第9話 家
さて、三人が頑張っている間にやる事やりますか!
まずは風と土魔法の取得だな。風魔法は団扇でも作って思いっきり扇いで風に魔力でも流せば突風ぐらい起こして取得できるだろ。
土魔法は土をコネコネしたら出来る筈。クリエイト魔法と土魔法は全くの別物だからな。
「よし。まずは水で地面を濡らして泥団子でも作るか」
水魔法を地面に向けて放ち、程よく濡れたところで手に少量の土を掬い取り、魔力を流しながら泥団子を作っていく。
土を捏ねる事数分。【土魔法】を得た。
「まあこんなもんだろ」
魔力を込めて作った泥団子は鈍色の光沢を纏っていて砲丸みたいになっていた。
折角なので砲丸投げよろしく飛ばしてみるかと、木に向かって思いっきり投げつけた。
ブォン!と風を切り裂き木にズガンと音を立ててぶつかった。その瞬間
「キィェェアアアア」と金切り声を上げてトレントが倒れた。
「適当な木に向かって投げたんだがまさかトレントだったとは。確認しとけばよかったかな」
まあいいやと思っていると【投擲】を得た。あー、こんな能力もあったな。正直要らねえ。まぁ気を取り直して次は風魔法だな。折角だし倒したトレントから団扇でも作るか。
俺はトレントの素材から丈夫な紙を生成し、それを木の土台に貼り付けていった。
「無骨だがまあ団扇と呼んでも良いんじゃなかろうか」
そして出来上がった物は、形は団扇なのだが、木が固く丈夫すぎて全く曲がる気配を見せない見せかけの団扇だった。
「これ団扇ってかより卓球のラケットじゃ…いや、構造は団扇だし扇げば風が起きる……はずだ」
自分で自分に言い訳をしつつ、団扇もどきをちょっと振ってみる。
そよそよと少しだけ風が起きる。これならいける!と力と魔力を込めて思いっきり振ってみたが。
バキッ!と嫌な音を立てて柄の部分から無残にも団扇が折れた…が風は少し起きたようで砂が少し吹き飛んだ。【風魔法】を得る。
団扇の犠牲と共に風魔法を取得できたので良しとしよう。
俺は団扇の残骸を埋めてやり、手を合わせておいた。神様が拝むのは可笑しいかも知れないが、尊い犠牲には礼を尽くさねばならないのだ。
何故曲がるようにしとか無かったんだと言う突っ込みは無しにしてもらいたい。
決して忘れてたわけでは無いのだ!…多分。
さて!主だった魔法も取れた事だし気を取り直して家を作るとしよう!
正直寝る場所さえあれば何もいらないのだが、折角作るのだから豪華に作りたい。
と言うわけで俺は地面にクリエイト魔法で図面を引く。
豪華な建物、豪華な建物。成金趣味にならない程度に広く、城程にでかくはなく、落ち着いた雰囲気の家。
と独り言をつぶやきながら形にしていく。
図面を考える事約一時間と少し…ようやく形になった。
場所は既に決めてある。ヴリトラが居たあの穴を埋め立ててそこに建てようと思う。
あそこは丘の上だし、見晴らしも良い。森の中だと魔物とかで苦労するだろうし、ヴリトラの元住処なら危険を感じて魔物などは近づいてこないだろうと言う見積もりだ。
と言うわけで、ヴリトラの住処にあった骸は必要な物以外すべて素材に戻して、風魔法で外に出しておいた。埋めるのは土魔法で一瞬で終了する。
人や魔物の骨なんかは種類別に分けて一つの塊にして置いてある。
地面を丁度平らにし終わった頃、エレアから念話が来た。
『マスター聞こえますか?』
『ああ、聞こえてるよ。どうした?』
『はい、寝具なのですがどう言ったものがよろしいでしょう?』
『お金はどんな感じだ?』
『アクセサリーが非常に高値で売れたので色々買っても十分かと』
『そうか、高く売れたのならなるべく良いのを買いたいな』
街に普通に入れてることに一安心し、アクセサリーなどが思った以上に高く売れたようで何よりだ。頑張って綺麗にした甲斐があったものだ。
『予算に余裕が出来てるなら、俺たちが一緒に寝れる程度のでかいベッドと、予備で人が二人並んで寝れる程度のベッドを二つ程頼む』
『はい』
『あと、三人の服と俺の服、家に置く証明とかも頼む。予算が足りそうに無いなら寝具と服だけでも良いからな』
『かしこまりました。予算は十分に出来ましたのでマスターの知識から必要そうなものを買っておきます。先に必要かと思い馬車を買ってしまいましたが宜しかったでしょうか?』
『それは必要だから大丈夫だ。上手い具合に頼むぞ』
『お任せください。ではこれで失礼しますね』
『ご苦労様』
念話を終了する。資金調達が無事に終わったようで何よりだ。
それじゃ、図面も出来たし家を建てますか!
………………それから数時間後、黄昏時に家は完成した。
使用した建材は、土魔法で強化に強化を重ねて作り出した堅牢な石をベースに魔物などの骨も使いつつ、出来たのは二階建てのこじんまりとした家と言うより館だ。
庭付きで露天風呂ありの優良物件が出来上がった。
図面に時間をかけただけに結構スムーズに竣工出来たので満足のいく出来だ。
三人が帰ってきたら紹介するとしよう。
そろそろ良い時間だし帰って来る頃だと思うんだが…
まあのんびり待つとするか。
館のテラスでロッキングチェアに座りゆらゆらと揺られながら
黄昏に染まる島を眺め続けて三人の帰りを待つのだった。
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