレア達が購入した馬車に戻って街を出て街道を逸れて脇道へと入っていった。
その馬車の後ろに黒ずくめの人達が着いて来て居るのを確認しながら……
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